第35話神須流秘伝の縮地




俺は、竹刀を地面に叩きつけ「ビシッ」と鳴らしていた。

これってじいちゃんが、俺に神須流剣術を教えていた名残だ。

いつか教える番になったらやろうと思っていたからやってみた。


「いいか・・・お前らに、我が家の秘伝を教えるからよく聞け・・・今から教えるのは【縮地しゅくち】だ。これは、仙術によって土地を縮めて距離を短くする事ができる。すなわち一瞬で距離を縮めて接近ができて、反対に敵の攻撃を避ける事もできる優れものだ。仙術について聞いて来てもよく知らんから聞くな。分かったな」


竹刀で「バシッ」と叩いた。


「はい」と魔法士やスキル持ちの生徒が元気よく返事した。

生徒の数は80人程だ。


生徒と言っても俺より年上が大半だ。

められないように、又の「バシッ」と叩いた。



「どんなものか見せるから、よく見ておけ!」


2メートルも離れた木人に向かって、「やるぞ!!」と言ってから一瞬で木人を竹刀で斬り抜けた。

遅れて斬った音が響いた。


生徒たちは、呆然だ。何が起こったかも分からないかも知れない。


「あれは何だ!」


「一瞬で姿が消えたような・・・訳が分からん・・・」


後は互いの顔を見てどうしたらいいって顔だ。


そんな生徒を見て、俺もそう感じた。

じいちゃんに教えられて使えるようになって、ただ楽しかったのは昔の事だ。

だからギルドマスターにも見せてみた。


ギルドマスターは、それは昔に使われた技だと言って驚いていた。

そして誰も教える者が居なくなって、消失した技だと・・・

少ない魔力を使ってなせる技で、連続使用はできない技だ。

だから、ここで使うしかない場面でしか使わない。



「いいか!これは連続使用は出来ないから、注意して使え!・・・時間は5分間程度だ。もう1回やって見せるから、ちょっと待て」


腕時計で確認だ。3分、1分、30秒、0でクールタイムの終了だ。


「やっと5分が経過したから、もう1度見せるから見てろ」


又も木人に向かって発動。遅れて斬った音が響いた。


スマホで撮ってスロー再生して見てる。

そうか、そんな方法は思いつかなかったな・・・そうだ、それ以前にスマホを買ってもらってないや・・・


「それと体を動かす瞬間に縮地を発動しろ。3メートル先に敵が居たなら2メートを縮地で駆け抜けて、目標を確認して斬れ!! 魔物は、見失った事でスキだらけで斬りやすくなってるはずだ。それと俺の場合は・・・縮地は4メートルが最大限だから、2メートルから始めろ」


「あんな事ができますかね」


「お前たちは、見たままのイメージしてやってみろ!失敗しても恥じる事はないぞ。俺も何度も失敗したからな」


それぞれの木人に向かって、ダッシュして竹刀を振り抜いていた。

中には転ぶ奴もいる。


「ヨシ!時間が経ったから、又見せるから何がいけないのか考えろ」


又も木人に向かって発動。遅れて「バシッ」と音が響いた。


「先生、もっと具体的な方法は無いのですか?」


「無いな。俺が教わったままを繰り返してるだけだ。やめたい奴はやめていいぞ。しかし、危険回避の1つの手段をなくすことになるぞ」



ギルドマスターは、10回程見せたらマスターしたが・・・はたして何人がマスターするのか・・・



これで10回目だ。木人が「バシッ」と斬られた。

又も練習が再開だ。


その直後、ノア姉妹が抱き合って喜んでた。


「俺は見たぞ。姉の消えた残像を・・・」


「すると姉のシアン・ノアが成功したのか・・・アメリカに先を越されたか・・・」


なんか練習にスイッチが入ったようだ。


2時間後には、6人の成功者が出たので更に過熱だ。



「魔法士はやめて、俺に付いて来い」


「え!俺たちはのけ者ですか・・・」


それを言ったのはスキル持ちだ。3日前に来た若者らしい。


「今から見せるのは、魔法士しか使えない魔法だ。それでも見たいのなら付いて来てもいいぞ」


なんか興味を持ったらしく、全員が付いてきた。




「この魔法は、属性に関係なく使える魔法だ。だから見ていろ」


手をかざして「ショット」と唱えた。


頑丈な的が「パンッ」と鳴った。


「え!何が起きたの・・・全然分からないよ」


「何かが発射されたようだよ」


「その何かが分からないから困惑してるのが分からないの・・・」


「先生、あれは何ですか?」


「エナジーのかたまりだと思えばいいだろう。連続で放つぞ」


もう機関銃のように放った。


エナジーショットは重なった。1つの的に穴凹を無数に開けて破壊した。

そして横にずらして2つ目も破壊した。


一瞬、訓練場は静まり返った。


「なんて威力の魔法だ」


「これって、わたしにもできるの・・・心配だわ」


「最初から諦めたらダメだよ」


ざわつく生徒を無視して話した。


「心配するな・・・エナジーショットは初歩の初歩だ。魔法士は来週までにマスターしろ。マスターしたら次の段階へ進むからな」


あの姉妹は、単発のショットをすぐにマスターした。

それが刺激になって、村上もマスターした。


もう月180万も稼ぐ村上だ。それでも週1度の俺の授業には参加している。

しかし、訳も分からない物を贈りつけるので困ってる。


謎多きブードゥー教の人形は、度を越す贈り物ナンバー1だ。

送られた日から俺は、家の中で転倒して足の骨を折った。

凄い激痛だった。


光の癒しで治したからいいが、えらい災難だ。

飾るのは到底無理な人形だ。翌日には、宅配で送り返した。

本当に気味の悪い人形だったぜ。



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