カレー専門店

 二人と一緒に、早速カレー屋さんへ。ちょっと明るい出入り口を通る。左側にカウンター席、右側にテーブル席が並ぶお店だ。あまり広くはないけど、お店に入った瞬間からカレーの香りが鼻をくすぐってくる。すごく楽しみ。


「い、いらっしゃいませ……!」


 店員さんが一番奥のテーブル席に案内してくれた。あまり目立たない場所、かな?


『リタちゃんが来たのに固まらない……この店員さん、やりおる……!』

『貴様、さては配信を見ていたな!?』

『配信を見てたら唐突に自分のお店が紹介されてるとか、それはそれで怖いなw』


 メニューにはたくさんのカレーがある。んー……。たくさんのカレーというより、トッピングがいろいろ選べるみたいな感じだね。


「真美。真美。オススメある?」

「カツカレーにチーズトッピングできるよ?」

「それで」


『はやいよw』

『とんかつとチーズが本当に好きだね』

『気持ちはとても分かる』


 カツカレーにチーズは至高だと思う。間違いない。

 真美が選んだのは、ビーフカレー。ごろごろしたお肉が入ってるらしい。ちいちゃんは、辛さ控えめのお子様カレー。かわいい。

 店員さんに注文して、少ししてカレーが運ばれてきた。

 大きなお皿に大きなカツ、それにほどほどにとけた細いチーズがたくさん入ってる。スプーンでちょっとすくってみると、チーズがとろりとしてる。すごい。


『あああああ!』

『今回メシテロ多過ぎませんかねえ!?』

『チーズカレーが食べたくなってきた……!』


 このお店、宅配とかもしてるらしいから、注文すればいいと思う。


「リタちゃんリタちゃん」

「ん?」

「はい」


 真美の方に視線を向けると、真美が私のカレーに何かを入れてきた。ころんとちょっと大きなもの。お肉。お肉だ。


「いいの?」

「うん」

「ありがとう」

「いえいえ」


 それじゃ、早速。もらったお肉から。すごくごろっとしたお肉だけど、スプーンで簡単に崩れるお肉だ。柔らかくて食べやすそう。しっかりとお肉を感じられて、とても美味しい。トッピングでお肉を頼むのもいいかも。

 カツにはソースをたっぷりと。このソースは店員さんが持ってきてくれた。お好みでかけてください、だって。多めにかけてもいいらしい。太っ腹って言うんだっけ。すごい。


「おー……」


 このソース、カレーにとてもよく合う。カツにもしっかり絡んで、濃厚な味だ。とろとろのチーズと一緒にカレーをかけて、ぱくりと食べる。どれも濃いめの味だけど、お互いに邪魔するようなこともなくてとても食べやすい。美味しい。


「んふー」

「あはは。気に入ってもらえてよかった」


 ん。これはすごく美味しい。とても、とても美味しい。


「どう? 私のカレーより美味しいでしょ。ここならリタちゃんもいつでも来られるから……」

「え?」

「え?」


 真美のカレーと比べて……。んー……。

 確かに、最初に食べたカツカレーと比べると、このお店のカレーの方が美味しいと思う。でも、何度か作ってもらってる間に私の好みに近づいていって、今はもう私の大好きな味そのものだ。

 だから。


「真美のカレーの方が好き」

「え? そ、そう……?」

「ん。真美のカレーが一番好き」

「あ、あはは……。え、どうしよう、すごく嬉しい」


『てえてえ?』

『これはてえてえ』

『リタちゃん、こういうところで嘘は絶対つかないだろうから本音だと思う』

『真美ちゃん顔真っ赤やぞw』


 もちろん、このお店のカレーもすごく美味しい。それは間違いない。いろんなところでお店を出してるだけはあると思う。

 でも、それはたくさんの人が美味しいと感じる味であって、私の好みに合わせたわけじゃない。

 真美は私の好みに合わせてカレーを作ってくれてる。知ってるよ、スパイスっていうのをたくさん買ってきて、色々と工夫してくれてること。私の顔色で少しずつ調整してくれてたこと。

 だから、真美のカレーが一番好き。大好き。間違いない。

 というのを語ったら、真美は両手で顔を覆ってうつむいてしまった。なんでだろ?


『なんだこの褒め殺し』

『しかも完全に天然ってやってるっていうのがもうね』

『そりゃリタちゃんに特化したカレーが大衆向けカレーに負けるわけないわな』

『てか真美ちゃんなにげにすごくね? 表情が薄いリタちゃんの顔色を読んで調整とか』

『スパイスまで買うとか全力過ぎるだろw』


「だって! もっとこう、喜んでもらえたらなって……!」


『ええ子やなあ』

『マジでめちゃくちゃ優しい子』

『リタちゃん最初の安価でSSR級の大当たり引いてたんやなって』


「ん。真美はすごく優しい。好き」

「うわあああ!」


 なんか真美がすごく変な動きをしてる。ちいちゃんもそんな真美を見て首を傾げてる。あ、ちいちゃん、ちゃんとスプーン持たないとカレー落ちちゃう。もったいないよ。そうそう、ちゃんと食べよう。


「だから、真美。次は真美のカレーが食べたい」

「うぅ……。任せてリタちゃん、うんと美味しいカレーを作るから……!」


『てえてえ?』

『胃袋を掴まれた魔女がいると聞いて』

『がっちり掴まれてますねえ』


 真美のカレーはとても美味しい。次も楽しみ、だね。うん。

 それはそれとして、お持ち帰りができるみたいだからお持ち帰りも注文しておく。精霊様へのお土産と、自分用にいろんな種類のカレーを。今回はお土産がちょっと多くなっちゃったけど、別にいいよね。


「そろそろ帰る?」

「うん……そうだね……」


 お家に帰っても真美の顔は真っ赤だった。不思議。

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