スープカレー
「ごちそうさま。美味しかった」
「うん。喜んでもらえてよかった。リタちゃん、この後はどうするの?」
「んー……」
今の時間は、三時頃。夕方って言えばいいのかな? これ以上食べると、晩ご飯になっちゃいそう。もちろん私はいくらでも食べられるけど、晩ご飯は真美のお家がいい。
だから、そろそろ帰ろう。あとは真美のお家で待てばいい。
「そろそろ帰る」
「そう? じゃあ、お土産もいるよね?」
「おみやげ!」
欲しい。是非欲しい。いくらとか、買えるなら買いたい。精霊様にも食べてほしいし、真美たちにもお土産になるから。
「ちょっと待っててね」
香織さんはそう言うと、奥の方へと行ってしまった。厨房っていうところだと思う。何か作ってくれるのかな。それはそれで、楽しみ。
「そっか、リタちゃんもう帰っちゃうんだ」
「残念ねえ」
「次は雪が積もってから来てね。スキーとか楽しいわよ」
スキー。テレビで見た覚えがある。細長い板を足に取り付けて、山から滑るスポーツだよね。やってみたいけど、冬のスポーツらしいからもうちょっと我慢だね。
女の人たちとそんな会話をしていたら、香織さんが戻ってきた。小さなお鍋を持ってる。湯気が立っていて、ここまで香りが届いてきた。これは、カレーかな?
「カレー? カレーライス?」
「ごめんね、カレーライスとはまたちょっと違うかな。真美ちゃんなら分かると思うから、聞いてみてね」
「ん」
ちょっと違うっていうことは、カレーに近いものなのは間違いないみたい。渡されたお鍋の中を見てみたら、やっぱりカレーに見える。あ、でも、とろみが少ないような気もする。
「むむ……」
「量はあるから、真美ちゃんたちと食べてね?」
「ん」
すごく気になるけど、せっかくこう言ってくれてるんだし、我慢しよう。早く食べたいけど。
『カレーの香りに反応してわくわくするリタちゃん』
『見た目相応の反応でかわいかったです』
『あああリタちゃんかわええんやああばくってしてほしいよおおお!』
『いかん! 錯乱兵だ! 衛生兵! 衛生兵!』
『ばくっとされるなら消えるから大丈夫』
『大丈夫とは』
お鍋にフタをしてもらって、アイテムボックスへ。カレー、楽しみ。あとはいくらも少しもらってしまった。これもみんなで食べたい。
「それじゃ、リタちゃん。来てくれてありがとう」
「こちらこそ、お料理、とても美味しかった」
「いえいえ。最後に写真お願いしても?」
「ん」
最後の写真はなんだか恒例になってる気がする。私はもちろん問題ないんだけど。
香織さんとそのお友達さんたちと一緒に写真を撮って、私は真美のお家に転移した。
真美のお家でのんびり待つ。
「不思議カレー、とても楽しみ」
『不思議カレーwww』
『リタちゃん、真美ちゃんにいつでもカレー作ってもらえるのに、それでも嬉しもんなん?』
「ん。真美のカレーが一番好きだけど、でも他のカレーも食べてみたい」
『なるほどw』
今のところ、真美のカツカレー以上はなかったかな。私の好みに一番近いものを作ってくれてる気がする。
あ、でも、チーズカツカレーも美味しかった。そっちもまた食べたい。
今まで食べたカレーを思い出してると、真美が帰ってきた。ちいちゃんも一緒で、真っ先にちいちゃんが入ってくる。元気そうだ。
「おかえり、ちいちゃん。お土産」
テーブルにお馬さんのぬいぐるみを並べてみる。真美とちいちゃんで一個ずつだ。デフォルメされたかわいい馬のぬいぐるみ。ちいちゃんは早速ぬいぐるみを抱きしめて、もふもふし始めた。
「わあ……。すごくふわふわ! ありがとう!」
「ん。真美も」
「うん。ありがとう、リタちゃん。わ……。すごくもふもふだ……」
真美も気に入ってくれたみたい。ぬいぐるみを抱きしめて、嬉しそうにしてる。買ってきてよかった。
「それより、リタちゃん。あれ、食べるんでしょ?」
「ん」
真美はぬいぐるみを棚の上に飾ると、私がアイテムボックスから出したお鍋を確認してくれた。お玉で軽くかき混ぜて、なるほどと頷いてる。
「これ、スープカレーだね」
「すーぷかれー」
「そう。スープ状のカレー。さらさらしていて粘り気はほとんどないかな。早速食べよう」
『なるほど、確かに北海道と言えばスープカレーも定番だな』
『お師匠さんのカレーに似てるかも?』
そうなんだ。それならちょっと楽しみ。
時間は少し早いけど、真美は早速晩ご飯を作ってくれた。スープカレーがあるから白米とサラダととてもシンプル。もうちょっとおかずが欲しいかも、なんて思ったけど、最後に出してくれたスープカレーにはごろごろとたくさんの具材が入っていた。
お魚とか、貝とか、そんなのがたくさん。魚介系ってやつだね。それがたっぷり入ってる。
『なにこれめっちゃ美味そう』
『さすがはプロの料理やで』
『プロ (カフェ)』
『やめたれwww』
スプーンでスープカレーをすくってみる。おお……。本当に普通のカレーと全然違う。これは確かにスープだ。あと、視聴者さんが言ってたように、師匠のカレーに似てる気がする。
「もしかして師匠、スープカレーを作ろうとしたのかな」
『それはあり得そう』
『とりあえず食べてみたら?』
それもそうだね。それじゃ、いただきます。
「んー……。とりあえず、これだけ」
『お?』
『わくわく』
「やっぱり師匠はただ失敗しただけだと思う」
『ちょwww』
『やっぱりかーw』
そもそもとして、師匠はカレーライスって明言してたしね。味もこっちの方が美味しい。
カレーライスと違って、さらさらしてる。でもしっかりとスパイスを感じられて、刺激と辛みがある。味はカレーにとても近い。
ご飯にかけて食べるのには向かないけど、でもこれはこれで美味しい。大ぶりな魚介もいい味になってる。カレー味のお魚や貝になってるけど、それはそれでいい。
「スプーンで先にご飯を取って、スープカレーにひたすと食べやすいと思うよ」
「ん」
真美のアドバイスに従って、スプーンでご飯をとって、スープカレーにひたす。ぱくりと一口。
おー……。さらさらのカレーライス。しっかりとカレーの味を感じられて、でもカレーライスとは全然違う食感。美味。
『最後はスープカレーを直接かけておじや風とか』
『わかる』
なるほど。スープカレーをお椀に注いで、ちょっとまぜて……。食べてみると、スープカレーの味がとても強くなったけど、ご飯としっかりとまざって、食感が変わった。これもいいね。
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