カリちゃんの報告
どきどきしてなかなか寝れなかったけど、なんとか眠れた。ただいつもよりずっと早く目を覚ましちゃったけど。
今は、朝の四時ぐらい、かな? まだちょっと早すぎる気もする。でも精霊様と一緒にカリちゃんのお話を聞くぐらいならいいかもしれない。
「カリちゃん」
自室を出てカリちゃんを呼ぶと、カリちゃんが少しだけ驚いたのが分かった。
「リタちゃん? ちょっと早すぎますよー。ちゃんと寝ましたー?」
「ん……。あまり寝れなかった」
「なるほどー。判断ミスでしたー。先に報告の方がよかったですねー」
そっちの方がよく眠れたかもしれないけど……無理かな。それならそれで、やっぱりどきどきして寝れなかったと思うから。
カリちゃんと一緒に世界樹の側に移動。そこで精霊様を呼ぶと、すぐに出てきてくれた。
「おはようございます、リタ。今日はとても早いですね」
「ん……。大事なお話」
「ふむ。なんでしょう」
「師匠のいる場所が分かったって」
「…………。はい?」
精霊様が目を丸くしてる。本当に驚いてるみたい。次に勢いよく、私の側にいたカリちゃんに目を向けた。
「どういうことですか?」
「あう……。ごめんなさいですー……」
報告してなかったことを怒ってるみたい。カリちゃんは私のためにそうしたらしいから、あまり怒らないであげてほしい。
「精霊様。カリちゃんは私に最初に報告したかったって言ってた。だから、怒らないであげてほしい」
「それは……。いえ、そうですか。そういうことなら、いいでしょう」
許してくれたみたい。カリちゃんもほっと胸をなで下ろしていた。
「それで、詳しい場所も分かったのですか?」
「いえー。そこまではまだですー」
カリちゃんが言うには、あくまで見つかったのは、どの銀河にいるか、というところまで。どの星にいてどこにいるかはこれからじっくり調べないといけないみたい。
ただそれでも、間違いなく、一ヶ月以内には見つけられる、らしい。
「一ヶ月?」
「はいー」
「それだけ待てば、師匠に会える?」
「おそらくー。観測間違いでなければー」
つまり、期待しすぎもよくないってこと、だよね。でも……。
「精霊様。どうしよう。私、ちょっと変かもしれない」
「リタ?」
「ちょっと胸が苦しい。なんか、変」
「ふふ……。おいで、リタ」
「ん……」
精霊様が腕を広げてくれたから、抱きついてみる。ぎゅっとしてみる。んー……。ちょっとは落ち着いた、かもしれない。
「ようやくあの子とまた会えると思うと……。私も、感慨深いものがあります。楽しみですね」
「ん」
「コウタと会ったら、まずは何がしたいですか?」
「殴る」
「ええ……」
とりあえず殴りたい。ぶっ飛ばしたい。たくさん悲しくなって心配したんだから、それぐらいは許してほしい。師匠に拒否権なんてないけど。
その後は……んー……。
「撫でてほしい。褒めてほしい。また一緒にのんびりしたい」
「そうですね……。楽しみです。本当に」
「ん……」
ああ、早く会いたいなあ……。
「ところで、コウタはどこにいたのですか? ここまで早く見つけたとすると、それほど遠くはなさそうですが」
「ですねー。リタちゃんが遊びに行く地球とは反対側ですがー。だいたい同じ距離ぐらいですー」
「そんなに近くに……」
まさか地球と同じぐらいだとは思わなかった。だからこんなに早く見つかったんだと思うけど。どれだけ早く見つかっても一年以上はかかると思ってたから。
「できるだけ急ぎますからー。リタちゃんは今まで通りお待ちくださいねー」
「ん……。でも、カリちゃんも無理しないでね」
「ありがとうございますー」
「なでなで」
「わはー」
指先で撫でてあげると、カリちゃんは嬉しそうな笑顔になった。カリちゃんはやっぱりかわいいと思う。
あと一ヶ月ほど。それも、最長で一ヶ月だ。それまでには見つかるらしいし、探索開始の場所に師匠がいたら、明日には分かるかもしれない。
うん。どうしよう。どきどきしてきた。ちょっとだけ、緊張。
「リタ。難しいとは思いますが、あまり気にせず今まで通り、ですよ」
「ん」
私も一緒に探せば早くなる、そんな魔法ならいいけど、そういう便利な魔法じゃない。だから私はいつも通り、とは分かってるけど……。やっぱりちょっと、難しい。
「配信でみんなに報告はしてもいい?」
みんなとお話しすれば少しは落ち着けるかもしれないから。
精霊様はすぐに頷いてくれた。
「大丈夫です。コウタを心配していた者もいるでしょうし、報告してあげてください」
「ん」
それじゃ、朝になるのを待ってから、配信で報告しよう。みんながどんな反応をするか、ちょっと楽しみ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます