外輪船

「お姉さん、ありがとう。お兄さんも」

「いえいえ。ほら、ちゃんと挨拶しないと後悔するよ」

「あ、ああ……。えっと……。こちらこそ、ありがとう。握手と写真、いいかな?」

「ん」


 二人と握手して、三人で写真。これでいい、かな? 他の人ともやりたいけど、後でみんなで集合して撮ることを約束して後回しにしてもらった。お船、見てみたいから。


『おっきい船にわくわくのリタちゃん』

『こういうところは年相応だよな』

『年相応……?』

『外見年齢相応だよな!』

『それはもう色々と違うのではw』


 船員さんに案内されて、三階へ。ただ船員さんが言うには、基本的にはどの階もレストランみたいになってるみたい。三階は軽食を提供していて、一階と二階はちゃんとした料理なんだとか。

 軽食はともかく、一階と二階は予約が必要らしいけど。残念。

 とりあえず、せっかくなので何か食べようかな。

 三階は、すごく落ち着いた雰囲気の部屋。カウンターがあって、そこで料理を出してくれるみたい。何があるのかな。

 ハンバーガーとポテト、ソフトクリーム、ドリンク、だって。


「ん……。ハンバーガー、食べたい」

「かしこまりました」


 ハンバーガーを作ってもらった。真美が作ってくれたことがあるけど、これも美味しそう。パンにレタスとハンバーグ、それにチーズを挟んでる。サイズは小さめ、かな?

 でも食べてみると、すごく美味しかった。柔らかいけど濃厚な味。量は少ないけど、軽食ならこんなものかな?


「もぐもぐ……。景色を眺めながら食べられるのは、すごくいいと思う」

「そうでしょう。この船の自慢ですから」

「ん」


『雄大な琵琶湖を眺めながらの食事、いいですな』

『この船乗ってみたいけど高そうだよなあ』

『後で調べる!』


 ハンバーガー美味しいから、オススメだよ。

 次は、二階と、ついでに一階。どっちも三階と違って、なんだか豪華な部屋だった。柔らかいカーペットが敷かれていて、テーブルと椅子がたくさん並んでる。予約があればここでご飯を食べられるみたい。


「少々お待ちください」


 船員さんがそう言って、離れていってしまった。どうしよう。


「んー……。待ってた方がいいのかな?」


『待っておいてほしいって言ってたぐらいだし』

『外ぐらいならいいんじゃない?』


「そうだね」


 船室の外に出てみる。おー……。なんだか、湖面がすごく近い。触れられそう。すごい。


「いいお船だね。水に触れそう」


『いやリタちゃん、湖面に立ってた人が何を言ってんの……?』

『あなた触り放題だったでしょ!』


「それはそれ、これはこれ、だよ」


 お船から触れそうなのがいいと思う。

 しばらくそこで景色を眺めていたら、船員さんが戻ってきた。手には、お皿とスプーン。


「こちら、本日だけの特別メニューです。どうぞ」


 そう言って渡してくれたのは、カレーライスだった。


「カレー……!」


『カレー……だと!?』

『この船員さん分かってる!』

『有能!』


 まさかカレーをもらえるなんて思わなかった。食べたい。

 受け取って、中を見てみる。普段は作ってないみたいだけど、急いで作ってくれたらしい。シンプルなビーフカレーだ。でも美味しそう。

 とりあえず一口。んー……。ちょっと辛めだけど、カレーだ。美味しい。

 景色を眺めながら食べるカレーもなかなか美味しいと思う。


「どうですか、この船は」

「ん。とてもいい船」

「そうでしょうそうでしょう」

「カレー美味しい」

「ははは」


『船が褒められてるのかカレーが褒められてるのかこれわかんねえなw』

『まあリタちゃんが嬉しそうならよし、ということで』


 いい景色と美味しいごはん。とてもいいお船だと思う。

 そうして一時間ほど船に揺られて、お船は陸地に戻った。みんなで写真の約束があるから、私も一緒に下りる。


「あ! 出てきた!」

「本当にリタちゃんがいる!」


 なんだかたくさんの人がいるね。私を見てるのは、いつものこと、かな?

 それよりも写真だ。お船を下りて、お船を背にして、みんなで並んで写真を撮る。お船の会社の人が撮ってくれて、あとでみんなにデータを送るとのことだった。


「ありがとうございました、良い思い出になりました」

「リタちゃんもこの後は観光かな? 気をつけてな」

「またねー!」


 みんなが手を振ってそう言ってくれる。とてもいい人たち、だね。


「ん……。楽しかった。またね」


 私も手を振って、その場を後にした。

 それじゃあ、次だ。ご飯は少なめだったから、そろそろお昼ご飯を食べたい。何か美味しいものはあるかな?

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