決勝戦
「何か爆弾みたいなものでも持ち込んでたのかな?」
『今もあっちこっちで爆発してるのにリタちゃんが冷静すぎてな……』
『これは諦めの境地やな!』
『リンダさんの勝ちか!』
「んー……。負けた方がいいの?」
そうなら考えるけど……。ただ、ちょっと、複雑な気持ちかな。んー……。
「真美。真美。どうしたらいいかな?」
『普通に勝っていいよ。この人たちもリタちゃんが勝つって信じてるからふざけてるだけ』
『ごめん、マジでとらないでほしい』
『俺らはリタちゃんがさくっと優勝するのを見たいだけなんや』
「ん」
それならいっか。じゃあ、さくっと終わらせよう。
そう決めたところで、矢が飛んでくる。私の死角、真後ろから。それを掴んで受け止めて、投げ捨てる。掴まなくても結界が勝手に防ぐけど、こっちの方が見栄えはいいかなって。
『おお! かっこいい!』
『すっと振り向いたかと思えばぱしっと掴んで、ぞくっとした』
『なお掴んだ意味』
見栄えだけだね。
矢が飛んできた方にとりあえず魔法を放ってみる。小さい火球の魔法。当然ながらもうそこには誰もいない。砕けた岩の欠片にぶつかるだけ。
「次は何かな? 何をやってくるのかな」
『あれ? リタちゃん結構楽しんでる?』
『わりとわくわくしてるような』
「どんな工夫をするのか楽しみだから」
負けてあげるつもりはないけど、どんな工夫があるかは見てみたい。最初も二回目も、みんなまっすぐ斬りかかってきただけだからつまらなかった。工夫、大事だよ。
次の攻撃を待っていたら、今度は何かが投げられてきた。岩の裏からこぶし大ぐらいの球体。あれは……爆弾に近いものかな? ヒモがついていて、先端が燃えてる。ちょうど私に届くか届かないかぐらいで爆発するかも。
んー……。光と音はさすがに嫌かな。私が、じゃなくて視聴者さんが。画面がぴかってなるだろうから。
なので。ばくっと爆弾を処理してしまう。爆弾は消えちゃったけど、次は何を……。
「ええっ!?」
あれ、なんだか驚いてる。リンダさんがそっと岩の後ろから顔を出してきた。心なしか顔が青ざめてるような気がする。
「あの……。魔女様」
「ん?」
「さっきの……大きい口みたいなのって……どこから出てますか……?」
「影」
「影……」
そう見せてるだけ、だけどね。
リンダさんはこくりとつばを飲み込んで、自分の足下に視線を落とした。見てるものは自分の影だと思う。次に私に視線を戻して、
「ちなみに……どこまでの距離を攻撃できますか……?」
「んー……。認識してる場所ならどこでも」
目で見えて無くても魔力の探知で場所が分かってるなら攻撃できる。自分でも結構便利だと思ってる。精霊様にも褒めてもらえた自慢の魔法だ。
その時の精霊様の顔がちょっと引きつってた気がするけど……。気のせいだね。
リンダさんはなるほどと頷いて、完全に体を出した。
「ごめんなさい。降参します。いつでも殺される可能性があるって、ちょっと怖いので……」
「ん……。残念」
『賢明な判断』
『ばくっの魔法はアリシアさんですらどん引きの魔法だからなw』
『そう考えるとやっぱあの魔法ちょっとおかしいわ』
そこまで言われるほどかな?
リンダさんとならもうちょっと戦ってもいいと思ったんだけどね。工夫をちゃんとしてる人だから、私が考えたこともない方法があるかなと思ったから。
ともかく、これで試合は終了。私は決勝進出ということになった。
リンダさんはこの後に三位決定戦があるとかで、一緒に控え室に戻る。もうちゃんとお話しできないかなと思ったんだけど、今までと同じようにお話ししてくれてる。
「魔女様、しっかり私のことを探知してましたよね。どんな魔法を使っていたんですか?」
「探知にもいろいろ種類があるから。私は三種類ぐらいを同時に使って判別してるだけ」
「…………。なるほど」
『なにそれ知らない』
『そっかー。探知魔法って簡単な魔法なんだなー』
『基礎的なやつならともかく、絶対に他二つは普通の魔法じゃないぞ』
一つは普通の魔法だよ。だって師匠が教えてくれる時、簡単な探知、普通の探知、難しい探知って教えてくれたから。だから一つは普通だと思う。
控え室に戻って、少し休憩した後にリンダさんが呼ばれた。先に三位決定戦らしい。
その後に、私だ。ついに決勝戦だね。リンダさんとは楽しかったから、次も楽しめたら嬉しい。
「リンダさんはどうなったの? 勝った?」
案内人さんに案内されながら聞いてみたら、頷いた上で教えてくれた。
「完封で勝っていましたよ。とてもお強い方のようでした」
「ん」
私がいなかったら優勝とかできてたのかな? んー……。気にしても仕方ない、か。
そうして、広場に到着。改めて岩とかが設置されて、そして対戦相手もいた。茶色のローブに三角帽子の人。魔法使いかも。
「それでは決勝戦! ここまで危なげなく勝ち進んだ隠遁の魔女に挑戦するのは、若き天才魔法使い、ガレス!」
『魔法使い!』
『リタちゃん以外にも魔法使いいたんか!』
『全身ローブでわからん! 女の子か!? 女の子だよな!?』
『おまえらwww』
『名前から察するに多分男だろw』
んー……。男の人だね。帽子を目深に被ってるから分かりにくいけど、気配は男の人のそれだから。
「はじめ!」
審判さんの声と同時に、ガレスさんが杖を向けてきた。その杖の前に魔法陣が描かれていく。少しして、魔法陣が完成、雷が私に向かってきた。
この程度の魔法だったら結界で弾けるから意味はない。次は何かな?
ガレスさんが杖を天に向けた。大きな魔法陣が描かれていく。すごく大きな魔法陣で、広場の上には雨雲ができあがり始めた。
「時間、かかりそうだね」
「君は待ってくれるだろう?」
私のつぶやきにガレスさんが聞いてくる。本当ならさっさと攻撃して終わらせてもいいんだけど……。結構大きな魔法だから、どんな魔法か見てみたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます