第2話異世界




少し古民家ぽい家だが、暇をみつけては住みやすいように作り変えた。

そんなじいさんの家も、畳をとっぱらったらシロアリでぼろぼろだ。

なんとか素人なりに改造してフローリング張りにした。


外ではトイレの浄化槽じょうかそうを埋める穴掘りまでして、後は業者任せで80万円の出費だ。

そんな我が家の居間で液晶テレビに映っているのは、【カミス】を持って活躍している御神恵子おがみけいこだ。


「どうでしたか、22階層の魔物は?」


「オークなんて、たいした事はなかったわ」


「もっと詳しく教えてもらえないでしょうか・・・」


「後は、後ろの連中に聞いて」


足早に報道陣を煙たそうに去った姿は印象的だ。

それを俺は、複雑な気持ちで見ていた。



気を取り成して、箱を取り出して指輪を見詰める。

少し大きな指輪で、裏側にはビッシリと解読不明な文字が刻み込まれていた。

それを左人差し指にはめた。やっぱりぶかぶかだな・・・


え!なぜだ。

指輪がちぢんでるぞ。しだい締め付けだした。


思わず「痛い!」と叫んだ。あ!指輪が消えてしまった。



指を触りまくった。指輪の痕跡こんせきが全然ないぞ。


「どうして、こうなった!」



あ!なんだ。

目の前に透明な画面が現れたぞ。

それに矢印が表示されてる。


画面を触ったが何もない。スカスカだ。


ただ見えるだけか・・・仕方ない。矢印の方向へ行ってみるか・・・

外に出てしまった。そして納屋を指し示していた。


納屋を「ガラッ」と開けると、俺の姿があった。

あれ!なぜだ。納屋に鏡など置いてないはずだ。

この鏡は変だ。鏡の表面が波紋が広がって揺れている。

後ろを覗き込んだが何もないぞ。


矢印は鏡を示している。鏡を指先で突いた。


「あ!やばい、鏡に吸い込まれるなんて・・・」





何故だ。麦畑が広がっている。

後ろを振返っても鏡もなく、納屋もなかった。

え!昔風に言えば神隠しにあったのか、それとも異世界に飛ばされた。



そうだ!じいさんに聞いた神須神社の話を思いだした。


青年が鬼退治をして、神の国へ行った話しだ。

そして戻って来た時には強くなっていた。


雨が降らなくて困っていると雨を降らした。

そして怪我をしても治してくれた。


その青年が神としてまつられたのが神須神社だ。


それにしても、画面の右上の数字はなんなんだ。

もしかして時間表示か・・・23:55:22と表示されている。

これが0になれば帰れるのか・・・淡い期待で数字を見詰めた。


【時間が0になれば帰れます】と表示された。


え!と驚きながら助かった。

理由はわからないが安心できたのでゆっくりと見渡した。


あれはもしかして城壁か・・・ここに突っ立ても仕方ない。

あの城壁に行ってみるか重い足取りで歩き出した。


「××××××××」と何か遠くから声が聞こえてきた。


振返るとおっさんが駆けてきた。

え!ここは外国か・・・赤毛のおっさんだ。

しゃべってる言葉が全然分からないぞ。英語でもないしフランス語でもなさそうだ。


透明な画面が又も現れた。【言語通訳】と表示された。

その途端に話す内容が分かりだした。


「何処から来たんだ。あんた、ここの人間じゃないな。それに見た事もない服装だ」


これは定番のごまかすしかない。


「ちょっと頭を打ってしまって、記憶があまりありません。わたしは誰でしょう」


「頭を打ったのか・・・さてはゴブリンにやられたな・・・仕方ない。門番まで案内しよう」


優しいおっさんで助かった。それにここにもゴブリンがいるのか・・・

道中、俺のナイフの話になった。

中々いいナイフだとおっさんは手に取ってほめた。

そして小銭を見せた。デザインに驚き細かな細工に感心してた。




正門の門番に、詳しく説明したのもおっさんだ。

兵士に連れられて、兵舎までやって来た。


「サイラ隊長、この者がゴブリンに襲われて記憶をなくしたみたいです。持ち物から海外の人間ようです」


そのサイラ隊長は、金髪のエルフだ。美人で耳がとがってる。


「どんな物を持っているのか見せてみろ」


あのおっさんと全然違うぞ。恐る恐るナイフを見せた。


「ほうーー変わったナイフだ。金は持ってるのか」


「こんな金しか持ってません」


財布と小銭入れを出して、小銭と1万円札と千円札を見せた。


「そんな金は、ここでは通用しないぞ。金貨1枚で買ってやる」


そう言って金貨を手渡された。


「なんだ。文句がありそうな顔だな。金貨1枚もあれば、ここでは1ヶ月は楽に暮らせるはずだ。ありがたく思え・・・それに通行手形だ」


木札を手渡された。


「再発行は銀貨2枚だ。大事に扱え」


ここはシブシブ従うしかなさそうだ。




兵士に教えられた宿屋にやって来た。


「ここは長期宿泊の宿だから1ヶ月で銀貨1枚だよ。もちろん前金だからね」


仕方ないので金貨1枚を手渡した。

お釣りに金貨より小さい銀貨9枚をもらった。

飯代は別料金らしい。銀貨1枚で寝床は確保できた。

一応、1ヶ月はブラブラと楽に暮らせるみたいだ。


それに、ここには魔物を討伐して暮らす冒険者が居るらしい。

そしてギルドもあるらしい。どんなギルドなのか心配だ。



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