旅行の準備……準備?


 真美のお家に戻ってきた。真美はもう帰ってきてるみたいだったけど、すごく忙しそうに動き回ってる。大きなかばん……旅行かばんっていうのかな? そこに色々と詰め込んでるみたい。


「えっと……いるものは……えっと……」

「真美。真美。大変?」

「あ、リタちゃんいらっしゃい。旅行の準備は大変なんだよ!」


『今回いきなりの決定だったからなあ』

『普通の平日なのにすぐに行くことを決めてる真美さんよ……』

『学校は?』


「休むけどそれが何?」

「ええ……」


 日本だと学校に行くことは大切なことだと思うんだけど……。違うのかな?

 ところで、なんだか詰め込んでるのを見るとちょっと申し訳ないけど、言っておこう。


「真美。真美」

「なに?」

「私が一緒だから、アイテムボックスに全部入れておける。あと忘れ物してもいつでも取りに戻ってこれる」

「…………」


『言われてみればそりゃそうだw』

『ぴたっと真美ちゃんの動きが止まったのがちょっとおもろいw』

『旅行の準備が実質的にいらないってめちゃくちゃ羨ましい』


 ある程度は用意しておいた方が楽だろうけど、そこまで気にする必要はないと思う。

 真美はなんだか少し考えてる。むむむ、と。


「でも、限られた荷物でするのも旅行の醍醐味……」

「重たい物を持ちながら歩くか、手ぶらで歩くか」

「よしじゃあリタちゃん、ちょっとこれ入れておいて!」


『真美ちゃんwww』

『一瞬で誘惑に負けたw』

『まあ重たい荷物を引きずりながら歩くのって地味に面倒だからなw』


 でもとりあえず旅行かばんに入れておくみたい。ある程度入れてあるし、まとめている方が便利だから、だって。

 真美のかばんをアイテムボックスに入れて、準備完了、かな? あとは明日だね。


「ところで真美、ちいちゃんはどうするの?」

「明日はお母さんのお仕事が休みだから大丈夫」

「わかった」


 ちいちゃんも連れていってあげてもいいかもだけど、さすがに小さい子を泊まりで連れ回すのはだめだと思う。お母さんも心配するだろうから。


「それじゃ、リタちゃん。今日はお泊まりだね」

「ん」

「銭湯いこっか!」

「ん?」

「新しい着ぐるみパジャマもあるよ!」

「なんで?」


『真美ちゃんはお風呂がからむと暴走するんか?』

『次は何の動物かな?』

『リタちゃんがめちゃくちゃ困惑してるんだけどw』


 いや、だって……。前のやつもちゃんとまだあるよ。別に他のものをもらわなくても大丈夫。ちょっと恥ずかしいけど、またあれを着れば……。


「今回はにゃんこだよ! リタちゃん猫っぽいから!」

「…………。ん」

「よっし! ちいが戻ってきたら銭湯だー!」

「…………」


『リタちゃんが完全に諦めておられる……』

『やっぱり最強は真美ちゃんなんやなって』

『ドラゴンすら瞬殺し、首相の電話ですら放置する魔女を振り回す真美ちゃんすげえ』


 真美にはいろいろお世話になってるから、断りにくいっていうのもあるけど。

 真美が楽しそうにしてるのを見るのは、私も嬉しいから。

 でも着ぐるみは……いや、いいんだけど……。うん……。諦めよう。




 ちいちゃんが帰ってきてから、一緒に銭湯に行って戻ってきた。今の私は真美が買っていた猫の着ぐるみだ。やわらかくて着心地は悪くないけど、どうして真美は着ぐるみを着せたがるのか、ちょっと分からない。


『にゃんこリタちゃんかわいい』

『あああにゃんこですごくかわええんじゃあああくんかくんかしたいよおおお!』

『まずいぞ錯乱兵だ! 衛生兵! 衛生兵!』

『そこに救命装置があるじゃろ? そう、それ。そのダイナマイトじゃよ』

『殺意しかねえwww』


 コメントもなんだか騒がしい。そんなにいいものなのかな。よく分からない。

 あとは、晩ご飯。今日は何を作って……。


「リタちゃんに本気で謝らないといけないことがあります」

「ん? どうしたの?」


『なんだなんだ』

『かなり深刻そうだけど……』


「晩ご飯の用意、忘れてました……!」

「え」


『ああ……w』

『いや、まあ、今日ばかりはしゃーないw』


 晩ご飯は、なし、なのかな? それは、とても、うん。ちょっと悲しいけど、でも今日はすごく真美を振り回した気がするから、仕方ないと思う。いきなりお泊まりの準備で大変だっただろうし。


「晩ご飯はなし?」

「出前でいいかな? それか、カップ麺」

「カップ麺。なにそれ」

「あー……。そっか。わざわざカップ麺を出したりしなかったからね」


『言われてみればそうやな』

『わざわざ日本に来てくれてるのにカップ麺出すのはなw』


 真美が出してくれたのは、大きめのカップ型のもの。麺って言ってたし、この中に麺が入ってるのかな。中に材料が全部入っていて、お鍋に入れて作るとか?


「これにお湯を入れると、早いものは一分、長いものでも五分ぐらいで食べられるよ」

「おー……! すごい!」


 料理が苦手な人でも、誰でも簡単に作れてしまうってことだよね。しかもお湯をいれるだけ。レトルトのカレーライスも簡単だって思ってたのに、これはもっと簡単だ。すごい。


『リタちゃんがめちゃくちゃわくわくしてるw』

『レトルトカレーで感動してた子だからな』

『カップ麺の残りスープにご飯をぶち込むのもオススメ』

『変な道に引きずり込むなw』


 へえ……。ご飯をいれる。それもよさそう。

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