琵琶湖
お昼までのんびりと読書をしてから転移した。スマホで地図を調べて、琵琶湖のだいたい上ぐらい。広い湖らしいし、とりあえず適当な場所に。
転移した先は、琵琶湖よりも少し高い場所。眼下に湖が広がってる。思っていたよりもすごく広く感じるね。いくつか船も浮かんでるみたい。
『おー。ついに琵琶湖か』
『琵琶湖ニキは現地に行ってるのかな?』
『行ってても会えるかは微妙だからなあw』
とりあえずゆっくり下りてみよう。お船もあるのは、釣りとかしてるのかな?
「何が釣れるの?」
『結構いろいろ釣れたはず』
『釣り人にとってもいいスポットだから』
『一度は琵琶湖に釣り行ってみたい』
大きい湖だし、いろんなお魚が釣れるのかな。
ゆっくりと下りて、湖面に着地。本当に、とても広い。
『まって?』
『なんかさらっと湖の上に着地してるんですが』
『なあんで水の上に立ってるんですかねえ?』
「水の上に立つ魔法がある。使い道が限られてるし制御が難しいから、あまり使わないだけ」
わざわざ水の上に立つぐらいならお船に乗った方が楽だし、そっちの方が楽しい。この魔法、空を飛ぶ魔法と同じぐらい制御が面倒だから。
とりあえず、美味しいもの食べたいな。どこに行こうかな?
そう思って周囲を見回していたら、大きいお船が視界に入った。白い船で、三階建てぐらいになってるお船。お船の後ろにぐるぐる回る部品がついていて、それが推進力になってるみたい。おもしろい。
『結構おっきい船』
『外輪船ってやつかな。水車型の装置を推進器にしてる船』
『遊覧船かな?』
ちょっと興味があるからもうちょっと近くに行ってみよう。空を少し飛んで、近づいてみる。
おー……。ぐるぐる水車みたいなのが回ってる。ああいう船もあるんだね。
後ろの方から近づいて見学していたら、かすかに声が聞こえてきた。
「あれ? これもしかしてこの船じゃ……?」
「それリタちゃんの配信? ということは……」
「あああああ! いたあああ!」
急にそんな大声。船の一番上から私を指さしていた。せっかくだし、声をかけてみよう。
屋上部分って言えばいいのかな? たくさん椅子が並んでいて、ここで琵琶湖をのんびり眺めることができるようになってるみたい。気持ちよさそうな場所だ。
私を見つけたのは、二十代ぐらいの若い男女。男の人がスマホを持っていて、女の人は口をぱくぱくしながら私を見つめてる。
そんな二人の反応から他の人も気付いたみたいで、たくさんの視線が私に向かっていた。
「こんにちは」
最初の二人に声をかけてみる。すると慌てたように挨拶をしてくれた。
「こここここここ」
「落ち着きなさい!」
「いたい!」
挨拶……かな?
『鶏さんかな?』
『慌てすぎだろこいつwww』
『いやでも配信見てていきなり声をかけられたら俺も同じことしそう』
『それは確かに』
そんなに慌てることなのかな? それはよく分からない。
「お船の人?」
「じょじょじょじょじょ」
「乗客です。このバカは落ち着くまで無視してください」
「ん」
『ひどいwww』
『しかし妥当な判断であるw』
『変な鳴き声しか出してないからなw』
鳴き声はひどいと思う。
「りりりりりり」
いや鳴き声だね。そう思っておこう。
「今回は滋賀なんですね。もしかして、例の琵琶湖の人がついに当てたんですか?」
「ん」
『琵琶湖ニキが一般人にまで認知されてるw』
『やったな琵琶湖ニキ有名人だぞ!』
『心の底から嬉しくない』
『でしょうねw』
ずっと琵琶湖琵琶湖言ってたからね。配信を見てる人なら知っていてもおかしくない。
それよりも。このお船、見学できたりしないかな? ちょっと見てみたい。
「お船、見れる?」
「あー……。ただの乗客なんで、ちょっと聞いてきます……!」
そう言うと、女の人は走っていってしまった。ゆっくりでいいんだけどね。
そうして、集まってくるのは他の人。みんなが挨拶してくれるから私も返す。握手? いいよ。
『あああああうらやましいいいいい!』
『俺もリタちゃんと握手したい!』
『きっとちっちゃいお手々で柔らかいんだろうなあ』
『お前らマジでキモいから自重しろ』
握手の何がいいのか、私は分からないんだけどね。
そうしている間に、さっきの女の人が戻ってきた。連れてきてたのは、船員さんかな? 他の人とは雰囲気が違う服だから。
「これは……! まさか本当にリタちゃんがいるなんて……!」
「ん……。見学したい。だめ?」
「大丈夫です!」
というわけで、見学することになった。案内は船員さんがしてくれるみたい。さっきの二人とはここでお別れ、だね。同じ船だから後で会うかもだけど。
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