第24話新たな生徒




北海道の釧路市の釧路市動物園が近くにある山花やまはなダンジョン。

その2階層で雷魔法で、スライムらを殲滅せんめつし終わった時だ。


ぐら、ぐらぐらっと揺れやがった。

中央から石柱がせり出した。


これを俺は、待ってたんだ。



俺は、走りだした。

急いで石柱にしがみ付いて探した。文字は何処だ。

ない、ないぞ。更に同じ所を入念に探した。


あった。小さくこんな所に書いてある。

【汝の命、1回は救おう】え!それだけ。


あ!赤い玉が飛んできた。逃げなくては、あ!魔石で滑った。

回収しなかった俺のミスだ。

「ドン」と寝転がった俺の体に、玉が命中。


うん、死んでないぞ・・・なんともないぞ。穴も開いてないし、出血もない。

助かったのか・・・それとも命って書いてたから、俺には2つも命があるかも・・・


いやいや油断はダメだ。



山花ギルド支部でも、お願いだから鑑定して下さいと頼まれた。

ここは急に俺が指定した場所だ。

俺の直感が当たったが、訳も分からないものだった。

見たところ少ないからいいか・・・


5日の予定で北海道を巡るコースだ。ギルドが決めたコースは、全て外れだ。

タブレットで検索した俺は、ピンときたね。それが山花ダンジョンだ。


だから鑑定はないと思っていた。

俺が潜ってる間にかき集めたメンバーが26人だ。

仕方ないから見た。


探索者は定年がないが、73歳の老人も混じってた。

おいおいと言いたかった。


水上春みなかみはる16歳です」


え!可愛い少女だ。

確かダンジョン法で、特別に15歳の誕生日から探索者として登録出来たんだ。

タブレットには、ご両親は2年前の事故で2人とも死亡と書いていた。

天涯孤独てんがいこどくの身らしい


普通は親が申請する就労だ。


両親がいない場合は、本人が行政官庁(所轄労働基準監督署長)へ申請することが必要だったはず。

その理由を考慮して労働が認められる事になってる。


理由も書かれてあった。

両親もなく、ダンジョンで探索する事で金銭を受取り自律する必要がある為。


なんて立派な子だ。

15歳からこの山花ダンジョンで活躍してるらしい。

それも俺と同じでソロで探索だ。



【水上春16歳】


水魔法素質あり

火魔法素質あり


俺はタブレットに書き込んで送信した。




予定をキャンセルして、水上と山花ダンジョンへ入った。


「1階のゴブリンは、余裕で倒せるって本当か?」


「本当です。あそこのゴブリンを任せてくれませんか・・・」


「うん、任せるよ」


ササササと走りだした。

手には2本のナイフがキラッと光った。

滑り込むように交差した。

首から出血して倒れるゴブリンをそのままにして、ジャンプしてナイフを投げた。

後方に居たゴブリンは、胸に命中して倒れた。

着地しながら蹴っていた。ふらつくゴブリン捕まえて


首をかき切った。


振向きながら「どうですか合格ですか?」


「ああ、合格だよ」




「ここがスライムの棲家なんですね」


「そうだよ、23時間は安全だから訓練向きだよ」


もう石柱は無かった。


「魔法習得は、魔法を信じる事が1番だ。だから見ていろ」


「はい、先生!」


先生か・・・まあいいだろう。


プヨンッと水が発生して凝縮しながら回転した。

その回転は更に加速した。その回転がピークに達した時に放った。

壁に「ドカン」とめり込んで穴を開けた。


ハルは、穴を不思議そうに穴を見て、指で触りだした。


「こんな事が私に出来るでしょうか?」


「素質があるから頑張れ。もう1つあるから戻って来い」


「はい」


「次は火魔法だ。下手をすると火傷するから十分に注意しろ」


「はい」目をきらきらさせて見ている。



ボッと炎が現れた。炎は燃え広がろうとするが回転させると小さくなった。

熱さを感じた時に放った。


壁に当たり燃え広がった。火が消えた跡はただれて焦げていた。



「好きな方からやってみろ」



「ウ~ンッ、ウ~ンッ」と唸ってばかりだ。

俺は、そっと背中に触れた。


ボッと炎が出た。5秒が過ぎるとシュッと消えた。


彼女は薄っすらと汗を流した。


「これが限界です」


「限界を自分で決めたらダメだ。常に限界を超える事だけを考えろ。分かったな」


「はい、頑張ります」




かれこれ6時間が経過した。

もう彼女は疲れ果てていた。


「もうこれで終わりだ」


「まだやれます」


「限界を超えろと言ったが、大事な事を忘れてないか」


「あ、魔力枯渇まりょくこかつですね」


「気を失ったら魔物に好きなようにされるぞ」


「そうでした。注意をおこたっていました」


「俺なんか、使い果たして3日も寝ていたらしい」


「え!襲われなかったのですか?」


ここは正直に言えない。


「安全な所での訓練中の話だ」


「そうでしたか」


2人して、ダンジョンを歩きながら帰った。



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