第23話ゴーレム




ギルドマスターの部屋で、俺は勉強中だ。


「魔は決して人間が扱えるものではない。魔人の血がなせる血魔術なのだ」


え!魔はダメなのか・・・それに魔人ってなんだ。


「魔人は何処に居ますか?」


「魔王が統治する魔大陸の住民が魔人だ。ほれ地図だ」


見せられた地図は、ぐるっと回って反対側の大陸だ。1ヶ月四輪バギーで走っても行けそうに無いし、そんな暇人でもないぞ。

飛行する魔法は、風魔法だけだ。しかし、俺の風魔法の熟練度では無理だ。

ギルドマスターは言ってた。風魔法の究極の魔法だと、ここは諦めるしかないな。


「土魔法を使う魔物って居ますか?」


「土魔法の魔物か・・・いない訳ではないが、ゴーレムを知ってるか?」


「人工的に作られた。ロボットだって知ってますよ」


「ロボットとは何じゃ。全然違うな、それに何処の話だ。レムって1メートルの魔物が中で土魔法を使って、動かしているのがゴーレムだ」


え!そうなんだ。知らなかった。なら倒し方も知ってるかも・・・


「どうやって倒すの・・・」


「簡単な方法だと落とし穴だ」


「成る程ね、そんな手があったかそれで場所は・・・」


「ちょっと遠いぞ。2日も馬車に揺られた先の、ミダマ山のふもとに棲みついてぞ」


「ミダマ山か・・・分かった。ありがとう」


聞く事は聞いたから地図を買って出て行った。




もうなんて地図だ。もっと詳しく書けよ。

勝手に作られた道を進んで迷子になったぜ。おかしなとも思ったんだよ。

なんとか引き返したが、1日損した。


だから会う人に確認しながら、四輪バギーで走り続けた。

最初は俺を見るなり逃げ出す者もいて困ったもんだ。




「ここがゴーレムが棲む場所か」


「間違いありません。旦那・・・謝礼を」


「お、忘れてた。金貨1枚でいいよな」


ピンッと指で金貨を弾いた。

クルクル回る金貨を、おっさんは両手でキャッチした。

え!両手で・・・

俺は、片手でキャッチすると思ったのに・・・残念だ。


「旦那、ありがとございます。これで借金が返せます」


何度も何度も頭を下げて、帰った。

貧しい村だから仕方がない。


領主が悪い人間らしい。聞いた話もクズ話ばっかりだ。

ああ、嫌な話を思い出した。




この場所がいいな。

ツルハシで何度も固まった土を掘った。

そしてシャベルでガバッと土を掘り出した。

何度も繰り返して、3メートルまで掘ったぜ。


ここで穴から出れないと泣く俺ではない。

脚立きゃたつを出して、あっけなく穴からでた。


土っぽい色の毛布を掛けて。

四ヶ所に石を置いて、その辺の土を掛けたら落とし穴の完成だ。


中央に魔石を3個ほど放り投げた。

この魔石を食べるのがゴーレムで、しばらくは隠れて見るしかないらしい。


双眼鏡であっちこっちを見た。

なんの動きもない。殺風景な景色だ。

まだ来ないのか・・・サンドイッチでも食べるか・・・お!あんがい美味しい。



もう日が暮れかかるぞ。まだかな・・・まだなんだ・・・暇だ。

あ!遠くから音がした。

おおお、近づいてるぞ。やっとお出ましだ。


あ!でかい。4メートルもあるぞ。

3メートルの穴だ。動きを封じればいいから大丈夫なはずだ。


あともう少しだ。


「早く歩けよ、ぼけなす」


落ちた!すぐに駆け出した。

ツルハシを出して、力一杯にフルスイングして頭を叩いた。

お!ひびが入った。続けざまに更に叩いた。もう一発叩いた。

頭が転げ落ちた。


あ!ゴーレムが抜けなかった腕を、なんとか出した。


「俺を掴もうとは百年早いわ」


後方に回って叩いた。

バカ野郎が、穴が邪魔して振り向けないぞ。

これはチャンスだ!!


今度は右肩を狙って叩いた。まだやるか、これでもか、とどめだ!!。

右腕がもげ落ちた。

え!まだ左の腕で戦う積もりか・・・そうか、やってやる。


もうジャンプして、振り被ったツルハシを振り下ろした。


「ガゴッン!」と凄い音がした。


ボロボロと崩れた。更に叩き続けた。

とうとう右胴体が崩れた。

な、なんだこのひょろっとした奴は、こいつがレムか・・・ちらっと俺を見やがった。


おっと逃がさないぞ。

ツルハシを捨てて、暗黒吸刀を出して握った。

そして飛ぶつきながら斬った。

「ギャーァ」とかん高い声で響いた。


レムが死んだ。するとゴーレムの残骸ざんがいが崩れ出した。


【土魔法習得】と表示された。


「やったんだ。とうとうやったぞーー」


もう力を使いはたし。崩れるように尻を地面に付いた。





帰り道にポプラの貧しい村に寄った。

その道にそって深い溝を土魔法で掘った。

めちゃくちゃ簡単に掘れた。

手を地面に付いてイメージするだけで、勝手に地面が陥没かんぼつしていった。


この辺が村に近いからここにしよう。

大きなため池をイメージした。大地が音を響かせて陥没している。

よく知らんから、こんなもんかぐらいのため池だ。


数人の村人がやって来た。


「この辺から音がしたのだが・・・あ、旦那、ゴーレム退治は終わりましたか?」


あ、あのおっさんだ。


「終わったよ。今日はここで泊めてくれ」


「穴があるぞ」


「旦那、この穴は・・・なんですか?」


「お前も言ってたよな。あの川から水を引けたらって、だから俺が水路を掘ったよ」


「だけど水がありませんよ」


「だから、川の手前から掘ったから、後はお前たちで掘れ。水を流しながら掘るのは普通はやらないからな」


「そんな意味で言ってませんよ・・・もしかして、あの溝だ水路ですか・・・本当に水路だ」


「いい物を見せてやるよ」


水色の魔石を出して魔力を注ぎ込んだ。


「旦那、それって水ですよ。水があふれ出てます」


おっさんが村へ走った。




大勢の村人を呼んで来た。


もうその時には、ため池には水がたまって、俺の服はビシャビシャだ。

数人の村人もビショ濡れだ。

それは嬉しそうに、はしゃいだ結果だ。


「あ、水だ」


「あんた。水があんなにあるよ」


「これで水汲みで1日が終わる事も無くなるんだね」


「これを誰が・・・」


「あの旦那だよ。ゴーレム退治に行った旦那だよ」


「あなたが・・・私は村長にボフです。どうもありがとうございました。このご恩は忘れません」


村長の家に泊めてもらった。雨や風をしのげば、十分だ。

あのおっさんの所はボロ家だ。

穴だらけで「ヒュー」て・・・木工ボンドで無くなるまでふさいだ。

穴埋めようのパテがあれば良かったが、そんなもん持ってねーわ。


もう夜になると、寒くて寒くて・・・だから村長の家へ行った。



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