対 藤枝中央女学園 part2
主人公のプロフィールを近況ノートに投稿しました。
イメージイラストをアップしたので、ぜひ見てください
--------------------------------------------------------------------
藤枝中央女学園の攻撃でカウントが一アウト一塁。
次の打順は三番――クリーンナップだ。
打順三番が打席に立ち、バットを構える。
『何なのこの威圧感……! 手が震える……』
「さぁ、来なさい。 私が球種を暴いてあげる」
『甘いところ投げたら、点が取られる……。集中しないとっ!』
『初球はインコースの下にゾーンギリギリのシュートをお願い』
芝井のサインに首を縦に振った七草は、一球目を投げる。
七草のシュートは右方向にあまり変化しない、その変化量はツーシームと似た感じだ。
ただ、ツーシームは利き手側に曲がりつつ落ちる球なので、別の変化球だ。
「……? 今のはストレート?」
相手は初球を見送り、一ストライクのカウントをもらう。
「さっきのバッターサークルで見た感じだともうちょっと早かったような……。まぁいい、次は打つね」
『初球見送りは好都合、次はインコースの上にストレートね』
二球目、インコースの上を目掛けてストレートを投げる。
「さっきより……速いっ! タイミングが外れた!?」
相手はバットの振りがワンテンポ遅れたことにより、空振りとなり二ストライクとなる。
「厄介な緩急の付いたストレート……。 チェンジアップみたいにストレートとの球速差は感じないけど、初球との差は明確にあった」
チェンジアップは、基本的にストレートと投げ方は同じだが速度が10キロ~30キロは違うと言われるが、先ほど投げたのは、あまり変化しないシュート。
ストレートとシュートの球速差は基本的に5キロ~10キロと言われる。
『空振った!? 危なかった……』
『いい球来てたわよ。もしかしたら、インコースに弱いかもね、次もインコースの下に右バッターに抉るようなシュートね』
『了解』
「まだ外角に球が来てない、次来るか?」
三球目は初球と同じインコースの下に目掛けてシュートを投げる。
「またあのストレート!? しかも内角の下……、くっ」
相手は球筋を見た瞬間に腰を回しスイングを行う。
バットに球が当たったものの、バットのグリップ近くに当たり三塁近くに転がっていく。
三塁手である市森が前に転がっている球を捕球し、二塁にいる岩原に送球し、さらに岩原は一塁手の神園に送球する。
5-4-3のアウト二つ《ゲッツー》を取り、藤枝側がアウトを3つ取ったので、攻守交代になった。
相手側はベンチに戻る。
「……すみません」
「構わないさ、次に活かせ」
「……はい、監督」
「それでどうだった? お前が打ち損ねたのは余程だろ」
「はい。 初球と三球目はストレートみたいでしたが、二球目はそれよりも速いストレートでした」
「投球の腕の振りによって、ストレートの速度をコントロールしているのか?だが、それだったらチェンジアップなどで緩急を付けばいい……。 情報が足らんな、一巡目はなるべく情報を収集で甘い球が来たら積極的に打て」
「「「はい!」」」
一方、星彩陣営では、七草がベンチに座りぐったりしている。
「お疲れ様、はい水」
「サンキュー、……うぐっ、ふー、はぁしんど」
「高校野球のマウンドはどうだった?」
「サイコーだったよ。ただ、一球も油断できないのはしんどい。 一人ひとりの打者から
「そうなんだね、後半が楽しみだよっ!」
「楽観的ね……。 ただ、チームに負担させないように一点もやらずにアンタと交代するわ」
「うん」
現在は2回の表。
星彩側の攻撃で、4番の芝井が打席に立っている。
「……セイちゃん」
「ん?どうしたのレイちゃん」
「今日はやけに七草さんとお話するね」
水瀬は不機嫌そうに綺羅に向けて言った。
「うん、同じ投手でライバルだし。それに緊張してたら解さないとね」
「そう……」
「それにしても、レイちゃんが打席に立って打てなかったなんて……」
「さすがにアンダースローから放たれる球をいきなり打つのは無理よ。初めての挙動だもの」
藤枝側の先発は、昨日のミーティングでは話題が出なかった選手が先発として起用された。
それもそのはず彼女は、初の公式戦で登板すらなかった一年生投手。
球速は80~90キロ後半で遅いが、投球フォームが珍しいアンダースローだったので、試しに1軍のレギュラーになった。
アンダースローから放たれるストレートは独特で、コースの上を狙うと球が浮き上がるような軌道をして打ちにくい。
俗に言う、ライズボールと言われる球だ。
ストレート以外にもスライダーとシンカーを持っていた。
シンカーは一度、水瀬に対して使われ、打ち取った球だ。
どれも捉えることが難しく一回の表は、塁に留まることが出来なかった。
「でも、次は打つんでしょ?」
「セイちゃんの応援があればね」
「いつも応援してるのに……」
「ふふっ、じゃあ応援してることを確認したから、次はフェンスまで飛ばすね」
「うんっ!」
「アンダースローと勝負だなんて、初めてよ」
芝井は下から放つ球に慣れず、バットで上手く捉えられず、苦虫を噛み潰したような表情をする。
「4番として、どう攻略する!」
相手が三球目の左打者のインコースを抉るようにスライダーを放つ。
「くっ……」
下から上と浮き上がる挙動に左に曲がる変化。
球はゾーンから出るほどに変化したため、スイングをしようとしていたが、何とか頭からの指令でブレーキを掛け振らずに済みボールカウントとなった。
「本当にこのチームの投手層熱いわね……。ノーデータ選手でも、厄介な投手が居たなんてね」
『ここで4番を落として、一軍の残留する!』
相手が4球目をアウトコースの下に目掛けて放つ。
アウトコースに向かう球の軌道を見て、スイングを行う。
『これでお終いよ!』
「アウトコースの下にストレート! ここで打つ!」
左に向かってた球が投手と打者の間ぐらいに球の軌道が右に変化して、バットのスイングが当たらず球はミットに収まった。
「ここでシンカーか……」
三ストライクで一アウトのカウントになる。
今投げていた球はシンカー。
利き手の方向に曲がりながら、縦方向に沈むため打ちづらいが、投手の腕の負担が大きいためあまり投げられない。
「振ると行動に出たときに球の軌道が変化するのは難しいわ」
「どうでしたカ?」
「狙い球はスライダーがいいかも。まず一巡は目を慣らすほうがいいからね」
芝井はベンチに戻るときに、
「アンダースロー……。初めて戦うデス!少し楽しみデスね」
高橋が左打席に立ち、バットを構える。
『また左打者ですね。初球はスライダーでいいでしょ』
「かかってこいやデス!」
初球、インコースを抉るスライダーを放つ。
『さぁ、見送りなさい!』
「来た、スライダーっ! 初球打ちデス!」
高橋は、大きくバットを振るタイミングでバッターボックスに空いているスペースに足を踏ん張りさせ、バットを芯で捉えやすいようにする。
少し芯から外れたが、金属バットなので木製よりも打ちやすいので飛ばせる。
打球はセンター頭上を飛び越えフェンス前に落下する。
高橋は一塁を超えて走塁し2塁まで進んだ。
記録はツーベースヒットとなり、ベンチから喝采が聞こえた。
次は元2番打席の草野だ。
「このチャンス……!逃さないっ!」
草野は右打席に立ち、バットを構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます