第13話魔法だ




久し振りの我が家だ。

無造作むぞうさに服を脱ぎ捨てて、風呂場でシャワーをあびた。


3日以上も風呂へ入ってないなんて有り得ない。

思ってたとおりに泡立ちが悪過ぎだ。

2度も洗う事になった。


そして風呂に浸かった。なんか癒されるーー。

癒され過ぎて、指先はぶよぶよだ。



着替えてからテレビをつけた。


「ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、」


誰だ。そんなに鳴らす奴は・・・玄関へ行きドアを開けるまで鳴ってる。

なんだコイツらは・・・


「わたしは、ギルド執行部の部長佐々木です。あなたが神須勇かみすいさむさんですね」


「はーー、そうですよ。何か用ですか・・・」


鬱陶うっとうしそうに言ってやった。


「あなたは、スライムを倒したと証言しましたが本当ですか?」


なんだよこの女性は、部長で・・・ギルド執行部ってなにやってる部だ。


「はいかいいえで返事をしなさい」


なんで命令するんだ。もう性格もきついなーー。


「部長、ここはわたしが説明した方が早いと思います」


「そうなの・・・任せるわ」


「わたしは佐々木を補佐してる鈴木です。玄関先でなく家に入って話をしませんか?」


そう言いながら名刺とギルド職員証を見せてきた。

名刺をもらったのは初めてだ。「散らかってますが、どうぞ」と仕方なく言った。


居間に案内したのは2人だ。外には何人もの男達が立っている。

もう面倒な話が待ってるに違いないぞ。



鈴木は、手に持ったタブッレトを操作して動画を見せてきた。


動画には、怪我人がベッドで「痛い、痛いよーー」と声を荒げていた。

なにも治療もされないままの放置状態だ。

なぜか手足を固定されて、深い傷口の周りはきれいに拭き取られていた。

しかし、傷から血が新たに流れたままだ。


そこにマスクをした医者が現れた。

医者は、ピンセットを持っていた。その先には青い魔石が摘まれたままだ。

え!あれはスライムの魔石だ。何をする積もりだ。


魔石が傷口に触れた途端に奇跡が起きた。

傷口がふさがり血も止まり皮膚も徐々に再生されている。

そんな動画がアップで映っていた。


え!あの魔石だよな・・・なぜだ?


「わたしどもは、あの青い魔石には治療効果がある魔石と信じてます。何故ならガン患者が完治したからです。今は様々な病気で治療効果を調べてる最中です。だからあなたに確認しに来た訳です。お分かりですか?」


ガンも治すのか・・・しかし、今の俺には必要ない物だ。

俺には、光魔法があるからだ。しかし、なんだか損した気分だ。


「はい、なんとなく・・・しかし青い魔石に治療効果があるなんて知りませんでしたよ」


「そこは重要ではありません。スライムがドロップした事が重要なのです。倒す方法を教えてくれませんか、お願いします」


ここは正直に言うしかないな。あの真剣な顔に、嘘で誤魔化ごまかしするのは無理そうだ。


「雷魔法を使って倒しました」


「黙って聞いていたらなんですか、そんな嘘が通用すると思ってるの!この嘘つき野郎が!」


なんだこの女は。俺はカチンと来た。


「嘘だと言うなら、神須ダンジョンですぐに見せてやるぞーー」


「はい、よろしくお願いします」


え!鈴木の奴がすんなりとお願いしやがった。もう後戻りは出来ない。




神須ダンジョンの2階層へ行く階段前で、俺たちは立っていた。

佐々木に鈴木と若い男女の2人が俺を見てた。


なんだよその目つきは、なぜか気になった。


男は大きな盾と十分過ぎる防具を着ていた。

女は短槍を持っていた。刃渡りは長い短槍だ。


その短槍でゴブリンの首を見事に切っていた。

俺が手助けするスキもなかった。


男は、佐々木を終始守っていた。


「はやく行きなさい」


きつい佐々木の声がしゃくにさわった。なんだこの女は・・・バカにしやがって。

俺は駆け下りた。そして止まった。



階段の前にスライムが6匹もいた。


「佐々木部長、ここは危ないです」


そんな男を無視して、「バチ、バチ、バチ、バチ、」と放電して放った。

あっけなくスライムは弾けて消えてしまった。

消えた跡には、青い魔石が転がっているだけだ。


「部長、青い魔石があります。それに本当に魔法が見られました。世界初です。これはビックニュースですよ」


「鈴木、うるさい」


「申し訳ありません」


「分かればいいわ」


「鈴木さん、何を取ってる。それは俺の物だぞ」


鈴木は仕方なく魔石を返した。


なんか高く買取ってくれる雰囲気がして来た。

1万円は少ないな。もっと値段交渉して・・・あ!あの弁護士を呼ぼう。それがいい。


「部長、あの空間に行ってみましょう。あそこには謎があるはずです」


「鈴木にしては、いい考えよ。はやく行きましょう」


行くしかないのか、俺に相談なく。




あの空間に来ていた。

もう何処どこ彼処かしこもスライムだらけだ。


「バチ、バチ、バチ」と放電を放ちながら入った。

すぐに「ボタ、ボタ」と大量にスライムが落ちては、姿を消した。

そして5分で全滅させた。


あれ!あの石柱が無かった。

揺れも無い。1度きりの報酬なのか・・・謎だ。


「なにも起きません。なにかあると思ったのに・・・」


「もう用事も済んだわ。帰るわよ」


ツカツカと歩き出した。その前には男が先導してる。


俺は石柱があった場所で、鑑定を繰り返していた。

しかし何も無かった。


「神須さん、帰りましょう」


「鈴木さん、もう帰るのか、ここに残るのはダメか」


「ダメです」


「あの女が風魔法の素質があって、ここで魔法の習得が出来ると言ってもか」


「え!風魔法の習得が出来る」と全員が振返って声に出していた。



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