第21話ギルドの頼み




「ドン、ドン、ドン、ドン」とうるさいぐらいに玄関ドアを叩かれた。

それと同時チャイム音もけたたましく鳴ってる。


トイレもゆっくりさせない積もりか・・・「トイレに入ってるから、待ってくれよ!」と怒鳴った。

「ジャーァ」と流して、ドカドカドカと歩きながら玄関の鍵を開錠した。

一気にガラガラと開けたら、10人・・・いや20人ものスーツ姿で俺を見てきた。


「我々はギルド魔法教育部の者です。つきましては重要な話があります」


「そんな事を言って、ヤクザの押し売りか・・・見た感じヤクザその者だな」


トイレの恨みを込めて、俺は嫌味を言ってやった。


「そんなに困らせないで下さい。神須学園までご足労願えませんか・・・」


「神須学園・・・なんだそれ・・・」


もう若手の男女が入り込んで俺を囲み込んだ。逃げ場はないぞ的な対応だ。


「佐々木部長も居られます。それに青い魔石の話もありますから」


抵抗しても無理そうだな。まあ、さして用事もないから行くしかないのか・・・




なんだ!こんな建物が建ってたのか・・・そういえば最近は、神須ダンジョンへ行ってないな。

それでもあっちこっちでも建設中だ。


「オーライ、オーライ、ストップ」


ダンプが「ジャラジャラ」と土砂を下ろしてた。


建物に入った途端に、外の音はシャットアウトされた。

内装はモダンな作りで、モノクロをイメージした風にみえた。



歩きながら「魔石流通部の村上です」と名刺を差出された。

もうこれで20人から名刺攻めにあってしまった。

手には、そんな名刺が邪魔でどうしたものかと考え中だ。

ゴミ箱があったが、見てる前で捨てる事も出来ないぞ。


黒のジャージだが、ポケットがないのがトレードマークの【ザック】というメーカーだ。


そうだ、手の中に小さな渦を出した。

手品をするように、なめらかに動かして消してやった。

手を開いた時には、名刺は消えていた。


何人かの目撃者いたが、マジックだと信じてるだろう。



結構な広い部屋へ案内された。

部屋の片側はガラス張りで、工事のようすが丸見えだ。


中央に大きなテーブルがあった。

向こうは30人に増えて、こっちは1人でなにがしたい・・・いい加減にしろって。


「どんな用件か知らないが、この対応は納得できないなーー」


「これも国の為です。あなたは目立ち過ぎた。青い魔石に魔法と世間の注目をあびてるのがお分かりになってない」


「それで、なにをさせた」


「1つ目は、魔法の素質を持っていそうな人を見て欲しい」


「見ない事もないが・・・見るだけでも辛いものがあるぞ。連続で見るなら1時間だ。それに体調に左右されるのも分かって欲しいな」


「報酬も考えてます。その注意点も考慮しますのでお願いします」


「2つ目は、わたしが言います。青い魔石を効率よくギルドに納めて欲しいのが早急な課題です」


「しかし強制は出来ないはずだ。それでもやらせたいのか?」


「佐川くん、ここは無理を通してはいけないよ」


「しかし、病気で苦しんでる患者の事を思うと・・・それに家族の事を考えると・・・」


「その考えがダメなんだ。その論理で数年前に何人もの探索者が死んだ事か・・・君は忘れているぞ」


「2つ目は気にしないでくれ。努力義務でお願いしたい」


「分かった」


あの女性はうな垂れて、ここから出て行った。


「3つ目は、魔法の才能のある人材をこの学園で指導して欲しい」


「それは必要だと理解してる。だけど青い魔石と指導も2つも押し付ける積もりか・・・」


「それは理解しています。君が魔法の指導が必要だと認識してるなら、後は君に全面的に任せるしかない。佐々木も協力すると言ってる」


「分かったよ。自分なりにやってみよう」


「村上59歳、風魔法の素質がありそうだな。佐々木部長に任せるといいかも」


全員が一斉に村上を見た。その見る目は、妬みや驚きなどさまざまだ。


「なぜ歳まで知ってる。それにもう歳なんだ。無理ですよ」


真っ青な顔でうったえかけた。


「村上、ギルド職員がそれでいいのか・・・よく考えたまえ」


はっ!なにかが吹っ切れた表情になった。


「・・・少し取り乱しました。わたしなりにやってみます」


それが村上の答えだ。




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