エピローグ
それからの俺の生活は一変してしまった。
と言っても、画廊商はたたんでいない。
相変わらず豪商、豪農、そして貴族から小金を騙し取る生活が続いており、師匠に関する情報を集める生活が続いていた。
ただし聖女様の命令によって騙す相手は悪党という制限をつけられてしまったわけだが……。
そして何よりも、あの腹黒聖女様はなぜか自ら詐欺に関わり始めた。
時には変装して、悪党貴族から金を奪い取ったり、時には聖女の力で奴隷商を懲らしめたりと色々と面倒事に首を突っ込んでいた。
聖女様は楽しそうに笑みをうかべた。
「だって、その方が面白いじゃないですか?」
「この腹黒聖女……」
「何かおっしゃりましたか……ブールさん?」
「なんでもない。てか、あの堅物猫族は大丈夫なのかよ」
「ふふ、ご安心ください。ここでブールさんとお会いすることはすでに置き手紙で残しておきましたので……そろそろでしょうかね」
そう言って、嫌な笑みを浮かべて聖女様は唇に人差し指を当てた。
この女……明らかに楽しんでいやがる。
そんなに籠の鳥として生活することが嫌なものなのかよ。
教会で大人しくしていれば、平和に穏やかに暮らせるはずだ。
それこそただメシ生活だろうに。
そんな最高な環境にいても面倒ごとに首を突っ込むのが好きだなんて、聖女様も変わった性格なことだ。
などと考えていると、バタンと強く店の扉が開かれる音がした。
そしてすぐにバタバタと嫌な足音が聞こえてきた。
っち、あの猫さんはもう来たのかよ。
銀色の長い髪が舞って、息を切らした女が現れた。
「ドーレ様っ!」
「ふふ、見つかってしまいましたね」
聖女様は俺に向かってウインクをした。
その姿を見て、猫族の女——ルナードはキッと俺を睨んだ。
「この胡散臭い画廊商!またドーレ様をたぶらかしましたねっ!今日という今日は許しませんっ!」
「おいおい、聖騎士様は善良な民を無実の罪で裁くつもりか?それも野蛮な暴力で解決するのか?」
「……っく、小賢しいっ!もういいですっ!帰りますよ、ドーレ様!」
ルナードはプイッと俺から顔を逸らして、聖女様を睨んだ。
聖女様は渋々と言って表情で「分かりました」と言って、ローブを羽織った。
そして、聖女様は一瞬だけ俺の元へと駆け寄った。
耳元で呟くように、甘い吐息がかかった。
「明日も私腹を肥やした教会内の浄化のためによろしくお願いしますね。私だけの詐欺師さん?」
そしてすぐに聖女様は背を向けて、ルナード元に行ってしまった。
……勘弁してくれ。
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