第4話 飲みに行ける酒姫。地下酒姫を取り巻く酒乱(オタク)共。
「飲みたかったー!飲みたかったー!飲酒っ!!Keep meーー!!」
「うぉぉぉーーー!!」
「ふぅぅぅぅーーー!!」
ステージの上では酒姫と思われる人達が歌って踊っている。その周りには酒姫を応援する人達がペンライトを振って踊っている。自らが踊っているため、全然ステージの酒姫達を見ていないようだ。ステージの上の酒姫達は、大衆酒場で見たような南部美人さんのような華やかさをあまり感じない。
「...先輩、今日はなんすか。また酒姫の所に連れて来られたようですが...。」
「おう!今日は趣向を変えて、地下酒姫のライブを見てストレスを解消しようと思ってな!もうやってられないんだよ!俺のミスじゃねぇのに課長の野郎からダメだし喰らいまくって!!...あぁちきしょうっ!!」
「先輩、ストレスが溜まったからって、酒姫に逃げるのは良くないですよー。話なら僕が聞きますよ...?」
「ありがとう。だけど、ここは地下酒場。いつもとは違って、お話はしないで、酒姫を見て楽しむ所なんだ!」
「うーん、なるほど?違いがいまいち分からないのですが...。」
先輩が連れてきてくれる所は毎回全然違う場所で、毎回そこにいる酒姫が異なるので僕は困惑する。
「そうだな。まずはステージの上にいるのが、"飲みに行ける酒姫"でお馴染みのSAKE48の研修生達だ。そして、そのステージの下でペンライトを降ってる奴らは、酒乱と言ってだな、いわゆる酒姫の追っかけだ。」
「酒乱は人の目も気にせずあんな感じなんですね...。...あまり関わりたく無い感じです。あ、SAKE48っていうと、もしかして品評総選挙に出てる子達ですか?」
「そうだな、だいたいあってるがこの子達はまだまだ研修生だ。通称"米"。今はこの地下ステージで色んな経験を通して嬢造してる最中だな。まだ酒蔵にも所属してない子達もいるからな。」
「まだまだ荒削りな感じがありますもんね。ここから磨きをかけて行くんですね。」
「おぉ、分かってきたじゃないか。だけど、磨きをかけるだけじゃダメなんだ。磨きをかけた後、良い麹を付けて行かないと、良い酒姫にはなれないんだ。」
「...麹?僕と同じ名前ですね?麹を付けるってなんですか?」
「あぁ、麹っていうのは、良いファン達の事だ。前でペンライト振ってるのは、酒姫を消費するだけのただの酒乱。良いファンの麹達は、酒姫を心から応援して、米から酒姫へと導くんだ。」
上戸は酒姫の事を熱く語っている。
こういうストレス解消も良いのかもしれない。もう少し聞いてみるか。
「...あの、南部美人さんとかもこういう所から始まったんですか?」
「いい質問だ!最近の品評総選挙は、蔵グループも出てくるんだ。南部美人さんは蔵グループに所属しているな。蔵グループのメンバーは、所属する酒蔵の中で長い期間ゆっくりとトレーニングを行って歌や踊りに磨きをかけていくんだ。いわゆる吟嬢ってやつだ。」
「...へぇ。確かにここの酒姫達とはちょっと違いますもんね。」
「この酒姫達は、これはこれで良いもんだぞ!こういった嬢造の子達は、敷居が低いから身近に感じられるんだ。」
「...僕は、どちらかと言うと蔵グループが好きかも知れないです。」
「麹っ!お前も少し酒姫の良さが分かってきたか!いいじゃないか!さすが俺の後輩だ!」
先輩は上機嫌になったようだ。先輩に連れてきて貰ってる身だから、せめて楽しくなってもらいたいし、良かった。酒姫は明るく前向きに楽しみたいものだ。
「麹、今日も奢らせてくれ。マスター!今の俺たちの明るい気分にあう混姫お願いします!あと、似姫も1つ!」
「かしこまりました。そうしましたら、こちらをどうぞ。」
先輩はマスターとやり取りをすると、奥から緑色の髪飾りをいっぱい付けて酒姫が出てきた。
整っているのだが、少し濃いめの顔立ちであった。田舎から上京したてといった垢抜けなさがある。
「私、カイピロスカって言います!今日はよろしくお願いまーす!よろしくお願いしまーす!」
カイピロスカは僕の隣に座った。
奥からもう1人やって来た。
淡いピンク色の髪色で可愛らしいフリフリのスカートを履いている。先輩の趣味とはちょっと違うような...。
「よろしくお願いしまーす!アンファジーネーブルといいます。僕はこちらに座りますね。」
可愛らしさとは裏腹に声が少し低い、というか酒姫なのか?女性らしさがあまり無いように見えてきた。
「この子は似姫と言って、...いわゆる男の娘なんだ。俺はこの後会社帰って徹夜だから、酒姫と喋るのは控えようと思ってな。」
「はぁ、酒場ではそういう楽しみ方もあるのですね...。」
「引くな引くな!アルコールが無い酒姫を頼んでいる人に軽蔑の眼差しを向けるのは良くないぞ!酒場を楽しむ事こそが酒姫の本質!男の娘だろうと楽しめればそれは良い飲み会だ!」
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