開幕安価!


 精霊の森でリフレッシュして、翌日。早速配信を開始した。


「安価する」


『リタちゃんおはよおおおおおお!?』

『挨拶してあんかあああああ!』

『お前ら落ち着けw』


 今日は美味しいものが食べたい気分。お肉でもお魚でもお野菜でもいいけど、とりあえず美味しいものが食べたい。


「エルフの里のご飯は正直ただの素材だった」


『それなw』

『野性味あふれるご飯でしたね……』

『ちょっと、こう、エルフの里の憧れが消えた数日でしたね……』

『いろんな意味でな!』


 もうちょっと努力してほしいと思う。もう行かないからどうでもいいけど。

 ともかく。


「ちゃんとした美味しい料理が食べたい。ついでに日本も見てみたい。だから安価する」


『おk』

『条件はいつも通り?』


「ん……。日本のみ。いつも通り手を叩いてから十番目のコメント」


『あいあい』

『次こそは琵琶湖やるぞおらあああ!』

『琵琶湖ニキはそろそろ諦めて?』


 ゆっくりと手を上げる。するとすぐにコメントが減り始めた。三十秒ほどじっくりと待ってから、そうして手を叩いた。ぱん。


『富士山』『鳥取』『いももち!』『もんじゃ焼き美味しいから!』『イギリスとか』『当たったら行ってくれるかも……フランス!』『回転焼き!』『動物園』『牛ヶ首島!』


『びわこおおおおお!』


『もう一回大阪に!』『長崎カステラおすすめ!』『サトウキビかじろうよ』『秋葉原』


『そろそろかな?』

『おう誰だよ回転焼き言ったの、今川焼きだろうが』

『は? 大判焼きだが?』

『こんなところで戦争するなw』

『やったああああああ!』

『ていうか、おいマジか』

『やりやがった! マジかよあの野郎! 本当にやりやがった!』


 んー……。びわこ……。琵琶湖、だね。いつもの人かな? あの一瞬で数百以上のコメントが流れるから、確率としてはかなり低いのに……。すごいね。


「琵琶湖だね」


『どうしよう嬉しすぎて吐きそう吐いた』

『落ち着けwww』

『まさか本当に当てちまうとはなクソが』

『おら責任とって琵琶湖周辺の観光スポット出せおら!』

『お前ら当たり強すぎだろw』


 ケンカはよくないよ。ともかく、琵琶湖だね。日本で一番大きい湖だっていうのは聞いてるけど、何があるのかな。


「とりあえずお昼前に転移してみる。まずはどんな湖か見てみたいから」


『めちゃくちゃおっきい湖だよ!』

『美味しいものもある。赤こんにゃくとか』

『赤い……こんにゃく……?』


 楽しみ、だね。とりあえずは朝ご飯。


「んー……。お菓子も残り少なくなってる……。投げ菓子、お願いします」


『投げ菓子もあるのか!』

『おらわくわくしてきたぞ!』

『買っておけばよかったあああ!』


 絶対に選ばれるわけでもないから、そんなに気にしなくていいと思う。

 みんなが魔法陣を広げてお菓子を置いてくれる、それぐらいの時間を少し待ってから、魔法を使う。するとすぐに目の前にたくさんのお菓子が送られてきた。袋に入ったお菓子とか、小さいお菓子とかいっぱいだ。


『なあふと思ったんだけど。まさかこれ朝ご飯?』

『いやいやまさかそんな』


「そうだけど」


『ちょwww』

『お菓子を朝ご飯にするんじゃありません!』


 美味しいからいいと思う。

 どれにしようかな……。とりあえずこの、小さいチョコから。手のひらサイズのチョコレートだね。口に入れると、いつもの味だ。美味しい。


『昔は駄菓子屋で十円で買えたチョコ』

『いつの話なんだよw』

『昔は五円チョコとかいろいろあったからなあ』


 今は種類が少なくなったのかな。それとも高くなった?

 次は……。あ、おはぎがある。おはぎ好き。三個パックに入ってるやつだ。フタを開けて、素手だとあんこが手についちゃうから、お箸で。

 おー……。中のおもちみたいなのもすごく柔らかい。控えめな甘さでとても食べやすい。美味しい。


『やった、うちのおはぎだ!』

『羨ましい』

『リタちゃんめちゃくちゃ美味しそうに食べてる。どこの店?』

『自家製を慌ててパックにつめました』

『まさかの自家製w』


 お店で作ったものじゃないってことだね。それなのにこんなに美味しい。すごいと思う。また送ってほしい。

 残りはアイテムボックスに入れて、少し休憩してから出発しようかな。琵琶湖。滋賀県。楽しみだね。

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