第26話蛇の化け物




駆け付けた時には、すでに深刻な事態だ。

自衛隊員が何人も倒れていた。見た瞬間、死んでる事が分かっていた。

体が惨たらしく引き裂かれていたからだ。



あ!空から音が・・・見上げるとヘリだ。

「バラバラバラバラ」と複数の戦闘ヘリが飛んで来た。


そして大勢居るリザードマンに向かってガトリングガンを連射。

凄まじい連射だ。地面に土ぼこりが舞ってる。


しかしリザードマン当たってるが、少しのけ反るだけだ。

出血などのダメージは見られない。なんて硬さだ。


今度はハイドラ70ロケット弾を発射。

吹っ飛ぶリザードマンだが、すぐに立上がった。

そこには無傷のリザードマンが平然と立っていた。あれだけの攻撃も平気なのか・・・


「こちら地上部隊、ダメージはない。ロケット弾は全然効果なし」


「効果がないだと、しっかり確認しろ」


「全然効果はない!!現場からの報告だ!」最後は隊長も切れていた。


「分かった。ドローンでの正確な座標位置を知らせろ。そしてただち退避だ。M777155mm榴弾砲りゅうだんほうを使用する。座標連絡後10分後に使用する」


「全員!速やかに退避だ。榴弾砲が飛んでくるぞ。田中、ドローンを飛ばせ」


自衛隊の奴は逃げやがった。ドローンだけ残して。



「師匠、私らも逃げましょう」


「大丈夫だ。リザードマンから離れてるから当たらんよ」


「本当ですか・・・」


「それが、M777155mm榴弾砲の性能だからな・・・衛星ナビゲーションやデジタル火器制御システムを備えてるからな」


しばらくして、榴弾砲が撃ち込められた。



「あんなに撃ち込まれても、全然ダメですね・・・リザードマンは、超硬過ぎな奴ですね」


リザードマンは、血一つも流さなかった。


「ハル、リザードマンは水魔法を使うから、こっちに来たら火魔法で迎え撃て。俺は突撃をするから待機だ」


「はい、分かりました」ちょっと複雑な表情で見てくるな。この先は、お前では危険だ。



俺は、振返りもせずに走りだした。

やはり複数の水球が飛んで来た。スレスレでかわしながら暗黒吸刀で首をねた。


1つ2つ3つと頭が落ちてゆく。

石槍で突っ込んできたリザードマンを、槍を切ってから下から胴体を斬り上げた。

なんだか最近になって、暗黒吸刀の斬れが良くなった気がする。

ちょっと手こずりながら斬ってたのに・・・斬れやすくなった。


横へジャンプして水球をよけた。もう俺だけを攻撃対象だ。

ならば風で防御だ。前に展開した風が水球をそらした。


更に暗黒吸刀に雷をまとわせた。


一撃で大勢を倒した。これはいい、気兼ねなく振れるぞ。

更に斜め前方へ飛びながら斬った。

ああ、リザードマンの力と素早さと魔力を取り込んだ。


更に斬って斬り尽くした。


あ!山影から巨大な物が動いた。

俺は駆け出した。


なんだあれは!



9つの頭が胴体から生えていた。そんな魔物だ。

あれは知ってるぞ。ギリシャ神話の大蛇、ヒドラだ。

これがここの最後のボスだな。


ヒドラの後方にはダンジョン穴が見えた。結構でかいぞ。

神須ダンジョンでも4メートルの穴のダンジョンだ。


6メートルもあるかも知れない。


こいつはやっかいな奴だ。

9つの頭から水球を吐き出してくる。


雷刀も、その水球で次々に放たれて地面へと誘導せれている。

だから雷刀が胴体に達する事は決してない。

こいつは頭も賢いらしい。たいした奴だ。


なら雷撃を幾度も放った。

なんだと・・・水の膜で地面へと流された。

なんて奴だ。



俺は大きな声でハルに向かって怒鳴どなった。


「最大の魔法を放つから後の事は任せた」



光魔法と雷魔法で、レーザーを発生させた。

9つの頭を切断して、胴体も真っ二つしてやった。


ああ、やばいぞ。

前回よろ魔力量はアップしたはずだ。

だけど魔法の使い過ぎたようだ。ふらふらして来たぞ。

急いで暗黒吸刀を収納した。


崩れるように倒れた。




東京の大病院で、俺は目覚めた。

まる1日寝ていたそうだ。


それに、めちゃくちゃ検査されたみたいだ。

CT検査や血液採取など俺の同意もなしに強行されたみたいだ。


ハルには前もって、こんな場合の弁護士に相談しろと言ってたが、間に合わなかった。

連絡しても、移動時間が掛かたから仕方ない。


その後の弁護士の訴えも、魔物の戦いで意識を失った人に検査を実施する必要があると突っぱねられたそうだ。

そんな話をハルか聞かされた。


「それでね、その長いすで寝て看病したのは私ですよ」


「そうか、ありがとう」


暇なのでテレビをつけた。


「ご覧ください。これが魔物と自衛隊と覚醒者の戦いの動画です。観光客から提供された物です。覚醒者は、魔法に目覚めた者を覚醒者と呼ぶようです」


「これは、どう考えても魔法ですね。ネットでは密かに囁かれてたので、覚醒者とも言われていた存在です」


「すると日本政府と日本ギルドは、隠ぺいしてたのでしょうか?」


「そのようです」




「なんだあれは・・・ハルは知ってたのか」


「知りませんよ。そうだ、あのおっさんに抗議電話をしてやります」


スマホで何処かに電話して「あの動画を見ましたよ・・・だから言ったでしょ・・・はい・・・はい・・・もう知りません」


「どうした・・・」


「どうもこうもありませんよ。あやまってばかりで話になりません」


「向こうも緘口令かんこうれいで、他人に言うのを禁止していたはずだ。あの観光客も悪気がないからタチが悪い」


寝てる間のある程度の情報も手に入った。


「さあ、帰るか」


「なにを・・・」


俺の服はないのか・・・渦から服を出して着替えた。


「キャー」と言ってハルは出ていった。


病室から出ると近くにいたギルド職員が、あわててやって来た。

俺の前に立ち塞がったギルド職員に「今後の鑑定がどうなっても知りませんよ」と言ってやった。

口をつぐむギルド職員だ。


「支払いは頼みますよ。どれだけの価値があったか知りませんが・・・」


足早に去った。


「師匠、待って下さい」


何処に居た、遅いぞ。



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