3『ロイデア』
「少年…?
いや、そんなことはいい!!
君も避難しなさい!特務機関が来るまでまだ時間がある!!」
おじさんが1人、こちらを見て声を荒げる。
少年と声をかけたが、顔を隠しているので自分でいったその言葉に疑問を呈していたが、そんなことはいいと言わんばかりに言葉を続ける。
「気にしないでください。
自分の避難を優先して下さい!!」
「待ちなさっ!!」
キィィィィィンと、
この世界は、大元は至って普通のよく見慣れた世界であろう。
科学が世界を牛耳り。
資本主義が蔓延して数世紀。
証明されてもなお諦め切れない人間がおり。
人間同士の争いは、今日も絶えない。
ただ、1つ。
ただ1つだけ、この世界には不可思議な点がある。
昔、偉い誰かが言った
『あれらは、神代の忘れ物だろう』と。
「マン!!」
「まぁ、緊急だしお咎めはしないが私の型は『スワンプマン』が正式だからな。
というか、マンは無いだろマンは」
「走りながら、スワンプマンなんて言えるか!!
こちとら、初陣だぞ!!」
スワンプマンと呼ばれた、影なき青年は地面から浮くと、垂直に急上昇を始め、自身の数十倍の大きさを持つであろう、ドレスを纏ったソレと対峙する。
「恨みはない、憎しみも。
私は、
だけど、契約は遂行しなければいけない。
どうせ、我等に死の概念は無いのだ。
さっさと
そんな彼を尻目に、ソレから定期的に飛び出る黒い電気玉のような物を標識で打ち返す。
2.3回打ち返すと、焦げて使い物にならなくなる標識を壊れては作り、壊れては作りを繰り返して逃げていった人達の方に出来るだけいかないように動き回る。
ソレは動かない。
ソレに敵意は感じない。
ソレはそこにただ、立ち尽くす。
ソレは、居るだけで辺り一面を焦がしていく。
古代の文明や文献より時折登場する存在が居た。
神より遣われた使者、人を裁くモノ等と書かれてはいたが、共通している事は『痛みを撒き散らしながら現れる』『一定期間経つと忽然と姿を消す』の2点。
その伝説は、神が見えなくなってからも各地で語り継がれていたが、あくまでも伝説又は童話などでよくある何故か共通する何かだと思われていた。
その名は、ロイデア。
18世紀の哲学者アイディン・エイドの自著『イデアと神の使者』の中で書かれた『あれらは、崇高なものでは無い。何故なら、あれらには意思や心を感じられないからだ。あれらが、たとえプラトンのいうイデアに近い存在であったとしても、自我が無ければ哲学的な価値は限りなく
「スワンプマン!!」
「蓄電完了した。
契約者。歯を食いしばれよ、後ろの知的生命体を殺したくなければ死ぬ気で打ち返せ」
スワンプマンと呼ばれ名乗る彼に、ソレが放ったのと類似した電気が纏わり付く。
「創生と構築を。
喝采と雷鳴を。
私の識別名はスワンプマン。
さぁ、同胞よ。
単純明快、力比べと行こうか!!
《
小さな雷と共に、陽炎が形を持ち刃となって来訪者へと降り注ぐ。
それに対して、今までこれといった反応を示していなかった来訪者はピクリと反応した。
来訪者は、目も鼻もない顔?のような部分を持ち上げ、影なき青年を見つめる。
そして、彼が放つ刃を打ち消すように黒い電気玉を身体より放つ。
5割が刃との相殺、残りの5割はそのまま逃げていった人の方へと飛んでいく。
影のある青年である、哲哉が残りの5割から、手の届く範囲の電気玉を相殺しているが、それでも1か2割程度の電気玉はその防御網を抜ける。
「避難を!!
特務機関が、こちらに向かっていると連絡がありました!!
皆様、落ち着いて、落ち着いて避難をお願いします!!」
「うわwロイデアとか初めて見たわwもうちょっと、近くによってみてみようぜ」
「それなwAll Tubeに投稿したら、めっちゃ再生回数行くんじゃね?w」
ロイデアから一定数距離が離れ、交番勤務と思われる警察官に誘導されて避難している人々の合間を縫って、スマホを片手にロイデアの方に近寄る若人が2人。
ロイデアなんて、テレビが誇張しているだけでその実態は大したことないと思っている2人は、逆走しその姿をカメラに収めるべくスマホに手をかける。
防御網電気玉が、そんな彼らの頭上を飛んでいる。
建物にぶつかったり、そのまま消散したりしている。
バチッと、嫌な音と焦げた匂いが辺りに立ち込める。
ロイデアは、正式には気の流れの集合体と言われているが、仮初の形を持ちこの物質界に顕現する際それ等は高いエネルギーを保持している。
つまるところ。
ロイデアが顕現している、それも頭上をロイデアの一部である電気玉が通過している時に自然世界に存在しない、人工的なエネルギー活動を引き起こすものなら、行き場のない気の流れが引っ張られるということである。
性別も人種も分からないほどにまっ黒焦げになった遺体が1つ、地面に倒れる。
「う、腕がっ!!!」
「い、いやぁぁぁ」
「落ち着いて!!
大丈夫ですから!!」
スマホを持っていなかった方の男は、片方の腕が赤黒く腫れており、だらんとぶら下がっている。
そんな人が死ぬ所を近距離で見た人達は、パニックに陥り。
その不安は警察官の掛け声も虚しく、人から人へと伝染していく。
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