二度あることは三度あるしもっとある


 ギルドに入って、受付に向かう。たくさんの人が私のことを見て、ひそひそ話してる。何かあったのかな?

 受付にたどり着くと、以前にも会ったお姉さんが対応してくれた。


「ようこそ、隠遁の魔女様。優勝、おめでとうございます」

「ん。王様に会ってきた」

「それはそれは……。何をお願いしたのか聞いてもいいですか?」

「情報。それだけだと少ないからって、お金ももらった。美味しいもの食べたい」

「なるほど……。魔女様は美味しい物に目がない、と……」

「ん……」


 はっきり言われちゃうと、なんだかちょっと恥ずかしい。でも美味しいものは大事。美味しいものを食べると幸せだから。

 今日は真美がカレーライスを作ってくれるはずだから楽しみ。何のカレーライスかな。カツかな? チーズかな? もちろん何もなしでもいい。楽しみ。


「魔女様?」

「ごめん」


『心ここにあらずで何を考えていたのやら』

『話題から察せられるだろう? カレーだよ』

『真美ちゃんにおねだりしてたもんなw』

『おねだりって言うとなんかかわいいw』


 美味しそうな香りをまき散らしてたあの宿が悪いと思う。


「そろそろ次の街に行きたいから、挨拶」

「あら。それはちょうどよかったです」

「ん?」

「深緑の剣聖様から、メッセージが届いていますので」

「来てたの?」

「いえ。ギルド間で短い文章をやり取りする特殊な魔道具があるのです」


 聞いてみたら、ずっと昔からある魔道具みたい。短い文章を指定もしくは全てのギルドに送る魔道具。人間が作れるとは思えないから、多分精霊たちが何かやったのかも。

 もしくは、ギルドを作った人に、精霊と親しい人がいたのかも。頼めばこれぐらいの魔道具は作ってくれると思うから。かなり条件はつけられそうだけどね。


「内容は?」

「はい。隠遁の魔女様へ、五日後にお会いしたいとのことです。場所は、初めて会ったギルドで、とのこと。またあの部屋に集まろうと」

「ん……」


『アリシアさんからの呼び出しか』

『まって? ねえまって? あの部屋って、もしかしなくてもギルドマスターの部屋では?』

『逃げて! ギルドマスターさん超逃げて!』

『残念! 魔女と剣聖からは逃げられない!』

『もうやめて! ギルドマスターのライフはもうゼロよ!』

『わりとまじめに心労でやばいんじゃなかろうかw』


 言いたい放題にもほどがある。でも、ちょっと否定できない。アリシアさんも別の場所を指定したらいいのに。

 でも他の場所を聞かれるとちょっと困る。森は、アリシアさんが緊張するかもだし。


「わかった。行くようにする」

「お願いします」


『おいたわしや、ギルドマスターさん……』

『なんでや! ギルドマスターさん何もしてないやろ!』

『マジで何もしてないのにただただ巻き込まれてるの草なんだ』

『これもはやアリシアさんの嫌がらせでは?』


 それはないと思う。ないよね? ちょっと分からない。

 ともかく。五日後に行かないといけない。忘れないようにしないと。


「それじゃ、お世話になりました」

「はい。またいつでもお越しください」


 受付さんに手を振って、ギルドを出る。のんびり歩いて、時々買い食いをして……。街から出たところで、真美のお家に転移した。




 晩ご飯はビーフカレーでした。ごろごろしたお肉がたっぷり入ってる。お肉にカレーがしっかり絡んでいて、とても美味しい。

 カレーとお肉とライスで食べる。うん。これはとてもいいもの。


「もぐもぐもぐもぐ」


『一心不乱に食べてる……』

『そりゃリタちゃんにカレーライスを出したらそうなるわw』

『いつもの光景』


 真美のカレーライスはとても美味しい。好き。


「いつも美味しそうに食べてくれるから、作りがいがあるよ」

「おねえちゃんおかわりー!」

「はいはい」


 ちいちゃんもカレーライスをたくさん食べてる。美味しいよね。よく分かってる。


「きっとちいちゃんは大物になる」

「その評価、カレーライスが基準になってない?」

「気のせい」

「そうかなあ……」


 きっと気のせい。カレーライスが美味しいのが悪い。


「ところでリタちゃん。スマホ、震えてない?」

「気のせい」

「気のせい!? 首相さんって表示が出てるんだけど!?」

「放置していい」

「リタちゃん!?」


『草』

『首相<超えられない壁<カレーライス』

『知ってたw』


 食べ終わってから連絡するから大丈夫。

 なんだかそわそわしてる真美を見ながら、カレーライスを食べ続けた。やっぱりビーフカレーはとても美味しい。

 ちなみに、電話は明日会いたいというものだったから、明日は日本でのんびりするつもり。

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