つかれたのでおひるね
森の外でランと合流。ランはご飯を食べていた。どこで捕まえたのか、なんだか牛みたいな動物を押さえつけてがつがつ食べてる。もちろん生だ。
「ご飯食べてる」
『こうして見るとまだまだ野生なんだなって』
『エサも渡されずに待たされてるからなこの子』
『そう思うとちょっとかわいそう』
いつ帰ってくるか分からない状態で待たされてしまったのは、確かにちょっとかわいそうだと思う。なでなでしてあげよう。なでなで……。
『リタちゃん、めっちゃ怯えられてるがw』
『ねぎらってるのか脅してるのかどっちだw』
ねぎらってるつもりなんだけどね……。
「そういえば、みんな静かだったね」
『貴重な姉妹の語り合いを邪魔するのは悪いかなって』
『たまにコメントはあったっぽいけど、そっちには流れてなかったのかな』
『もしかして精霊様が気を利かせた?』
それは、どうなんだろう。元は精霊様の魔法だからあるかもしれない。
「アリシアさん。この後はどうするの?」
「旅を続ける。ここには最低でも百年は帰らない。リタは?」
「んー……。一度森に帰る」
私の目的は達成しちゃったから。でも、師匠が訪れた街とかには行ってみたい気持ちもある。どうしようかな。
でも今は、日本のご飯が食べたい気分。またどこかに行こうかな?
「そっか。じゃあ、しばらくは会う機会はないかな……」
「んー……。何かあったらギルド経由で連絡してくれたら、行く」
「わかった」
これでアリシアさんともお別れ。アリシアさんが言うように、多分しばらく会う機会はないと思う。なんだかちょっとだけ、寂しい気持ち。
アリシアさんと会えたのは本当に偶然だったけど、アリシアさんのおかげでこうしてエルフの里の場所もすぐに分かった。私一人だと、まだ探していたかもしれないから。
「アリシアさん。ありがとう」
「うん? いえいえ。まだ一緒に冒険しよう」
「ん」
ご飯を食べ終えたランの背中にさっと乗るアリシアさん。そうして手を振って、ランは走り去ってしまった。
残されたのは、私一人。私、一人。
『リタちゃんなんだか寂しそう?』
『予想通りとはいえ、実の両親はやっぱりクソだったもんな』
『元気出して、おれらもついてるぞ!』
そんなコメントが、なんだかちょっと嬉しい。
よし……。帰ろう。精霊の森へ。
精霊の森に転移して、世界樹の側に向かう。すると精霊様がすでに待っていた。手招きしてる。
「おいで、リタ」
「ん?」
よく分からないけど、精霊様の側へ。すると精霊様は自分の膝に私を座らせて頭を撫でてきた。気持ちいい。
「精霊様。どうしたの?」
「いえ。こうしたくなっただけです」
「ふうん……?」
よく分からないけど、気持ちいいからいいや。
のんびりと過ごす。たまにはこういうのもいいと思う。
『ゆったりまったりな時間やな』
『晩飯の準備しないとなあ』
そうだね。私も晩ご飯を考えないと。真美のお家に行こうかなとちょっと思っていたけど、今日は精霊様と食べたい。なんだかそんな気分になった。
「リタ」
「ん?」
「大丈夫でしたか?」
「んー……。平気」
多分、両親のことについて言ってるんだと思うけど……。今のところは特に何も思ってない。ああいう人たちだろうとは思っていたから。
「それに、精霊様はシルフ様から聞いて知ってたよね?」
「…………。そう、ですね」
やっぱり。精霊様は、ちょっとずるい。いろいろ知ってるはずなのに、教えてくれないことが多すぎる。理由はよく分からないけど……。別に、いいかな。困るほどじゃないし。
「リタ。旅は終わりですか?」
「旅、というほどじゃないよ」
「いいえ、旅ですよ。見聞を広める、という意味では」
「ふうん……」
終わり……にはしないかな。私が思っていたよりも、この世界は広くて楽しい。だからもうちょっと、いろいろ見て回ろうと思う。
そう言うと、精霊様は嬉しそうに微笑んでくれた。
「ええ、ええ。いろんな場所を見てください。この世界も地球に負けず劣らずいい世界ですから」
「ん」
『それはそう』
『日本は科学が発展しすぎてるからなあ』
『魔法とか本当に楽しそうだし』
すごく楽しい。たくさん研究もしたいから。でも。
「ご飯は間違いなく日本の方が美味しい」
「それには全力で同意します」
『おいwww』
『そこはもうちょっと悩んでw』
日本のご飯が美味しいのは事実だから仕方ないよ。
「精霊様」
「はい?」
「もっと撫でて」
「ふふ……。ええ、いいですよ」
精霊様がゆっくりと頭を撫でてくれる。それがとっても、心地いい。
『今日は甘えんぼモードやな』
『ここまで素直に甘えてるのはかなり貴重では?』
『それだけストレスあったってことだろうなあ』
「やはりエルフは滅ぼすべきでは……?」
『おい精霊様w』
『気持ちは分かるけどw』
私としてはどうでもいい。もう、私には関係のない場所だから。アルティだけちょっとかわいそうかもしれないけど……。あの子は、次の王様だから。
「きっと、アルティががんばってくれる」
私があくびをしながらそう言うと、精霊様はなんだか優しく微笑んで頷いていた。
「ほら、リタ。疲れたでしょう? 晩ご飯の時間に起こしてあげますから、お昼寝しましょう」
「んー……」
そう、だね。ちょっとつかれた。ちょっと、寝よう。
『おやすみー』
『ゆっくり寝るんだよー』
「んー……。おやすみ……」
精霊様の温もりを感じながら、私は眠りに落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます