リンダさんとの試合
「わ」
結構速いと思う。大きな武器なのに、一瞬で私との距離を詰めて、斧を叩き込んできた。
そして軽い音と同時に私の結界に阻まれた。
「え」
ハイツさんが目をまん丸にしてる。なんというか……。ごめんなさい。
「とりあえず、ぎゅっ」
「うお!?」
影から黒い蔓を伸ばして、ハイツさんを拘束。その場に転がした。
『知ってた』
『まさに瞬殺』
『もうちょっと、手心をですね……』
ちゃんと攻撃をさせてあげたから十分だと思う。
でも、この後はどうしよう。ハイツさんは唖然としたまま動かないし、誰も試合を止めたりしないし……。どうしよう? 追撃、する?
『そっと杖を向けるリタちゃん』
『まってまってまってまって』
『多分あまりにもあっさりすぎて、審判さんも判断に困ってるだけだと思うんだ!』
んー……。そうなのかな?
「どうしよう」
杖を向けながら考えていたら、慌てたようにハイツさんが叫んだ。
「まった! やめてくれ! 降参だ降参! 審判も止めてくれよ殺されるじゃねえか!」
「あ、す、すまん! 試合終了! 勝者、隠遁の魔女!」
終わりでよかったみたい。追撃しなくてよかった。
拘束の魔法を解除してあげると、ハイツさんは慌てたように立ち上がると逃げるように立ち去ってしまった。意味なく攻撃したりしないから逃げなくてもいいのに。
審判さんに指示されて、私はさっきの部屋に戻ることになった。ちょっとあっさりすぎた、かな?
「もうちょっと、攻撃させてあげた方がいい? 向こうもアピールだっけ? したいんだよね?」
『善戦ならともかく、明らかに手加減されるのはマイナス評価にしかならないんじゃないかな』
『単純に煽ってるだけのようにとられるかも』
『気にせずやればいいと思う』
それじゃ、気にせずに続けよう。
部屋に戻ると、さっきより半分ぐらいの人数になってた。リンダさんもいるから、無事に勝ち抜いたらしい。よかった。
「魔女様!」
リンダさんが駆け寄ってくる。少しは緊張もほぐれたのか、今はほっとした感じ。でもまだちょっと、緊張感はあるみたいだけど。
「勝ったんだね。おめでとう」
「魔女様も。いえ、私なんかが心配する必要もなかったと思いますけど……。強かったですか?」
「ん」
「一瞬で終わってましたよね……?」
「…………」
『まああれで強かったって言うのは無理があるわなw』
『改めてリタちゃんの強さを再認識するだけになりそう』
『いやまだだ! アリシアさんみたいな人がきっと出てくるはず!』
『それはそれで地獄では?』
アリシアさんが出てきたら、私も本気になるだろうから……。ちょっと、この闘技場だと狭いと思う。普通の魔法だと避けられるだろうから、私も広範囲を攻撃する魔法を使わないといけないだろうし……。審判さんは多分巻き添えで死んじゃうだろうから、やっぱりだめだね。
そんなことを考えてる間に、二戦目に呼ばれたから移動。今回もおんなじような感じで拘束して、戻ってくる。
やっぱり、出たのは間違いだったかな?
『あっという間に二試合目も終わっちゃったな』
『期待通りの無双なんだけど、拘束で終わっちゃうから派手さがなんもない』
『つまり、つまらない』
『お前らわがまますぎるぞw』
派手な魔法を使うと殺しちゃいそうだから、それは我慢してほしい。魔獣相手ならともかく、意味なく人を殺そうとは思わないから。
次に呼ばれたのは、準決勝。相手は、リンダさんだった。
「決勝まで行きたかった……!」
諦めるのが早いと思う。
『もはや一種の死刑宣告である』
『なんでや! リンダちゃんなんも悪くないやろ!』
『本当に誰も何も悪くないんだよなあ』
『悪いのはこんな大会に出ちゃったリタちゃんだと思う』
『つまり出ることに期待した俺らが一番悪いってことでは?』
『それ以上はいけない』
さすがに視聴者さんに何かを言うつもりはないけど、王様に会うのにももうちょっと考えた方がよかったかもしれない。そもそも、絶対に会わないといけないってわけでもなかったんだし。
でも、師匠が出た闘技場に私も出てみたかった。だから、今回だけは許してほしい。
そういえば、師匠はどんな戦い方をしたのかな。王様に会ったら、聞いたら教えてくれるかな?
考えている間に、私はまた闘技場の真ん中に立っていた。リンダさんが目の前で深呼吸をしてる。
「魔女様」
「ん」
「いきます……!」
「どうぞ」
私がそう言うと、リンダさんは攻撃せずにいきなり岩の陰に隠れてしまった。他の人がすぐに捕まったからその対策かな?
「隠れながら攻撃、かな?」
『だと思う』
『隠れながらだとリタちゃんは相手を攻撃できないな!』
『リンダさんの勝ちやなこれは!』
「いや、場所は分かるけど」
『知ってた』
魔力での探知って便利だよ。薄く魔力を広げて、何があるのかだいたい分かる。リンダさんがどこに隠れてるのかももちろん分かる。
一番単純な探知の方法だから、ある程度魔法に慣れれば使える人は多いはず。お母さんが魔法使いなら、それも知ってると思うんだけど。
この後はどうするのかな、と思ってたら、突然岩が爆発した。
「おお」
『耳が! 耳があああ!』
『爆発は! 芸術だ!』
『でもこれ何の意味があるんだ?』
多分、探知の阻害が目的だと思う。一番簡単な探知だと、こういった土煙とかが広がるとあまり役に立たなくなるから。
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