土手煮
真美たちが帰ってくるのを待ってから、晩ご飯。私が土手煮を買ってきたのを知ってたからか、おかずは少なめ。サラダとお漬物、あとはお味噌汁だって。
「えへー」
「ん。ちいちゃんはかわいい」
私に抱きついてくるちいちゃんを撫でていると、料理をし終えた真美が呼びに来てくれた。ついに土手煮だ。楽しみ。
「リタちゃん、ごめんね。私たちの分まで」
「んーん。みんなで食べた方が美味しいから」
『一人きりのご飯は寂しいもんな』
『だからリタちゃん、次の観光は是非とも俺たちを呼ぼうぜ!』
「リタちゃん、絶対にダメだからね」
『ひでえwww』
もちろん今のところ呼ぶつもりはないけど。巡り会った人ならともかく、視聴者さんを呼ぶときりがなさそうだからね。
それよりも、ご飯だ。私の目の前にはご飯が並んでる。早く食べたい。
真美が用意してくれたほかほかの白ご飯にサラダ、お漬物、お味噌汁。このあたりは食べたことがあるから、とりあえず土手煮を試したい。
「いただきます」
みんなで手を合わせて、いつもの言葉。そうしてからお箸を手に取って、土手煮を食べた。
「んー……。ちょっと濃いめの味付け」
お味噌の味なのかな? 甘辛い味のお肉だ。このお肉、すじ肉っていうちょっと固いお肉らしいけど、そのお肉がとっても柔らかくなるぐらいに煮込まれてるみたい。
こんにゃくと大根も入ってるみたいで、これもすごく柔らかくて、しっかり味がしみこんでいた。こっちも美味しい。
でもやっぱりちょっと味が濃いめだけど……。うん。ご飯と一緒に食べるとちょうどいい感じ。甘辛くて柔らかいお肉とご飯はとってもよく合う。
「んふー」
「これが本場の土手煮……すごく美味しいね……」
「ん……!」
『くそ……ちくしょう……! もう味噌煮込みとひまつぶしとパンでお腹いっぱいだよ……!』
『マジで全部食べた猛者がいるのか……w』
『でもお腹いっぱいだけど土手煮も美味そうなのでちょっと買ってくる』
『ええ……』
食べ過ぎはあまり体に良くないよ。
土手煮、すごく美味しい。お味噌ってとてもすごいと思う。お味噌汁にもなるし、こうして美味しいお肉にもなるし……。
「お味噌、すごい」
「お味噌にもいっぱい種類があるけどね」
「ん? そうなの?」
「そうなの。土手煮で使われるお味噌は八丁味噌っていうやつだったかな?」
「ふうん……」
使い分けとかいろいろあるのかな。難しそう。私はこうして食べられたら満足だけど。
んー……。土手煮、美味しかった。また食べたい。今度はお店で食べてみたいな。
「精霊様。おみやげ。土手煮」
「おかえりなさい、リタ」
精霊の森に帰ってきて、早速精霊様に会いに行く。今回のお土産は土手煮だ。たくさん買ったから、たくさん食べられる。今回は真美にご飯をもらっておいたから、ご飯もセットで食べられるよ。
お茶碗に入ったご飯と土手煮を置くと、精霊様が早速食べ始めた。精霊様も食べるのがとても好きだと思う。
「リタ? どうかしました?」
「んーん。なんでもない」
精霊様が首を傾げながらも、土手煮を口に入れた。
「ほう……。なるほど。濃いめの味付けですが、だからこそご飯によく合います。それに、お酒にも合いそうですね」
「ん? お酒?」
「はい。おつまみ、というやつですね」
おつまみ。お酒と一緒に食べるもの。おつまみがあるとお酒も美味しくなるらしい。私はお酒を飲んだことがないから分からないけど。
『やっぱ土手煮と言えばお酒のお供だよね』
『土手煮を食べながら、熱燗をくいっと』
『やめろ、マジでやめろ、また食いたくなるだろうが』
お酒、美味しいのかな? ちょっと気になる。
「精霊様。お酒って美味しいの? 飲んでみたい」
「…………」
ん? どうしてか精霊様が黙ってしまった。
「あのですね、リタ。お酒は美味しくありません。あれは大人だから美味しいものなのです」
「だめ?」
「だめです」
私はだめらしい。ちょっと残念だけど、気になっただけだし、いいか。
『なあ、これって……』
『絶対なんか過去にあったやろ』
『精霊様があからさまに安堵してるしな』
お酒、いつか飲めるかな。師匠を見つけたら飲めるかな? ちょっとだけ、楽しみ。
「精霊様、どうしたの?」
「いえ……。なんでもありません。はい。なんでもありません。大丈夫です」
精霊様がちょっと挙動不審だけど……。気にしても仕方ないかな。
土手煮はまだあるし、私ももうちょっと食べよう。あとでカリちゃんにもあげないとね。
お家に戻ったところで、カリちゃんが言った。
「リタちゃん、おかえりなさいー。朗報ですよー」
「ん?」
「見つかりましたよー。ちょっと遠くの銀河なので詳細はもう少し調べてからですが、近日中に会いに行けそうですー」
「え」
何が、なんて聞かなくても分かる。
それは、ずっと待っていた報告だった。
まだ詳しい場所は分からない。それでも、どの銀河かは分かった。
もうすぐ師匠と会える。かもしれない。
かもしれないだし、まだ詳しい場所はこれからだけど……。
どうしよう。すごく嬉しくて、緊張しそうで。
「ちなみにー。リタちゃんに真っ先に報告したかったのでー。大精霊様にはまだ言ってませんー」
「それはだめだと思う」
さすがにそれは精霊様にもちゃんと報告してほしい。
でも。けれども。明日でいいかな。配信ももう切っちゃったし。今はまだちょっと、気持ちが落ち着かないから……。明日、精霊様とみんなに報告しよう。
「そうなると思っていたのでー。今日はとりあえず休んで、明日、かんがえましょー」
「ん」
「ちゃんと寝ないとー。絶対に教えませんからー」
「…………。ん」
このまま詳しく探そうと思ったけど、だめらしい。今日はとりあえず寝て、明日、がんばる。
すごくどきどきしてきた。ちゃんと寝れるかな……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます