味噌ラーメン

 なんだかざわざわしてる人たちは放っておいて、私はラーメンを食べる。おはしを持って、ラーメンをすする。ずるずるっと。ラーメンはこのすするのが好き。


『いいなあいいなあ!』

『人がラーメンを食べてると自分も食べたくなるのはなんでだろうな』

『わかるw』


 んー……。少し細めのもっちりとした麺だね。でも柔らかすぎず、ほどよい食感だ。細い麺に少しこってりとしたスープがしっかりと絡んでいて、とても美味しい。

 スープはちょっと濃いめの味つけだね。ごはんと一緒に食べても美味しいと思う。

 あと、チャーシュー。とっても柔らかい。チャーシューの味も濃いめだけど、スープとケンカしちゃうこともなくて、うまく合わさってる。


「ほら、サービスだ」


 もぐもぐと食べ進めていたら、店主さんが白いご飯を渡してくれた。ちょっと多めのご飯。食べていいのかな?


「そっちのやつらから君はたくさん食べる方だって聞いてな。ラーメンだけじゃ足りないだろ?」

「ん……」


 正直に言うと、全然足りない。ご飯はとても嬉しい。団体客さんの方を見ると、みんなが笑顔で手を振っていた。とりあえず振り返しておいた。


「かわいい!」

「私に振り返してくれた!」

「ばっか、俺だよ!」


 やらない方が良かったかな?


『普通に羨ましいんですが』

『今なら嫉妬で人を燃やせそう』


 視聴者さんは物騒だよ。

 ラーメンにご飯なら、私はこれをやりたい。嫌いな人もいるらしいけど……。ラーメンを食べ終えたスープにご飯を投入。ちょっとだけ混ぜて、食べる。


「んふー……」


『すっげえうまそう』

『あのご飯になりたいだけの人生だった……』

『お前の人生おかしいよ』


 濃いめの味噌のスープがご飯によく合う。少しこってりしたスープだから、ご飯にもよく絡んでとっても美味しい。


「どうだ?」

「とても美味しい」

「おう。だろ?」


 私が心からそう言うと、店主さんは嬉しそうに笑った。


「ねえねえリタちゃん」


 食べ終えて手を合わせたところで、スーツの人が声をかけてきた。なんだろう?


「ん?」

「配信見てたけど、次は何を食べに行くの?」

「んー……」


 何にしようかな。北海道は美味しいものが多いらしいから、他のもたくさん食べてみたい。今日は時間もあることだし。


「いくら、かな……?」


 お寿司でも見たことある。ちょっと赤っぽくてつぶつぶのやつだよね。たくさん食べられるなら、食べたい。


「いくらか。それなら俺の妹が店を出してるぞ」


 そう言ってくれたのは、店主さん。店の奥から一枚、チラシを持ってきてくれた。どこかのお店のチラシだね。住所と、どんなお店かが書いてある。海鮮とか新鮮なお野菜とか、そういったものを使った料理を出してるみたい。


「あの子のお店かあ。あの子の丼、美味かったなあ」

「目利きがいいんだろうね、あれは」


 集団客さんの人たちは知ってるみたい。美味しいらしいから、ここに行ってみようかな。場所はどこだろう?


「えっと……。ちない市?」


『あー……w』

『いや、うん。大丈夫だリタちゃん。知らなかったら読めなくて当たり前だから』


 違うってことだね。こっちを見てた集団客さんたちもなんだか苦笑いだ。


『わっかない、な。わっかないし』

『ちな日本最北端だぞ!』

『ついにリタちゃんも最北端に行くのか』

『実際の最北端は実はその側にある弁天島だったりするけどな』

『マジで!?』


 最北端だって。コメントを見てみると、最北端だって分かるような目印もあるみたい。じゃあ、食べに行くついでにそれも見に行こう。何かあるかは分からないけど。


「じゃあ、そこに行く」

「ああ。妹にも連絡しておく」

「ん」


 いくら、楽しみだね。

 お会計をしてから立ち上がったところで、集団客さんに頼まれて記念撮影をすることになった。いつものことだね。お店の前の道はあまり広くないから、店内で。端っこに立って、私と店主さんが中央、集団客さんたちはその周り。

 なかなかいい写真になったと思う。寡黙な人だと思ってた店主さんがわりと恥ずかしがっていたのは驚いたけど。


『俺もリタちゃんと記念撮影したい』

『リタちゃんが行く店に立ち会える確率ってどんなもんだろうな……』

『文字通りの奇跡だと思うよ』


 そんなに撮りたいものなのかな。


「それじゃ、ごちそうさまでした」

「ああ。気をつけてな」

「リタちゃんまたねー!」


 店主さんたちに手を振って、私はその場から転移した。




 転移先は地図で調べた場所。とりあえず見ておこうかなと思った場所、日本の最北端。実際は無人島らしいけど、目印があるのはここらしい。

 その目印の前に直接転移したからか、周囲の人がびっくりしたみたいで私を凝視してた。


「え、あれって……」

「急に出てきた……。転移ってやつ?」

「じゃあ本物のリタちゃん!?」

「写真撮ってもいいかな……!?」


 写真。とりあえず手を振っておこう。するとその人はぽかんとした後、慌てたようにスマホで写真を撮ってた。これでいいかな?


『俺、昨日ここに観光に行ったんだけど。一日ずらせばよかったと後悔してる』

『明日行くやつもここにいるぜ泣きたい』

『奇遇だな! 俺は今日だ!』

『あああクソがああ!』

『殺意がわいた』


『最北端につくのは一時間後ぐらいだけどな』

『あ、うん……。なんか、ごめん……』

『ある意味一番哀れだ……』


 コメントもたくさん流れてる。楽しそうだね。

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