二つ目の温泉とごろにゃーん


 次に案内されたのは、湯畑の南側にある温泉。なんだかちょっと大きい建物だ。ここは二種類の温泉が楽しめるらしい。あとは、二階の休憩室からの景色がとてもいいんだって。湯畑を一望できるのだとか。


「二階からの景色は是非とも見てほしいのだけど……」

「空を飛んだ方がよく見える」

「それができるのはリタちゃんだけだからね?」


 それは、確かにそうだ。今回はテレビもあるから、一度は二階を見てみるべきかな? あまり意識するつもりはないから、気が向けばでいいかな。

 とりあえずみんなで建物の中に入った。


「わあ」


 なんだかすごく広々とした建物だ。カウンターの前が広々してる。二階への階段も近くにあるけど、それより気になるのは二階の真ん中、かな? 空洞になっていて、二階を少し見ることができる。なんだっけ、吹き抜けっていうんだっけ? 初めて見た。


「直接移動できるのは便利」

「いやリタちゃん、普通の人は階段を使うから」

「そうだった」


『確かにリタちゃんみたいに空を飛べるならとても便利だよね、吹き抜け』

『吹き抜けは空を飛べる人のためのものだった……?』

『つまり、日本人も昔は魔法使いがたくさん!?』

『そんな日本嫌だよw』


 魔法、楽しいのに。

 受付を済ませて、まずは温泉。ここは前のお風呂と違ってシンプルらしい。源泉が違う温泉が二つ並んでる、とのこと。

 源泉が違うと何か変わるのかな。よく分からない。

 脱衣所で浴衣を脱いで、温泉へ。えっと……。


「湯畑源泉と万代源泉」

「そう書いてるね」

「何が違うの?」

「入ってみれば分かるんじゃないかしら」


 それもそうだね。

 とりあえず、ちゃぽんと入ってみる。んー……。温泉、気持ちいい……。


「はふぅ」

「あはは。ふにゃふにゃだ」


『めっちゃ見たいんですが』

『こっちは空を飛ぶフェニちゃんの映像が流れています』

『いい眺めだなあ』


 温泉、気持ちいいね。好き。

 それじゃ、隣の温泉を。ちゃぷんと。


「んふー……」


『別のに入ったのは分かった』

『どうなん、リタちゃん。なんか違いわかる?』


「んー……。肌触りが、違うような、そうでもないような……?」


 でも、どっちも気持ちいい。それは間違いない。違いがあるのか聞かれると、私にはよく分からないけど。

 真美を見ると、少し考えて、


「片方は硫黄の香りが強い、かな……? でも同じ部屋だから、正直香りの違いは分かりにくいかも。でももう一つはちょっとぴりっとした感じが強いかも? 多分」

「へえ……。だって」


『完全に真美ちゃん頼りやないかい!』

『温泉そのものを楽しんでるから、源泉の違いはどうでもいいんじゃないかな』

『ところで案内役の高崎さん?』


「説明しようとしたらほとんど言われたのだけど」


『草』

『やっぱりいらないのではw』


 ここに案内してくれたのは高崎さんだから、ちゃんとできてると思う。

 少しゆっくり浸かってから、温泉を出る。受付の方に行くと、欲しいものが売ってあった。


「コーヒー牛乳……!」

「リタちゃん、すごく子供っぽい」


『コーヒー牛乳を高く掲げるリタちゃんw』

『いやいや、分かるよ? お風呂上がりのコーヒー牛乳は最高だからね』

『やっぱり味覚はお子様やなw』


 お子様って言われると少し複雑だけど、体はこうだから仕方ないと思う。

 ふたを開けて、飲む。甘くて冷たくてとても美味しい。満足。

 あとは、景色だね。二階からの景色がいいらしいから、行ってみよう。

 階段を上がって、大きな部屋に入る。とても広い、変な床の部屋だ。ざらざらしていて……。草みたい? 旅館の床もこれだったけど、なにこれ。


「真美。真美。なにこれ?」

「畳だよ」

「たたみ」


 日本の伝統的なもの、だったっけ。そういえばテレビでも見たことがある気がする。こういう感触なんだ。おもしろい。


「はい、リタちゃん。ごろーん」

「ん? ごろーん……?」


 真美と一緒に寝転がってみる。あ、なんだかすごく気持ちいいかも。お昼寝に最適だ。もっとごろごろしたい。


「お日様の下でこれでお昼寝したい」

「とてもわかる」


『わかる』

『畳は謎の吸引力があるよね』

『ひなたぼっこをしながら猫のように丸くなって眠るリタちゃんを幻視した』

『猫かな?』

『猫だよ』


 魔女だよ。

 でもこの畳、すごくいい。どこかで買おうかな。お家のお庭に置いておきたい。結界とかで汚れが入らないようにすれば、いいお昼寝の場所になると思う。


「畳買いたい」

「うん……。リタちゃん、まずは温泉を楽しもう?」

「そうだった」


『何の観光か分からなくなってきたなw』

『いろんなものに興味を持つのはいいことさ』


「畳もいいけれど、景色もいいわよ」


 高崎さんに手招きされて、窓の側に行ってみる。景色は……うん。悪くない。空を飛んだ方がいいのは事実だけど、こうして見る景色も悪くないと思う。


「わあ……。湯畑だ。こうして見ると広いですね」


 真美も隣に来て見始めた。湯畑、広いね。入れないのはちょっと残念だけど。


「それじゃ、景色も堪能したところで、次の温泉に行きましょうか」

「ん」

「次はちょっと歩くわよ」

「ん……?」


 ちょっと遠い場所にあるのかな? でも楽しみだ。

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