西の河原公園

 真美と一緒に最後に温泉にちゃぷんと浸かって、温泉から出る。浴衣に着替えて、温泉巡りは終了。なかなか楽しかった。それに気持ち良かった。

 とりあえず。


「売店はないんだよね?」

「タオルとかなら売ってるけれど、飲み物はないわね」

「ん」


 アイテムボックスからフルーツ牛乳を取り出す。魔法でしっかりと冷やしてから、ぐいっと飲む。うん、やっぱりフルーツ牛乳は美味しい。火照った体に気持ちいい。


「冷たそうだね」

「真美も飲む?」

「いいの?」

「ん」


 真美と、あとついでに高崎さんも。テレビの人たちは、さすがに配るとなくなっちゃうから渡せない。私のお気に入りだから、なくなったら困る。


「ふう……。やっぱりお風呂上がりは牛乳だね」

「そうね。ビールもいいのだけど」


 それはよく分からないし、あまり興味もない。

 温泉、とても堪能したし、一先ずは宿に帰ろう。


「あ、リタちゃん、せっかくだからこのあたりも散策しない?」

「ん……。わかった」


 こっちに来る時はまっすぐに来たけど、途中の景色もなかなかだった。散策もいいかも。宿に戻ったら、晩ご飯までのんびりするだろうし。

 みんなでのんびり来た道を戻る。この場所は、西の河原公園っていう場所らしい。近くを流れる川からは湯気が立っていて、触れてみると結構温かい不思議な川だ。

 たくさん温泉が出ていて、川も温泉が流れてるんだって。すごい。

 周りは木々がいっぱい。森の中の道っていう感じで、とても好き。私のお家の周りも整備したらこんな感じになるのかな。さすがにやらないけど。


「リタちゃん、機嫌良さそうだね」

「ん?」

「ちょっと足取り軽いかなって」

「そう?」


『そうなん?』

『言われてみると、そう、かも……? ごめんわからん』

『わからんのかいw』

『やっぱりエルフだから森の中の方が気分がいいとか?』


 あまり関係ないと思う。

 少し歩くと、小さい滝がある。滝、と言うほど大それたものじゃないけど、温泉の滝になっていてちょっとおもしろい。なんだかすごい像もある。かっこいい。


「いろんな場所に足湯があるのがすごいよね」

「ん。入る?」

「今はいいかな……。もう堪能したし」

「ん」


 また後でこの足湯にも入りたいね。

 綺麗に石畳で整備されていて、とても歩きやすい道だ。それでいて森林もいっぱいで、とてもいい景色。草津温泉で一番好きな場所かもしれない。日本の中でもすごく好き。


『たまにある東屋もいい雰囲気を出してるな』

『道の横を流れる川が温泉ってのが草津温泉らしい』

『いいなあ、ここをのんびり歩くだけでも楽しそう』


 とても気持ちいいよ。おすすめ。

 ところで。


「ひがしやってなに?」

「あずまや、だよ。休憩できる簡素な建物、みたいなところ。あそことか」

「へえ……。真美は物知り」

「えっへん」


『どや顔真美ちゃん』

『かわええw』

『案内役の高崎さん仕事して?』


「出る幕がないもの……」


『草』

『どんまいwww』

『草を生やすなw』


 えっと……。もうちょっと聞いた方がいいのかな……?

 その後もゆっくり歩き続ける。真美がスマホで写真を見せてくれたけど、ここも冬に来ると雪が積もって、雪景色が見られるんだって。


「写真、綺麗。冬も来たい」

「そうだね。冬も来る? 私で良ければ一緒に行くよ」

「ん。行く」

「楽しみにしてるね」


 冬の温泉、気持ちよさそう。私もとても楽しみだ。


『それももちろん配信してくれるのですよね?』

『期待するから! 期待してるから!』

『いや待て。その頃にはお師匠が見つかってるはずでは……!』

『つまり、次はあのバカも連れての旅行やな!』


 そっか。冬には多分、師匠が見つかってる。カリちゃんの予想が間違いなければ、一緒に来れるはず。一緒に温泉、行きたいね。


「じゃあ家族みんなで、とかどう?」

「ん。楽しそう」

「でもお母さんのお仕事とかも考えないといけないから……。早めに予定を決めようね」

「ん」


 みんなで旅行、楽しみだね。


『ところで例のごとく高崎さんが消えておられますが』

『もうなんか影が薄くないかあの人』

『邪魔しないようにしてくれてんだろ』


 高崎さんは、ちょっと後ろを歩いてる。何かテレビの人に指示を出してるみたい。どうしたんだろう。


「どうしたの?」

「ああ、気にしないで。観光とか見て回ってる名所とか、テロップで出そうって話をしてるだけだから」

「んー……。ごめん」

「いえいえ」


『温泉観光の話なのに観光地の話が確かに少ないからなw』

『テレビの人は編集がんばれ、超がんばれ』


 うん。ちょっとだけ、ごめんなさい。

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