お土産カレー


「カリちゃん、お土産」


 お家に帰るとカリちゃんがふわふわと浮いていたから、お土産を渡しておいた。先に精霊様に渡した方がいいかなとも思うけど、きっと気にしないから大丈夫。


「わー。おみやげですかー。ちなみになんですかー?」

「アイスとカレーライス。どうぞ」

「わはー。ありがとうございますー」


 テーブルにお持ち帰りの容器に入ったカレーライスとアイスを置く。カリちゃんは少し迷ったみたいだけど、まずはアイスを食べることにしたみたい。すっと開いて、すぱっと風の刃で切り取って食べ始めた。


『ええ……』

『固いアイスに四苦八苦するカリちゃんを見たかった……』

『ドSかな?』

『いやでも気持ちは分かるよ』


 んー……。精霊にそれを期待した時点で間違いだと思う。カリちゃんは小さく見えても管理精霊だ。今はダンジョンの管理から離れてるけど、その力は変わってない。

 あっという間にアイスを完食して、次はカレーライス。カレーとご飯を魔法で浮かせて、ちょっと混ぜて、食べていく。カリちゃんのサイズのスプーンをどこかで探そうかな。


「ちょっと辛めですけどー……。美味しいですねー。リタちゃんのお気に入りなだけはありますー」

「ん。すごく好き」

「わはー」


 美味しいです、と言いながらもぐもぐ食べるカリちゃん。もぐもぐ食べるのを見るのはなんだか楽しい気がする。

 このまま見ていてもいいかもしれないけど、精霊様にも渡さないと。だから、世界樹に向かおう。


『あれま、もう行くのか』

『もっとカリちゃんが見たかったです』

『癒やし枠。いやリタちゃんのペット枠』

『怒られるぞお前らw』


 さすがにカリちゃんをペットみたいに思うことはできないよ。

 転移して、世界樹の前へ。精霊様を呼ぶと、すぐに出てきてくれた。


「おかえりなさい、リタ。今回の日本は楽しかったですか?」

「おいしかった」

「…………。はい」


『この微妙な間よw』

『楽しかったかの質問なのに答えが美味しかったってw』

『それでこそリタちゃんやで』


 バカにされた気がするけど、気のせいということにしておこう。

 今回のおみやげはアイスとカレーライス。カレーライスを見て、精霊様は首を傾げた。


「おや、以前のカレーライスとはまた違いますね」

「ん。今回のカレーライスは専門店のカレーライス」

「専門店、ですか」


 精霊様が早速食べ始める。なるほど、と頷いて、


「確かにこれも美味しいですね……。ですがリタ、あなたは前のカレーライスの方が好きなのでは?」

「ん。そう」

「ふふ。あの味の方がリタの好みでしょうからね」


『精霊様すげえな』

『さすが精霊様、リタちゃんの好みをしっかり把握してる』

『リタちゃんのお母さんよりお母さんしてる……!』

『実母と比べると基本的に誰でもそうなのでは?』

『え、なにこれどういうこと?』

『知らない人に言っておくと、リタちゃんの両親は赤ちゃんだったリタちゃんを捨てるクソ親です』


 さすがにあれらと比べるのはだめだと思う。精霊様に限らず、比べた人に対して失礼だから。

 次にアイスを手に取った精霊様は、不思議そうに首を傾げた。


「リタ。これは……食べ物ですか?」

「食べ物」

「アイスの模型ではなく?」

「ん」


『また模型言われてるw』

『いや確かに固すぎるほどに固いけどねw』

『新幹線の車内は冷凍庫がないんだ。さらにワゴンで移動中も溶かすわけにはいかない。だからドライアイスを使ってマイナス八十度近くまで下げて保管してるんだよ』

『なんでそんな詳しいんだよw』


 おー……。あの電車、冷凍庫がなかったんだね。電気で走ってるから、電気の道具とかいっぱいあると思ってた。じゃあこの固いのも、工夫の結果ってことだね。


「なるほど……。ところで新幹線とは?」

「んー……。こう、すごく長い乗り物。こんな感じ」

「リタ? 両手を広げられても分かりませんよ?」


『リタちゃんw』

『大きさの説明の仕方がまんま子供でかわいいw』

『なお実年齢』

『それ以上はやめるんだ』


 んー……。でも、説明が難しい。あ、いや、そっか。長さをそのまま言えばいいか」


「四百メートルの乗り物」

「メートル……。なるほど理解しました。それはまた、ずいぶんと長い乗り物ですね」


 そう言って何度か頷きながら、精霊様はアイスを食べ進めていく。私のやり方と同じで、魔力で無理矢理食べてるみたい。


『なんかリタちゃんと精霊様が食べてるの見てたら、あまり固そうに見えないよね』

『魔力いいなあ……俺も使いたいなあ……』

『みんなそう思ってるよ』


 ん。とても便利。だから私も食べる。もぐもぐ。


「ふう……。ごちそう様でした。とても美味しかったですよ」

「ん。あと、これ、お弁当。適当に食べて」

「お弁当ですか。これはまた……日本のお弁当はまたすごいですね」

「ん。師匠のお弁当とは大違い」


 師匠と二人でちょっと遠出した時とか、持ち運びができるご飯を作ってくれた。おにぎりに干し肉だけの簡単なお弁当だったけど……。


「ん……。あれも、美味しかった。師匠と一緒におにぎり食べて、お散歩して……。楽しかった」

「ええ……。そうでしょうね」

「ん」


 精霊様が私の頭を撫でてくる。それが、ちょっとだけ恥ずかしい。早く師匠に会いたい。


『リタちゃん……』

『大丈夫だよ、きっともうすぐ見つかるよ』

『見つかったらあのバカを連れ回してやろうぜ!』


 そうだね。見つかったら、いろんなところに一緒に行きたい。もちろん、日本にも。

 それが、今はとても楽しみ。だからきっと、見つかるはず。だよね。

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