第34話無魔法




ギルドの2階の部屋で、ギルドマスターから報酬金をもらっていた。

テーブルに又も金貨100枚の袋が「ドサリッ」と置かれた。


「魔物の石の買取金って、まだありますか?」


「十分あるよ。無駄使いしないで、将来の事を考えろよ」


なにを急にそんな事を言うのだろう。ちょっと変だぞ。


「ギルドマスターに頼みがあるんだ」


「なんだ」


隠蔽いんぺい魔法を教えて欲しい」


「あれは簡単だからいいぞ。この後に用事があるから簡単に教えるがいいか?」


「はい、簡単でいいので教えて下さい」


「分かった。ついて来い」





ギルド裏の訓練場で、ギルドマスターが一瞬で姿を消した。

え!どこへ逃げた。キョロキョロと辺りを見ても居ないぞ。


「どこへ隠れた」


「隠れてないぞ」と後ろから声が聞こえた。


振返ると「お前は、すでに死んだぞ」と指先で自身の首を切るマネをして笑ってる。


これが隠蔽魔法か・・・信じられない。


「簡単な事だ。しかし、初めはエナジーショットからやって慣れてからだな」


そう言って的の木人に「ショット」と唱えた。

木人は衝撃を受けて揺らいだ。


何を発射したのかも見えなかった。しょぼい魔法だが使えるぞ。


「こんな使い方も出来るぞ」


そう言って手を前に出して「アトラクト」と唱えた。


的の木人が地面から抜けて、一瞬でギルドマスターの手に掴まれていた。

そして「コンプレッション」と唱えた。


木人は粉々になって押しつぶされていた。


「え!いつの間に・・・」


「凄いだろう。これが出来るのは俺だけだぞ」



「いいか、見えなかったエナジーショットを発展させて、体を包み込むんだ。すると動く音や匂いまで遮断してくれるから、まずは見つからないな」


「後は練習ですか・・・」


「そうだな練習だ。分からない事があれば後で聞きに来い。これから遺族に会って報酬金をわたすので忙しくなるんだ。お前も行くか・・・」


「俺が行っても、なんのなぐさめにもならないでしょう」


「そうか・・・わるかったな」


なんか寂しそうに去っていった。




的に向かって「ショット、ショット、ショット」と連続で唱えた。

エナジーショットは、途中から重なって巨大なエナジーショットになった気がした。

的の木人を見事にへし折って、5メートル後方へ吹飛んだ。


なんだよ・・・初回か完璧だ。

自分自身の才能にれするぜ。


思った通りの威力いりょくなったぞ。


更にショットの数を増やした。

木人は、粉々になって吹飛んだ。

これが人間だったらゾッとするな・・・いやいや人間にしなし・・・変な妄想はやめよう。



後は隠蔽魔法だ。

え!今考えたが、ギルドマスターの話は詳しい内容でなかったぞ。

体を包み込むって・・・どうするだ。


風の防御魔法のようにやってみるか・・・


あれ!後ろが丸見えだ。もっとふわっとした感じかな・・・

イメージして「隠蔽」と唱えた。


なんとなく周りから遮断できた気がする。

あれ!誰も居ないから確かめられないぞ。



スマホを出して動画撮影にして置いた。

なんども位置確認して、スタートだ。


「隠蔽」1分間我慢だ。


「解除」してスマホを取って確認だ。


画面の中の俺が・・・お!見事に消えたぞ。

1分後に、姿も現れたぞ。成功だ。




後はギルドマスターがやった「アトラクト」と「コンプレッション」だ。


木人に対して「アトラクト」と唱えた。


ちょっと揺らいだ。失敗だ。


「アトラクト」


又も失敗だ。


頭に来た。木人に「コンプレッション」と怒りに任せて唱えた。


一瞬で木人が消えた。

え!どうして・・・駆け寄った。


木人のあった場所に、足元の木だけが地面から20センチだけ出ていた。

その切り口は、鋭利な刃物で切られたように見えた。


これを俺がやったのか・・・となりの木人に試した。


「コンプレッション」


一瞬で消えてしまった。

粉も無いぞ。


地面に手をついた。


「コンプレッション」


地面が一瞬で無くなった。


「ああ、あ!」


「ドテッ」・・・俺は転げ落ちた。

え!なんで・・・落ちた穴を見渡した。それは2メートルぐらいの球体の穴だった。


そこから判断して球体の形で、地面を消し去った感じだ。

呆気にとられながら中々な威力だ。




「アトラクト」・・・又も失敗だ。


あいからわず「アトラクト」は、小さな物なら成功するのに・・・

しかし、木人ぐらいの大きさになると失敗だ。


ああ、情けない。



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