対 藤枝中央女学園 part3

水瀬と七草のプロフィールを近況ノートに投稿しました。

イメージイラストをアップしたので、ぜひ見てください


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2回表。

カウントは、一アウト二塁。

打席には、打順元2番の草野が6番として立っている。


「あの投手の球種は、アンダースローからのスライダーとシンカー」


球速は遅いものの、投球フォーム特有の球筋が打ちづらくほかの打者を打ち取ってきた。

ただ弱点は、球に威力がないため当たれば結構打球が飛ぶ。


『まさか一打席で打たれると思わなかった……。あれで一年……』


彼女は中学からアンダースローを使った投球をしていた。

小学生の頃は器械体操を習い、中学生から野球を始めた。

入部当初、器械体操をやっていたことにより、体は柔軟で投手を勧められた。

オーバースローやスリークォーターといった投球フォームを練習したが、球速がほかの投手よりも遅く周りから評価されなかった。

それでも、野球部に入ったからには活躍したいため戦力になれるよう努力をしてきた。

それで、体の柔軟さ武器にアンダースローという投球フォームに行きついた。


『私のデビュー戦、せっかく名門高にスカウトされたんだ! この試合、交代するまで無失点で抑える!』

「ここは、バット引き付けて、打つ! 見極め大事!」


両者共に、睨め合う。

その間、数秒。

その後、投手が球を放つ。


一球目はインコースに低めを狙ったストレート。

その球を打者は見送り、ストライクカウントが付く。


二球目は、アウトコースに高めで、外に逃げるスライダー。


『浅野先輩のスライダーに比べれば、球速も変化もない。 高めを狙ってるから打席の前ギリギリで打つ!』


星彩では、バッティング練習としてフリーバッティングによる真剣勝負をよく行われてきた。

投手も練習になるので、ある程度プルペンで投球練習で調整を終わらせてから、打たれバッティングピッチャーとして参加する。

その練習は、浅野や中野といった投手としてレベルが高い者が部に入ってから劇的に練習の質が上昇した。

今の2年生は、浅野のストレートや高速スライダーといった変化球を何度も打席で見てきた。


『シンカーだったら打てなかったけど、これならっ!』


球は徐々に上へと上昇していき、同時に左方向に球が曲がる。

草野はバッターボックスの前ギリギリまで踏みしめて、少し短く持ちスイングを行う。


『いっけー!』


球はバットに当たり、三塁方向に飛び。

三塁手サードが打球を取ろうとするが、グラブを弾きそのまま転がっていく。


それにより、高橋は三塁に草野は一塁まで進んだ。

カウントは一アウト一三塁という点が取れるチャンスがやってくる。


次は、打順7番の片桐が打席に立つ。

だが、この回は点を取れずに交代となった。

相手はシンカーを多用していき、ゴロを量産していきアウトカウントを稼いだ。







2回の裏。

この回の相手の打順は4番の柳原やなぎはらからだ。


「さて、どんな球種を持っているかな」


彼女は打撃、長打に走力がバランスがいい打者だ。


『強豪校の4番よ。全力で打ち取りに行こう。ただピンチになるまで、縦スライダーを使わないようにスライダーやシュートで抑えていこう』

了解


七草の決め球は縦スライダー。

高身長から放つ、下に変化するスライダーはその変化量は大きく凄まじい威力を誇っていた。


「背が高い投手でストレートやスライダーを持つ。稲葉情報だと、スライダーはそこまでキレがないって言ってたけど、あの背から放たれたら威力が高いでしょ!」


柳原は持っているバットを強く握る。

今の作戦は相手の投手の投球数を増やしてスタミナを減らしつつ、球種を暴くことだ。


「さぁ掛かってこい!」

『この4番を全力で抑える!』


足を大きく上げて、地面を踏み込み腕を大きく振り、球を投げる。


一球目は、インコースへ高めにシュート。

全力シュートにより、一回の裏で投げたシュートよりも少し変化して約、球一個分右方向に曲がる。


「内角高めのシュート!?」


この球を打ったら、球が打ち上がり内野フライになりそうと思い、スイングを止めた。

球は内角と真ん中の中間に入った。

まずはストライクカウントが一つ。


「定石なら次は外角低めかな」


バッターボックスの中でベースに寄り、投手側に前へ構える。

こうすると外角と変化球に対応しやすくなる。

その様子を芝井はベースの後ろで確認をしていた。


『外角と変化球を意識した? フェイントかもしれないけどインコース低めにストレートにしよう』


芝井のサインに縦を振り、ストレートを投げる。

もし打たれてもこの姿勢ならバットが詰まりファールゾーンに飛ぶだろう。


二球目を投げる。


「インコースに来てもいい様に、一応バットを短く持とうかな。私の役目は球種を見極めることと、塁に出ること!」


インコースの向かう球をバットが捉え打球はファールゾーンに飛ぶ。


「制球力がそこそこある投手ね……」


柳原はこのままバットを小さく持ち、インコースに対応できるように構える。


『今は二ストライク、球を見送ることが出来ないからインコース低めでスライダーで』

了解、4番を仕留める!』


三球連続のインコースを狙う。

投手に目掛けて、スライダーを放つ。


「っ!? すっぽ抜け!? いや、インコースにスライダーか!」


徐々に軌道が変わる球を見てスライダーと判断し、このままだとゾーンに入るので、バットを芯で捉えるよう足を踏ん張りスイングをする。

それにより、打球はファールゾーン寄りにレフト前まで飛ぶ。

これでノーアウト一塁となる。


「次は5番。実質私たちの4番が相手よ」


5番の九条が右打席に立つ。

一塁にいる柳原は七草に一塁から前に出て、リードをしてプレッシャーを与える。


七草はそのリードを牽制する。


『前に出すとうるさい……』

「ここで叩きますわぁ~」

『この5番は長打がある、なるべく高めに球を集めよう、まずはインコースにシュートね』

了解


一球目、内角を抉るようなシュートを放つ。

下位打者じゃ手を出せない際どい球を来る。


「ふんっ!」


だが、九条はスイングをして打球をファールゾーンに飛ばす。


『嘘っ!? ウチのシュートを簡単に飛ばすなんて!』

「さて、次は何が来るのかなぁ~?」

『次はアウトコースの高めにスライダー』


芝井のサインに首を縦に振り、投げる。

その球も簡単に打ち、ファールゾーンに飛ばす。

そこから、遊び球を混ぜて攻めるがゾーンに入る球以外は見送りボールカウントとなり、ゾーンに投げてもファールゾーンに飛ばす九条。



『もう遊び球を投げることは出来ないし、ゾーンにスライダー、ジュートにストレートを投げても粘る。 決め球狙い?それとも、甘い球待ち?』

『これが……、異名持ち打者……。強すぎっしょっ!?』

『ストライクを取るには、これしか無さそうね。初回じゃ打てないから、ドンと来なさい!』

了解っ!!』


七球目、この試合で始めて投げる変化球。

インコース低めに縦スライダーを投げる。


途中から球が急激に下に曲がる。


「これが決め球見ていねぇ~。 ここで捉えるわっ!」


球をバットで捉えた。

打球はライト方向に斜めに打ちあがり、フェンスを越え、ホームランを決めた。

これにより、先制2点の記録を出し、応援席から喝采がグランドに響いた。


『ウチの縦スライダーが!?』


下から打ち上げる打法、アッパースイングにより球は打ち上げられたのだ。

七草は自分の決め球である縦スライダーをホームランにされ、恐縮してしまった。


『これが藤枝の九条……。ここは励まさないと! 安心しなさい七草、まだ2点これから抑えて私達が点を取るから』


決め球を逆に決められ、打たれ弱さが出たのか、この後も走者が出るようになり、この回は4点を取られて終わった。

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