第33話危ない討伐




「はあ、はあ、はー」もう我慢できなぞ。

隠れてもなぜ分かってしまうんだ。

これならギルドマスターが言ってた。無魔法の隠蔽いんぺいをマスターすれば良かった。

無魔法は、魔法士なら誰でも使えるお手軽魔法だ。


ギルドマスターは、きっと隠蔽で隠れてるはずだ。

森の中で、俺は身を潜めて数十分だ。





今回の依頼もドラゴン討伐だ。国王からの依頼だ。

もうギルドマスターが受けてしまった。


俺がここに来た時には、討伐は決まった話で俺は強制参加だ。

聞く所によると、遠い場所らしい。


移動に時間を掛けられない。

なので俺が収納していた4輪バギー6台で、辺ぴな森の深くまでやって来た。


4人の男も前回も参加した男だ。




それが急に空が暗くなった。

それと同時に画面にドラゴン2体が表示された。


1体のドラゴンのはずなのに、2体もドラゴンが居やがった。

俺の鑑定では、2体は双子だ。


火魔法を使う奴は、赤いうろこのドラゴンだ。

火のブレスで一瞬で火の海にされた。

もうパニックだ。俺の水魔法で防御したのに、4人が逃げやがった。

2人は4輪バギーに乗って逃げる最中に、頭上から火のブレスを吐かれて燃えカスとなった。


白銀のドラゴンは、2人を氷漬けにしてから喰らいやがった。

その時の凍る瞬間の叫びが、今も耳に残ってはなれない。



なんて日だ。こんな日になるなんて思いもしなかった。

ギルドマスターとは、離ればなれだ。



あ!画面では2体のドラゴンに挟まれた。

これでは逃げ出せないぞ。もう終わりだ。


もう俺の場所は知られたようだ。真直ぐに向かって来ていた。

もうレーザー光線を使うしかない。


ここは森の中だ。火で囲まれた終わりだ。

それに対して氷は、攻撃範囲が狭い。


飛び出した俺は、レーザー光線をレッドドラゴンに放った。

首を切断してすぐに止めた。


ホワイトドラゴンが雄叫おたけびを放った。それは悲しい旋律だ。

そんなホワイトドラゴンにレーザー光線を放った。

奴は上手く避けやがった。肩翼から胴体に切裂いた。


あ!くらっとめまいがした。急いでレーザー光線を止めた。



おお!やばかった。気絶寸前だ。

もう魔法は使えそうに無い。頼れるのは暗黒吸刀だけだ。


俺はその場から逃げ出した。

いつ倒れてもおかしくない状態だ。


なんでだ・・・執拗しつように傷ついた体で追い駆けてくるぞ。

少しはめまいもおさまった。俺は決心した。


俺は、ホワイトドラゴンに向かって駆け出した。

ホワイトドラゴンがブレスを吐く前に横に飛んだ。

「パリッ、パリッ」と地面が氷漬けだ。


最後の力を振り絞って、又も走り続けた。


後方に回り込んだ。そして背中を駆け上がった。

奴にとって背中は死角だ。首が回らないからブレスも吐けないぞ。


そして傷ついた肩に暗黒吸刀を刺してやった。

もう暴れて回るホワイトドラゴンだが、こっちも必死に傷を広げた。


ホワイトドラゴンは、空に向かって雄叫びを放った。

なぜだと疑問が浮かんだ。


空を見た。

なんだ、氷のツララが無数に出来ていた。


俺は、風魔法を背中に放って後方へ飛んだ。


地面にワンバンドしながら、ツララを回避。

「ガキーン」と頭に激痛が襲った。


こんな所で気絶なんか無理だ。


くらくらしながらホワイトドラゴンを見上げた。

背中はツララだらけだ。それでも生きていた。

なんてしぶとい奴だ。


傷ついた体を酷使こくしして、背中をよじ登った。

奴の鼓動こどうが聞こえてきた。もう鼓動はゆっくりだ。


見えるぞ。ここが心臓部だ。

暗黒吸刀で何度の刺した。もう何度も何度もだ。


あ!ホワイトドラゴンが崩れるように倒れた。

その勢いで俺は、放り投げられた。


もう地面は目の前だ。柔道の受身を試みた。

それでも左肩に激痛が走った。もう血だらけだ。


ふらつきながら立ち上がった。


【氷魔法習得】と表示された。


しかし、俺は魔力を欲した状態だ。


画面に矢印が現れた。

わらにすがる思いで進んだ。

え!ホワイトドラゴンの体へ矢印が指し示していた。


もう我武者羅がむしゃらにドラゴンの体内に入った。

あ!温かいぞ。体が癒されてゆく。


【魔力吸収習得】


ハッキリと意識した。

急激に魔力が回復してゆく。光魔法で傷ついた体を治した。

痛かった体が、回復してゆくぞ。

俺は助かった。




目の前のホワイトドラゴンを黒い渦に回収だ。

一瞬で回収は終わった。


地面に落ちた暗黒吸刀を拾って歩き出した。


レッドドラゴンはこっちか・・・え!ギルドマスターがレッドドラゴンの周りで何かしてるぞ。


「ギルドマスター、何をしてるのですか」


「これは国王から預かった結界石だよ。このように5点で囲めば結界が発生して、誰も手出しできない優れものだ」


あ!本当に結界が発生している。

触ってみたが硬そうだ。鑑定を発動した。



【結界】


魔物を寄せ付けない結界


ほう・・・便利な物だな。




無事だった4輪バギー3台の1台を回収。


「ギルドマスター、2台の4輪バギーが無事でしたよ。もうここから去りましょう」


「あの白いドラゴンはどうした」


「レッドドラゴンが倒されたのを見て、逃げて行きましたよ」


「そうか・・・もうここには戻って来ないだろう」


「絶対に戻ってきませんよ」


4輪バギーにまたがって出発だ。


「それにしても便利な乗り物だな」


「これは売り物でないので売りませんよ」


「言われ無くとも分かってるよ」


そんな2人は、森の中を4輪バギーで駆け抜けた。



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