鮭茶漬け
お船を下りた日の翌日の朝。真美のお家に行くと、いつも通り真美が出迎えてくれた。今日の朝ご飯はお茶漬け。お魚が入ったお茶漬けだ。鮭茶漬けだって。
「すぐに準備するから待っててね」
「ん」
待ってる間は何しようかな、と思ってたら、ちいちゃんが私の方に歩いてきた。隣に座ってきたからとりあえず撫でてあげる。なでなで。
「えへー」
うん。かわいい。
ああ、そうだ。配信、忘れてた。
「これでよし」
『これでよし、じゃないが』
『いつも通り唐突に始まる朝の配信、そしてやっぱり挨拶なし』
『リタちゃんたまには挨拶しよ?』
たまにはやってると思う。
「リタちゃんお待たせ。はい、鮭茶漬け!」
「ん……」
私の目の前に置かれたのは、お椀に入ったご飯。お湯……お茶かな? それに浸かってる。魚をほぐしたものもたくさん入っていて、美味しそう。
『ほう。お茶漬けか』
『それも鮭茶漬け。鮭茶漬けいいよね、とても美味しい』
『俺は梅茶漬けが好き』
なんだかたくさん種類があるみたいだね。他のも試してみたい。
「私はお茶漬けが初めてだけど」
『え』
『あれ? そうだっけ?』
真美も目を丸くしてる。知らなかったらしい。
「ん。おにぎりは何度もあるけど、お茶漬けは初めて」
「そうだっけ……。ごめんね、リタちゃん。もっと早く出すべきだったね」
「んー……? 別にいい。真美の料理はなんでも好き」
「そ、そう? えへへ……」
『てえてえ?』
『真美ちゃんがめちゃくちゃ照れてるのは声で分かる』
『でも真美ちゃんのごはんはマジでいつも美味しそうだよな』
『料理ができる彼女が欲しいです……』
ん。真美のご飯はいつも美味しい。
ご飯を軽くかき混ぜて、少しすする。ちょっと熱いけど、食べられないほどじゃない。ずるずるとすすって、ご飯も食べる。
ご飯がお茶で少し柔らかくなってるけど、逆にそれがとても食べやすい。ご飯はちょっと淡泊な味のはずなのに、お茶があるだけで全然違う味になってる。
あと、お魚。お茶とご飯だけでも美味しいけど、お魚と一緒に食べるとまたちょっと違う味だ。お魚のほのかな塩味がほどよく味を変えてくれてる。
「どうかな?」
「もぐもぐ」
「あはは。気に入ってもらえたみたいでよかった」
『一心不乱に食べてるw』
『お茶漬けの魔力だよね……。一杯ぐらいならわりとあっさり食べられる』
『分かる。時間があれば二杯目も食べる時がある』
『何よりも食べやすいのがいい』
ん……。とても食べやすい。味も濃いわけじゃないから、飽きもなかなか来ないと思う。
それに、お茶漬けは他にもいろいろ種類があるみたい。コメントを見てると、鮭や梅の他にも、のり、昆布、たらこ……。なんだかたくさんある。
「真美。真美。次は他のも食べたい」
「ふふ。いいよ。用意しておくね」
そう言って頭を撫でられた。ちょっとだけ恥ずかしいけど、お茶漬け楽しみ。梅も気になるけど、昆布もいいかも。のりも。とても、とても、楽しみだね。
朝ご飯の後は、真美たちは学校の時間。そう思ってたんだけど、その前に真美からお話があるらしい。何だろう?
「リタちゃん。ちょっと前に話したこと、覚えてる?」
「いっぱい話してる」
「だよね」
『リタちゃんが地球側で一番話す相手だからなw』
『でもリタちゃんならマジで会話全部覚えてそう』
それはもちろん覚えてるけど。でも、うん。真美が言いたいことはそういうことじゃないよね。んー……。
「学校?」
「そうそれ!」
『学校? 何の話?』
『真美ちゃんが通う学校に体験入学するって話があったはず』
『あったなあそんな話もw』
学校の先生と相談して、みたいな話だったはず。いつ行くか決まったってことかな?
「ちょっと急かもしれないけど、三日後、次の土曜日でどうかな? 午後からになるけど」
「いいよ」
私は予定なんて特にないからいつでも大丈夫。五日後に闘技場に行くかどうか、ぐらい。だから三日後なら平気。
むしろ間にまだ日があるから、どこかに食べに行こうかな。
「うん。それじゃ、土曜日のお昼はここで待っててね」
「ん」
「それじゃ、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
話が終わると、真美はちいちゃんを連れて大急ぎで家を出て行った。わりとぎりぎりの時間だったのかも。夜に話してくれてもよかったと思うんだけどね。
さて。
「どこかに何かを食べに行こう」
『つまり日本のどこかってことですね!』
『ヒャッハー! 久しぶりの日本海だー!』
『海に行くのか』
『誤字に突っ込むなクソ野郎』
どこかに行くことは決めてるけど、どこに行くかはまだ決めてない。どこにしようかな。最近はずっとお魚を食べてたから、お肉が食べたい。
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