第12話ギルドマスターに依頼した




あれ!なぜベッドの中で寝てるんだ。

ガバッと起き上がった。


「痛たたた」急に頭痛がしてきた。


この部屋は見覚えがある。そうだ!宿屋だ。

まだ頭痛がするが歩き回って何が起きたか必死に考えた。

そうだ。くらくらして倒れたんだ。急に鮮明にドラゴン討伐を思い出した。


誰かがここまで運んでくれたに違いない。


あ!予備のナイフは机の上あった。その横にはポーチもあった。

中身を確認すると、木札もギルドの銅メダルも金もあった。


盗まれてなかった。

物騒な世界だと思っていたのに・・・


体に異常がないか触りまくった。どこも出血などなかった。


黒い渦を思い浮かべた。

目の前に現れた黒い渦からペットボトルを取り出した。

ゴクゴクと一気飲みをした。冷たくて美味しいお茶だ。

木窓から日が差込んでいるから、昼間だな。

木窓を開くと涼しい風が吹き抜けた。


下が騒がしい。

なぜだ!往来もせずに人々が大声で話し合ってるぞ。

この言語通訳は、注意力が散漫さんまんだと聞き取りにくいから内容も分からない。

気を静めて集中だ。

たまにドラゴンって言葉が聞こえてきた。


なにやら荷馬車の周りには人だかりだ。徐々にこっちまで移動して来たぞ。

荷馬車の載ってるのは、ドラゴンの頭だ。


「ドラゴンだ!討伐が成功したぞ!!」


「あの大きさは、凄いぞ」


「やーい、やーいドラゴンだ」子供の声がはっきりと聞こえる。


その後ろから肉が積まれた荷馬車がやって来た。



「あんた、目が覚めたのかい。2日も寝てたから心配したよ」


後ろを見るとおばさんだ。


「2日も寝てた・・・俺が」


「ドラゴン討伐の知らせと一緒に、あんたも運ばれたんだよ」


「そんな事があったのか・・・」


「そうだ、使いの人が来てね。起きたらギルドに来てくれって伝言があったよ。行くのかい」


「うん、行くよ」


「まだ休んだ方がいいと思うけど・・・頑張って行きな」




俺がギルドに入った途端に、ギルド内はざわついた。

俺が列に並ぼうとしたら、受付のおっさんが大声で話し出した。


「あんた、2階奥のギルドマスターの部屋に行きな」


皆に見られながら2階に上がった。


ドアをノックした。


「入れ」


入るとギルドマスターが、デスクに向かって何かを書いていた。


「イサムか、良く来たな。イサムの報酬だ。金貨100枚が入ってるぞ」


デスクにジャラと袋が置かれた。


「ドラゴンの魔石が欲しいのですが」


「魔石ってなんだ」


魔石を知らないのか・・・なぜなんだ。

ポーチからゴブリンの魔石を出して見せた。


「なんだ魔物の石か・・・それが欲しいのか・・・そんなものを・・・」


なにか考え込んでいた。


「ドラゴンの討伐部位として、国王に送ろうと手紙を書いてたところだ。イサムが欲しいなら持ってけ」


デスクの引き出しから、大きな魔石を出して来た。

15センチの魔石だ。ダンジョン産は最大で5センチだ。

それに赤と言うより真っ赤だ。こんな色濃い赤は見た事がない。


「討伐部位は、どうするのですか?」


「心配するな。ドラゴンの頭を送る事が領主さまの考えで決まったから・・・別に問題ないはずだ」


「それなら安心しました。ありがとう御座います」


そう言って魔石をもらって、ポーチに無理やり押し込んだ。

でか過ぎだ・・・


「教えてくれ。最後に使った魔法はなんなんだ」


「あれは、光魔法と雷魔法の融合魔法です」


「光魔法も使えるのか・・・その話はあまりしない方がいいぞ。教団に知られたら強制的に連れて行かれるだろう」


「教団って評判が悪いのですか?」


「大っぴらには言えないが、王国の影の実力者だよ。だから無闇に悪口も言えないのが現状だよ」


デスクにあった金貨の袋から半分を出した。


「マスター、それで魔物の石の買取依頼をお願い出来ませんか」


「買取るって事か・・・出来るよ」


そう言って、紙にササッと書いた物を俺に差出した。


「そこにサインしたら依頼受理だ」


買取る値段は、魔物の討伐報酬の2割で買うらしい。

そしてギルドは、1割の手数料を取って3割が支配金額だ。

まあ悪くないのでサインして手渡した。


「明日から買取を始めるよ」


「お願いします」


軽くなった金貨袋を持って部屋を出た。

出た途端に黒い渦をだして収納した。

そろそろ帰るか・・・



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