お泊まり

 全部見終わったところで、真美たちのお母さんが帰ってきた。ちいちゃんもおねむみたいだから、そこでちいちゃんはお母さんに寝かしつけられて、就寝。

 私と真美は映画をもう一本見ることに。今度は、簡単な魔法を使える魔女のお話。荷物を配達する子のお話みたい。


『そこであえて魔女の話をチョイスする真美ちゃんよ』

『今回は悪役じゃないから! 主人公だから!』

『リベンジやな!』


 リベンジっていうほどのものなのかな……?

 んー……。魔法を使える、というよりは空を飛べるだけみたい。それも箒がないと飛べないみたいだね。


「箒がないと空を飛べない……。箒に何かしらの魔法をかけてる? それはそれですごく面倒だと思う。でもバランスを取るのにちょうどいい、かも……? 難しい」

「ちなみにリタちゃん、師匠さんが空を飛ぶのは箒って言ったのは、この映画も影響してると思うよ」

「え」


『それはあり得るかもしれん』

『日本では魔女と言えば箒で空を飛ぶイメージだからな』

『そんな設定はいろいろあるけど、一番メジャーなのはこの映画かも?』


 そっか。それを思うと、なんだかこの映画が好きになってきた気がする。

 映画の魔女は男の子を助けて、それで終わり。決して世界を救うようなお話ではなかったけど、どこかで実際に起きていてもおかしくない、不思議なお話だった。


「それじゃ、リタちゃん。そろそろ寝よっか」

「ん」

「私は歯磨きしてくるけど、リタちゃんは?」

「魔法で綺麗」

「いつも思うけど本当に羨ましい魔法だね……!」


『実際かなり羨ましい』

『それがあれば、歯磨きが一瞬で終わるってことやろ?』

『地味に面倒だからなあ』


 歯ブラシっていうのでやるらしいね。私は小さい頃も師匠や精霊様が綺麗にしてくれてたから、やったことがないけど……。見てるだけでも大変だと思う。

 それが終わってから、真美の部屋に案内された。

 真美の部屋はシンプル。ベッドと勉強机に棚がいくつか。ベッドにはたくさんぬいぐるみがあって、私が買ってきたイルカもちゃんといた。


「ん……。お家からお布団持ってくる」


 別に床に直接でも、というより正直寝なくても大丈夫なんだけど、真美が気にしそうだから。

 そう思ってたんだけど。


「え? 別にいいよ。一緒に寝よ」

「え」

「どうぞー」

「ええ……」


『これは、てえてえやな?』

『一緒にお布団、いいですねえ!』

『ワイも間に挟まりたい』

『死ね』

『くたばれ』

『消え失せろ』

『ひでえw』


 ん……。とりあえず、配信はもう切っておこう。

 別に拒む理由もないから、真美のベッドに潜り込む。ぬくぬくだ。


「んー……」

「どうしたの?」

「人肌が近くにあるのは、久しぶり」

「久しぶり? 前は?」

「師匠」

「そっか……」


 まだもっと幼い頃だけど、師匠がよく一緒に眠ってくれてた。特に拾われてすぐの私は、ちょっとだけ不安定だったから、毎晩師匠が側にいて、寝かしつけてくれていた。

 師匠にはたくさん迷惑をかけたと思う。だから、たくさん恩返しをしたい。

 早く会いたい。会いたいなあ。


「もうすぐ会えるんだよね」

「ん」

「楽しみだね」

「ん……」


 会えるか分からなかった時のことを思ったらすごく気は楽だけど……。でもだからこそ、余計に会いたい気持ちが強くなってる気がする。

 だから、とりあえず。


「師匠をぶっ飛ばす魔法を考えないと……」

「そこは譲らないんだね……」

「ん」


 たくさん心配をかけられたんだから、それぐらいは許してくれるはず。精霊様に言ったら、私の分もお願いしますって言ってたし。だから。


「手加減いらないよね」

「そこは手加減してあげよう!?」


 じゃあ、ほどほどに、ということで。

 その後ものんびり真美とお話ししていたら、いつの間にか真美が眠ってしまっていた。私も目を閉じて眠ることにした。

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