最北端と白い道
最北端の目印はこれ、だね。何の形かは分からないけど、しっかりと日本最北端の地って書いてる。分かりやすい。
海もとっても近い。視界いっぱいの海。どこかに美味しいお魚も泳いでるかも。いや、さすがに直接捕まえようとは思わないけど。
「何か、他にも像がある。あれ、なに?」
『知らぬ』
『間宮林蔵の立像、だったかな』
『昔のすごい人』
「ふうん……」
お侍さんみたいな服装、だと思う。真美のお家で見た時代劇っていうのに似た服装。だから本当に昔の人なんだね。
他は、特に何もないかな? それじゃ、いくらに……。
『リタちゃん待って!』
「ん?」
転移しようと思ったら、呼び止めるコメントが目に入った。なんだろう?
『白い道を是非とも見てほしい! 神秘的で、景色も綺麗!』
『白い道ってなんぞや』
『調べろカス』
『ひでえw』
白い道。なんだろうね。そのまま、白い道、なのかな? でも日本の道って、あすふぁると? こんくりいと? そういうので舗装されてるのが一般的なはず。舗装してない場合は土の道かな? 白くはならないと思うけど。
「年中雪が積もってる、とか?」
『違うぞ』
『是非ともリタちゃんの目で確かめてほしい!』
『ぶっちゃけホタテの貝殻を砕いた道だ』
『おいwww』
一瞬でネタばらしされちゃったね。でも、気にはなる。せっかくだから行ってみよう。
スマホを検索して、場所を調べてみる。んー……。わりと近いかな? でも一応、少し上空に転移しよう。
さっと転移して、周囲を確認。地面を見ると、草原、かな? その中に長い白い道があった。あそこみたい。
『ちなみに白い道の側は牧草地で私有地です。入ったらだめだよ』
『上空なら文句は言われない、はず……。多分……』
「ん」
怒られちゃったら謝ってその場で転移しよう。
改めて、白い道の端っこへ。何か看板とかあるのかなと思ったけど、道の途中から唐突に白くなってる。ちょっとおもしろい。
観光客さんが車で通ることもあるらしいから、私は少し上空をのんびりと進んでいこう。
「すごい。本当に道が真っ白。景色もいい」
日本なのに、電柱も電線も見当たらない。横を見ると、とっても広い牧草地。入ったらだめなのは残念だけど、こうして見てるだけでもなんだか楽しい。
『ちなみに後ろを振り返ると風車がいっぱい見えるぞ』
「ん?」
後ろ。振り返ると、なるほど、近くではないけど、たくさんの風車が見えた。たくさんあって、これもまたすごい景色だ。私の世界でも見たことがない。風車なら、探せばあるのかもしれないけど。
とりあえず、進んでいこう。本当に、飛んでいてとても気持ちがいい。
「風が気持ちいい」
『ほほう』
『さすがに上空は分からないからなあw』
「ん。それもそうだね」
私みたいに身一つで気軽に飛べたりはできないだろうから。
のんびり進むと、海も見えるようになった。天気もいいから海も綺麗。牧草地も本音を言えば気になるけど、入っちゃだめなら我慢だね。
そうしてしばらく進んでいくと、道の側に小さな椅子があった。看板もある。よっこらしょ、だって。
その小さな椅子に女の子が座ってた。六歳ぐらい、かな? 赤いスカートの女の子だ。女の子は空を飛ぶ私に気が付くと、目を丸くしていた。
「迷子、だったりする?」
『さすがにこんな場所で迷子はないだろうけど……』
『地元の子かな?』
んー……。送ってあげた方がいいかな? ちょっと悩んでいたら、女の子の方から声をかけてくれた。
「リタちゃん!」
「ん」
『おお、しっかり覚えられてる』
『リタちゃんも有名になったなあw』
やめてほしい。
「君、ここの子?」
「りょこう!」
「旅行……。家族は?」
「わかんない!」
なるほど。
「迷子だね」
『迷子だな』
『なあんで白い道に入っちゃったかなあ……』
子供の好奇心はとてもすごいらしいからね。
さすがに放っておくわけにもいかないから、女の子を連れていくことにする。白い道の出口に交番みたいなものがあるらしいから、そこで保護してもらおう。
女の子を魔法で浮かしてあげると、嬉しそうにはしゃぎ始めた。かわいいけど、少しは反省してほしい。家族が怒ってくれるだろうけど。
『かわええなあ』
『まあこの後に怒られて大泣きするでしょうけどね』
『言ってやるなw』
怒られるのは仕方ないよ。悪いことをしたら怒られるものだ。私だって、師匠に怒られたことが何度もあるし。それに、怒られるってことは、心配してくれてるってことだから。
「リタちゃん、けしききれー!」
「綺麗だね」
ふわふわ跳びながら進んで、景色も楽しむ。女の子もいるから、さっきよりも賑やかだ。これはこれで、楽しいかもしれない。
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