とっても広い露天風呂

 今度こそ、温泉に……。


「へえ、串に刺さってるおかきなんてあるんだ……」

「食べたい」

「食べよっか」


『温泉は……?』

『食べ歩きばっかするから高崎さんが達観した顔になってるぞ!』

『旅は予定外がつきものだからね、仕方ないね』

『なんか違う気がするw』


 真美が見つけたお店は、お煎餅のお店みたい。たくさん種類があって、真美の言うお菓子は目立つように並んでいた。

 串に刺さったお煎餅。いや、おかきって言うのかな? 茶色っぽくて、きっと濃いめの醤油味だと思う。

 でも串に刺さってるって不思議だね。おかきって固いのに。

 早速食べよう。とりあえずみんなで一本ずつ注文して、食べてみる。ぱくりと。


「わ……。やわらかい。おかきなのに。すごい」


『ぬれおかきってやつか』

『おかきの味なのにすごく柔らかい食感で不思議だよね』

『濡れ煎餅もオススメ』


 濡れ煎餅。このおかきみたいに柔らかいのかな。

 探してみると、その濡れ煎餅も見つけることができた。それも買って食べてみる。

 んー……。これも不思議な食感。とても柔らかいお煎餅で、濃いめの醤油味。これも美味しい。

 これもお土産でたくさん買っておいた。精霊様と一緒に食べよう。

 最後に串ぬれおかきを三本ほど買って、店を出る。食べながら歩くのにちょうどいいから。


「もぐもぐ」

「なんだかすごく贅沢してるみたい……」

「でもこの食べ歩きがいいのよね。他にも焼き……」

「ん?」

「いえ。なんでもないわ」


『絶対食べ物言おうとしただろw』

『これ以上遅くなるのは避けたかったのかな?』

『もっと食べ歩きしてもいいんだよ?』


 美味しいものならたくさん食べたい。でもそろそろ温泉にも入りたい。どんな温泉なのか楽しみだ。

 その後は特に寄り道はせずに、温泉に向かった。




 最後に案内された温泉は、今までの二つの温泉とは大きく異なっていた。


「露天風呂しかないの?」

「ええ、そうよ」


 屋内の温泉がないみたい。その代わりに、とても、とっても広い露天風呂があるらしい。すごく広くて、開放感も相応なのだとか。

 とても気になる。早く入りたい。

 受付を済ませて、早速温泉へ。更衣室を出ると、思ったよりもずっと広かった。


「おー……!」


『広さに感動してる、らしい』

『くそ、ちらっとでいいから見せてくれ!』

『なんでフェニちゃんとワイバーンの怪獣大決戦を見ないといけないんだ!』

『これはこれでおもしろいけど!』


 フェニちゃん、なにやってるの? お腹減ったのかな。

 この温泉は本当にとても広い。他の温泉の大浴場とかよりもずっと広い。景色もすごくいい。他の露天風呂より開放感がある。とってもすごい。


「真美。真美。すごい。すごい」

「う、うん。すごいね」


『リタちゃんが興奮してるのは分かる』

『真美ちゃん、ちょっとリタちゃんの様子を教えてほしくてですね……』


「えっと……。顔がちょっと赤くなってる。なんて言えばいいのかな。うきうきしてる?」


『なにそれ見たいんですが!』

『なんで説明したんだよむちゃくちゃ見たいじゃん!』


「理不尽すぎない?」


 まだ時間も早いからか、人も少ない。独り占め、というほどではないけど、でも人の目はあまり気にならない。とりあえず入ってみる。うん……。いい感じ。


「これは……とてもいいもの……」

「リタちゃんが浮いてる……」


『何やってんのリタちゃんw』

『楽しそうだなあw』


 仰向けでぷかぷか。広々としてるから、誰にも迷惑がかからない。人が多いとできないだろうから、なんだかすごく贅沢をしてる気分だね。


「ぷかぷか……」

「リタちゃん、寝ちゃだめだよ」

「んー……」


『すごくリラックスしてる、らしい……』

『いつも以上に声に力がないw』

『今はどういう状況なんだろう』


「ん……。真美が引っ張ってる……」


『ええ……』

『どういうことだってばよ』


 真美に引っ張られて、温泉の真ん中に向かってる。そっちに座れる場所があるみたい。そこが目的地かな?


「はい、到着。リタちゃん、ここも気持ちいいよ」

「ん」


 真美と一緒に、お風呂の真ん中にある台に座る。木製の台で、ここに座って休憩できるみたい。今は誰もいないから、ごろんと寝転がってみよう。ごろーんと。


「おー……。これもとてもいい」

「あ、それいいね。私も。ごろーん」


 二人でごろごろ。下が温泉だからか、ほどよく熱されていてとてもいい気持ち。ここで寝たら気持ちよさそうだけど……。真美だとさすがに風邪をひいちゃうかも。


「はふぅ」

「いい気持ちー……」


『いいなあ見たいなあテレビさんはちゃんと仕事してるのかなあ』

『ところで高崎さんは?』


「仲良くしてる二人を邪魔するのは悪いでしょ」


『分かってるじゃねーかw』


 高崎さんは……一応、近くにいる。苦笑いしながら温泉に入ってる。

 んー……。もうそろそろ、出ようかな?

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