第3話 都会の屋上は麦姫の庭。夏はやっぱりキンキンに冷えたクーデレ!
「おいおい...。最初の1トークだけ喋ってオカワリは別の姫を呼ぶのか、麦党は居ないのか、まったく...。」
露出度高めな金髪のクールな女性がまた違う席へ呼ばれて移動している。
夏だけオープンする都会のオアシス。麦姫の庭だ。今日も上戸先輩に連れられてやってきた。
「どうだ、下戸田!今度は麦姫だぞ!この前は初酒場デビューどうだった?あのあと、南部ちゃんとしんみり話してたみたいだったけど、酒姫との会話は気に入ったか?」
「...いや、慣れないです。南部さんは話しやすいから話し込んじゃいましたけど、次の日の二日酔い酷かったんですよ...。」
僕は頭を抑えるジェスチャーを交えながら先輩に訴える。
「まぁ、慣れだな!最近の若者は酒姫離れしてると聞くが、俺は酒姫が大好きだ!後輩が出来たらいっぱい後輩を連れて行ってやりたいと思ってたんだ!是非とも酒姫の魅力に気づいて欲しい!」
「...まぁ、楽しくない訳じゃないですけど、どうも酒姫と話しして、舞い上がっちゃう自分が好きじゃないんですよね...。酒姫に泣きつく人や怒る人もいるじゃないですか、酒姫を前にするとどうもその人の本性が出てるようで、見ているといたたまれないんですよね...。」
「そうか、そういう考えもあるよな...。そういう風に自分をさらけ出すことでコミュニケーションを取る時代もあったんだ、昔はな。今は自分のタイミングで酒姫と話したらいいし、無理に進めたりはしないさ。」
少し上戸は悲しそうにする。昔の時代が楽しかったのだろう。
「...はい。まぁ、少しは楽しかったんでまた来ましたが、ここにはどんな酒姫がいるんですか?」
お酒好きな先輩に合わせて、話の膨らみそうな話題を振ってみる。
「よくぞ聞いてくれた!ここはな、麦姫の庭と言って、酒姫のライバルとされてる麦姫達が集う場所なんだ!」
「...あの、忙しそうにしている金髪の人達が麦姫ですか?露出度高い...。」
「そうそう!最初の1トークがとっても楽しい!ここに来たらみんな最初は麦姫とのトークを楽しむんだ!」
「へぇ、最初のトークだけですか?楽しいならずっと話してればいいじゃないですか?この前、先輩はずっと泡盛ちゃんと話してたじゃないですか?」
「そうだな。そこが難しいところで奥が深いんだよ。最初は楽しいんだけど、2トーク目や3トーク目になると別な酒姫を指名したくなるんだよな。」
「なんででしょうね、刺激が強いんでしょうか…?」
「とりあえず試しだ!呼んでみよう!すいませーーん!ここの席に麦姫さん2人お願いしまーす!」
そう言うと、すぐに2人の麦姫がやって来た。
近くで見ると、身長が意外と大きい。この人達も露出度が高いので、少し緊張する。
「どうも、麦姫です。よろしくお願いします。」
麦姫達2人は簡単な挨拶をして、僕と先輩の隣の席に座った。
「凄い早くていいね!さすが麦姫の庭!」
先輩が嬉しそうに喋りだす。
「最近は暑いから、こういうところで麦姫ちゃん達と涼みに来るのが幸せなんだよねー。」
グイグイと先輩1人の麦姫と話をしていく。
「こ、こんな露出度高いと緊張して何を話したらいいか...。」
僕は緊張でドギマギしてしまう。何の話をしていいやら...。
「どうしたの?なんか話して下さい?」
何か話を振ってくるのではなく、こっちに話題を振らせる冷たい態度をしてくる。
マジですか...。麦姫、ちょっと苦手かも...。
「なんも話題ないんですか?黙ってるなら私も黙りますけど?」
相変わらず冷たい...。冷たい態度は嫌いでもないけれど、この空気がとても息苦しい...。
分かったぞ。多分これが原因だ。麦姫さんは辛口で責めてくるから、苦手な人が多いんだ...。
「...本当にずっと黙ってるの?あんた何しに来てるの?馬鹿なの?」
麦姫がこの場に居られるだけで、最初の1口目の高揚感が消えて、苦味しか無くなる...。
その後、僕はずっと麦姫に罵られ続けた。
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