第31話横領




朝からスマホが鳴りっ放しだ。

それで目がようやく覚めた。え!母さんからの着信音だ。


時間は、午前6時21分・・・「なんだよ母さん。こんなに早くから」


「イサム、大変なんだよ。警察がやって来て会社の横領罪で父さんが連れて行かれたの・・・どうしていいのか分からなくて・・・」


父さんの会社は、魔石で一気に上場企業までなった会社だ。

それに父さんは真面目な性格だ。そんな横領で捕まるなんて・・・ありえない。

何か裏がありそうだ。


「母さん、知り合いの弁護士に相談するから心配しないでくれ。今から連絡するから切るね」


スマホ越しに母さんの泣き声が、ここは我慢して切った。

すぐに神谷弁護士に連絡した。


朝っぱらか何だと言われた。俺も詳しい情報がないまま出来事を話した。


「分かった。警察に行って面会してみるよ。だから心配をするな」


そう言って切られた。

母もこんな思いだったのか・・・



そして思い出した。

佐々木部長が検事だった事を、急いで連絡をした。


もう一方的に話した。


「それで私に如何どうしてもらいたいの」


「きっとはめられたに違いない。だから力を貸して欲しい」


「具体的に如何するの・・・」


「取調べに立ち会いたい。父さんでなく、横領したと証言した人の取り調べに・・・」


「あんた!まだ能力を隠してたの・・・いいは、協力して上げるわ」


佐々木は、すぐに方々へ連絡して承諾しょうだくをもらったようだ。

その手ぎわ良さに感心した。




飯田琢磨いいだたくま58歳


ドートレ会社営業部長


その男がカメラを設置された部屋で取り調べをされていた。

いかつい刑事が対応中だ。後ろの壁にもたれるように俺は居た。

そして調書を書く若い刑事も居た。その刑事のそばには、椅子に座る佐々木部長の姿があった。


若い刑事は、チラチラと佐々木部長を見てた。



いかつい刑事は、おっとりした話し方だ。


「たまたま帳簿を調べたら横領した事実が判明した。そしてたまたま神須が横領したとする証拠が出てきた。それに間違いありませんか?」


「はい、そうです。あんなに信じていた部下に裏切られるとは、思ってもいませんでした」


そう言いながら、飯田はある出来事を思い出していた。

俺の鑑定の指輪は、知りたい事だけを知る事ができた。個人情報がダダもれだ。

それだけ魔力を消費するが、今回は仕方ない。


「それは嘘だな。あんたは社長の命令に従っただけだ。11月29日13時34分に社長室で、神須をはめろって言われたはずだ」


「え!盗聴していたのか・・・盗聴は証拠にならないぞ」


刑事はガバッと立上がった。


「貴様、警察をはめやがったな!ただではおかないからな」今にも殴りそうな勢いだ。


それからは飯田は、ペラペラとしゃべって自白した。

調書にサインして終わりだ。




その話に出てた社長秘書の男が、取調室に居た。


「なんで呼ばれたか分かりませんね」


「あんた、社長の命令で人殺しもしたそうだな。飯田が白状したぞ」


「あれは作り話ですよ。飯田もバカだなーーそんな話を信じて」


成る程、そんな所に隠したのか・・・


「あんたが暮らす家の居間下に埋めたのは分かってるよ。それも3体も埋めてるなんて、あんたは正気か・・・」


「なぜ知ってる!俺しか知らないはずだ!」




もう証拠の書類やメモも発見された。

その証拠のメモを見て、俺はピンッと来た。


「今日の23時に、K国に魔石の密輸があるみたいだな」


周りに居た関係者がどよめいた。


「場所も分かるのか・・・」


「ああ、分かるよ。日本海の福井県三方郡美浜町×××で、無人艇によって運ばれるみたいだな」


もう、ギルドと警察と検察の合同捜査だ。




俺らはヘリに急いで乗り込んだ。



もう現場では、各方面からの応援が潜んでいた。

そして、俺らが到着して、佐々木部長の号令で踏み込んだ。


遠くから鑑定して叫んだ。


「トップランカーの探索者がいるぞーー。14人も居るぞ!」



もう遅かった。急に発砲が起きた。

マシンガンが「ダダダダダダ」とパトカーを穴だらけにした。

防弾服着用で助かったが、足を撃たれた数人は運び出された。


応戦するSWATチームが、密輸側の数人を撃ち殺した。

しかし、狙いを定めて撃つ瞬間に避ける連中が居た。

動きが速い。


「探索者は、中々当たらないぞ。なんて勘がいい奴らだ。本部!どうしますか」


「分かったわ。応援者を向かわせるから銃撃は一旦ストップしておいて」


「了解しました」


佐々木は、俺の顔を見て目で合図した。

え!俺が行くのか・・・親父から始まった事件だ。



風魔法で防御して前の出た。「ダダダダダ」と撃たれたが平気だ。

風が全ての銃弾の軌道をずらした。



空が一気に曇った。弱めの雷魔法を放った。

探索者14人は、気絶だ。



「この無人艇は凄いぞ。電波を吸収する塗料が塗られてるぞ。それにK国へのルートが打ち込まれて自動運転だ。だから天気のおだやかな日が選ばれたのか」


証拠の魔石も押収された。

もう鑑識の連中が、あっちこっちの証拠に夢中だ。


「おい!こっちに死体が有ったぞ」


「なんてむごい殺しだ」


「こら!ここで吐くなーーバカ野郎!」



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