対 藤枝中央女学園 part4

水瀬と七草のプロフィールを近況ノートに投稿しました。

イメージイラストをアップしたので、ぜひ見てください


--------------------------------------------------------------------


3回の表。

現在は藤枝側が大きくリードして4対0。

星彩側のベンチに大きく調子を崩した者がいた。


「七草、その……気にするな。 お前が取られた分私達チームで取り返すさ」


七草はベンチに戻った後、一人で隅に座り俯いている。

浅野は七草の前に立ち頭にタオル置き、励まそうとしている。


「お前だけで戦っているわけじゃない。だから、一人で責任を背負うな」

「ウチの球、すべて全力で投げたのにあの人に通用しなかった……っ!!」

「ナナちゃん……」

「悔しい悔しい悔しい悔しい悔しいーっ!!」


ベンチ中に七草の叫びが力強く響く。


「ふぅ……、お騒がせしてすみません。 もう吹っ切れました」

「ほ、本当か」

「はいっ! 次の回も行けます!」

「それは良かった。 潰れていたら、さすがに交代しないといけないからな」

「その九条さんと早く勝負したいなっ!! 私の球が通用するかな!」

「可能性あるわな」

「綺羅でも無理だとウチは思うよ。 投げるとき本能がゾーンに投げるなってアラームが鳴ってたし、そのぐらい怖い打者だったわ」

「へぇ~、そんな打者を仕留めたらどのくらい気持ちいんだろうねっ!」

「あんたのそういうところを見ていると、悔やんでいるのが馬鹿らしく感じるじゃない」

「まぁ、お前たちは入学したばかりの一年生だ、これから成長するさ」

「「はい!」」


そう言って浅野は七草の隣に座る。


「私がナナちゃんの仇を討つからねっ!」

「いや、死んでねーしっ!」


七草のメンタルが少し戻っと時、星彩側の攻撃が終わっていた。


「ありゃ、もう交代か、頑張れよ七草」

「はいっ!」


3回の裏は、七草が立ち直り一点を失点して終わる。


4回の表、星彩の攻撃が始まる。

この回から藤枝側は投手を交代してきた。

マウンドには、白銀の髪が風でなびく姿があった。


「藤枝のエース、白滝舞……」

「次は水瀬からだったな」

「そうですね」

「はい、レイちゃん」

「ありがとう、セイちゃん」


綺羅は水瀬にヘルメットとバットを手渡す。

すると、水瀬は太陽のように明るく照らすような笑顔で返す。


「じゃあ行ってくるね」

「うん! レイちゃんなら打てるからね!」

「任せて」


白滝の投球練習が終わり、水瀬が左打席に立つ。


「さてチームのため、セイちゃんの笑顔のため打ちますか」

『随分と余裕そうな表情だな、あの打者』

「下に変化する球を多用する投手ね、映像だとフォーク、縦スライダーを使ってた。 どれも変化が大きくキレもある。 もしかしたらスプリットも使ってくる可能性もあるよね」


そして、白滝は足を大きく上げて、地面を踏み込み腕を大きく振り、球を投げる。

一球目はインコースの高めに球が走る。


「ストレート! 初球打ち!」


水瀬はスイングをするが、球は急激に下に変化してストライクゾーンから外れ、バットは空を斬る。


「ストレートじゃなくて、フォーク!?」


その球の変化の大きさを見た星彩側のベンチは唖然としていた。

続いて二球目も同じコースに球が走る。


「次もフォーク!?」


水瀬は低めを狙いスイングをするが、球は変化せずそのままミットに収まる。

その球速は125キロ前後。


水瀬はあっという間に二ストライクカウントが付けられる。


「下方向しか変化球を持たないと思ってたけど、こんなの投げ分けたら脅威じゃない」

『この打者、スイングが良いね。 甘い球投げたら簡単に外野に飛びそうだ』


三球目は遊び球でインコースの外に投げて、タイミングを外していく。

四球目はアウトコース高めに球を放つ。


「ストレートか変化球かまだ変化しない……、ここは一か八か」


水瀬がスイングするタイミングで球が下の方向に変化する。

賭けに勝ち、アッパースイングで下から上へと振りそのまま打球を飛ばす。

打球はライト頭上を飛び、水瀬は二塁まで進んだ。


その後、次の打者の神園を内野フライで打ち取り、4番の芝井が打席に立った、

芝井はツーストライクと追い込まれたものの、ストレートを何とか打ってヒットを記録した。


次は5番の高橋だ。


『次の打者は、一年投手の球をツーベースヒットを叩き出した子』

「藤枝エース……っ!絶対に捉えマース!」


気合たっぷりの高橋に放った一球目はインコース低めにストレートだ。

ストレートのスピンが高回転に掛かった球を高橋は打つがライト方向のファールゾーンに飛ばし、ストライクカウントとなった。


「力強い球威デスね、球速も中々……」


二球目はアウトコースに縦スライダーを放ち、空振りを取る。

三球目はインコース高めに球を放つ。


「ワタシが打点を取って見せます!」


球はそのまま変化せず、ストレートが襲ってくる。

それを逃さずにバットを振り、打球を飛ばす。

惜しくもセンター前に打球が落ち、一塁しか進まないものの水瀬をホームに返し、この試合星彩側が初の一点を記録した。


その後、芝井をホームに返すことが出来ずにこの回は終わり、4回の裏は何とか失点1で抑えて終わる。

5回の表は三者凡退で走者出さずに交代を迎える。


5回の裏。

この回から綺羅がマウンドに立つ。


「ごめん、綺羅。 こんなに点差を開いてしまって」

「何? 敗戦処理だと思ってるの? 私はまだ諦めてないよ。 だって次は、5番の九条さんと戦うんだよ。 ここで打ち取れば私は点を取らせないよ!」

「……さすが、ウチの目標ライバルだね。 ちゃんと反省しないとね」

「うんっ! 帰って一緒に練習しようね!」

「い・い・雰囲気ですねっ!」

「あっ、レイちゃん! この回からよろしくね!」

「任せて、ある程度選手の情報は芝居先輩から聞いたから、セイちゃんを勝利へ導くリードをして見せるね」

「うん、私の背中を預けるね!」


二人はグラブ同士でタッチしてグランドに向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る