新幹線

 ところで一人、スマホを見てる人がガッツポーズしてるんだけど、どうしたのかな。


『多分安価を当てた人じゃないかな』

『くっそ羨ましいんですが』

『俺のオススメも食べてほしかったなあ!』


 それはまた次の機会に、だね。次があったらたっぷり三時間ぐらい選ぶ時間が欲しい。

 とりあえずレジに並ぼう。そう思って店の奥に向かったら、何故か誰も並んでなかった。人は多いのに、不思議。


『俺現地人。リタちゃんがそろそろ来るとなって全員が横に移動してたよ』

『いや草』

『お前ら優しいなwww』


 んー……。そこまで気を遣わなくてもいいのに。間に合ったと思うから。多分。

 でも、譲ってもらえたのは嬉しい。新幹線っていうのもちゃんと見ることができそうだね。


「これ、お願いします」

「は、はい! いらっしゃいませ!」


 店員さんがちょっぴり慌てながらも、お会計終了。駅弁をアイテムボックスに入れて、ホームに向かう。えっと……。十七番線、だって。そんなにいっぱいあるんだ。


「どこ?」


『まずは改札通ろうか』

『とりあえずまっすぐな』


「ん」


 視聴者さんに従って、改札を通る。切符を二枚まとめて入れるみたい。小さい隙間に切符をいれると、がちゃがちゃって音がして向こう側に出てきた。すごい。


「おー……。がちゃってした。がちゃって」


『リタちゃんテンション高いなw』

『その子、知らないものへの探究心もすごいから』

『つまり好奇心旺盛ってこと!?』

『そう聞くとかわいいなw』


 切符を持って、十七番線に向かう。ちょっと長いエスカレーターに乗って、ホームに出た。


「おー……」


 私が乗る電車はまだ来てないみたいだけど、他の電車はたくさんある。順番に出発していくみたい。

 それにしても、すごく長い。とても長い。端から端まで行くのはとても大変そう。


『のぞみってめちゃくちゃ長いっすね』

『のぞみは全て十六両編成、全長は四百メートルにもなるぞ!』

『なんでそんなこと知ってんだよw』


 四百メートル。とても長いと思う。そんなに長い乗り物にたくさんの人を乗せて、とても速いスピードで走る。


「新幹線ってすごいね」


『なんだろう、すごく嬉しい』

『日本人としてとても誇らしい』

『まあ俺らは開発にも設計にも関わってないんだけどな!』

『やめろwww』


 それを言うなら、私だって私が使う魔法のほとんどは、私が作ったものじゃないから。それをちゃんと維持できる人がいるっていうのは、えっと……。そしき? くに? としてすごいと思う。

 せっかくなので新幹線の先頭を見てみたい。というわけで、転移して一番先頭に移動。


「おー……。なんだか細長い。おっきいお鼻がある」


『おっきいおはなwww』

『いやまあ鼻って呼ばれてるけど』

『空気抵抗とかいろいろな兼ね合いで長くなったんだよ』


 空気抵抗。あまり気にしたことなかった。科学は大変だ。

 そんなことを考えながら眺めていたら、十七番線に新幹線が入ってきた。やっぱりこれもとっても長い。でも、それは今はよくて。とりあえず乗ろう。

 中はどうなってるのかな。とても楽しみ。

 私が乗るのは八号車。その列に私も並ぶと、目の前の人たちが二度見してきた。とりあえす手を振ってこう。ふりふり。


『いいなあいいなあ!』

『俺もリタちゃんに手を振ってもらいたい』

『このラッキー野郎どもめ……!』

『おまえらの怨嗟が醜すぎて笑うしかねえwww』


 よく分からないけど、あまり怒ったらだめだよ。

 ドアが開いたから、みんなに続いて乗車。

 なんだか、思っていたよりもちょっと広い。真ん中に通路があって、通路の両側に椅子が並んでる。ゆったりとした席で、のんびりできそう。通路はカーペットになってるみたい。ちょっとふかふか。


『グリーン車すげえ』

『普通車だとふっつーに硬い床だから足音とか気になるんだよね』

『さすが高いだけはある』


 私の席は前の方だね。窓際の席に座ってみると、なんだかとても座り心地がいい。ソファみたいにふかふかっていうわけじゃないけど、体がとても楽な気がする。

 あと、足下にある足を置くためのものも、最初は意味あるのかなと思ったけど、乗せてみるとちょっと快適。


「ん……。いいと思う」


『わりと高評価?』

『二時間強の電車旅、のんびり楽しんでくれ』


「ん」


 そろそろ出発かな? 楽しみ。

 ちょっとわくわくしながら待っていたら、アナウンスの後に電車がゆっくり動き始めた。最初はゆっくり、そしてだんだん速く。あれ、でも、思ったほどじゃない?


『あー。最初の品川はすぐそこの駅だから』

『新横浜もわりと近め』

『新横浜の次は名古屋駅、一時間以上時間があるぞ!』

『お前らなんでそんなに詳しいんだよwww』


 ゆっくりできるのはもうちょっと後、だね。スピードもその時に期待かな?

 とりあえず、最初に時間があるみたい。じゃあ、ごはん食べよう。

 テーブルは……、おお、すごい。前の椅子にくっついてる。テーブルを下ろすと、前後にスライドもできる。とっても便利。


『ちなみに、椅子も暖かくなるよ』

『椅子の横のスイッチでどうぞ』


 言われた通りにスイッチを押してみる。んー……。あ、ちょっと暖かくなってきた。気持ちいい。


「この椅子持って帰りたい」


『やめなさいwww』

『そもそもとして電気がないとほとんど意味ないぞw』

『ていうかリタちゃんなら魔法でもっといろいろできるだろうにw』


 それはそうだけどね。

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