次の行き先
それじゃ、改めて。手を前に出して、コメントがしっかり減ったのを確認して……。
ぱん。
『那覇!』『三重』『沖ノ島!』『札幌』『オーストラリア』『琵琶湖』『台湾!』『ちゃんぽん!』『みかん』
『鹿!』
『東京!』『桜島!』『日本橋とかどうっすか』『サトウキビ』『砂丘いいよ砂丘』
『そろそろええかな?』
『今回はどこだ』
「んー……。鹿。鹿……?」
鹿。鹿って確か、動物、だよね……?
『鹿? ……鹿!?』
『鹿www』
『ついに料理名ですらなくなったぞw』
『てかログ見てみたら海外出してるやつもいるし無人島もあるし』
『今回わりとやばかったなw』
ちゃんとルールは守ってほしい。それはそれとして、鹿。鹿、だね。うん。
「真美。真美。鹿と言えば?」
「奈良かな」
「ん。じゃあ、奈良で」
『まあそりゃそうなるわな』
『鹿肉とかもあるにはあるけど、この場合はやっぱ奈良かな』
テレビで見たことがあるから鹿は分かるけど、あの動物、食べられるんだね。今回も鹿肉ってことだったりするのかな?
「奈良は鹿が街の中を歩いてたりで有名だね。鹿せんべいを食べさせたりとか触れ合えたりとかできるよ。食べちゃだめだからね?」
「そうなの?」
「そうなの。天然記念物だから」
真美が言うには、鹿肉を食べられるお店もあるらしいけど、少なくとも街で見られる鹿は捕まえたらダメらしい。そういうことなら仕方ない。鹿肉はまた別の機会にしよう。
「それじゃ、奈良で何を食べたらいいの?」
『奈良と言えば柿の葉寿司では?』
『奈良はそうめんの発祥の地』
『いやいやせっかく奈良なんだし、鹿にちなんだお菓子とか』
んー……。結構多くありそう? でも、お寿司が気になる。お寿司、美味しいよね。柿の葉寿司というのを食べに行ってみよう。時間があれば、そうめんも。
「奈良に行ってくる」
「うん。私たちは学校に行くから。夜までに戻らないといけないんだよね? 早めに晩ご飯にするようにするね」
「ん。とても楽しみ」
「が、がんばるよ……」
とても、とっても楽しみだ。
『これプレッシャーやばいだろうなあw』
『いつものことではあるけどw』
『がんばれ真美ちゃん、応援だけはする!』
「あはは……。がんばってみるよ」
プレッシャー、なのかな? 私だって口に合わないことぐらいあるだろうから、あまり気にしないでほしい。
とりあえず。改めて、奈良に行こう。せっかくなら鹿も触ってみたい。まずは転移先だね。スマホで地図を開いて……。ん……?
「橋本さんからメールが来てる」
「え」
「会いに来てほしい、だって。んー……。お昼過ぎぐらいで」
メールを送ってから、改めて地図だ。目安として分かりやすいのは、大仏、というものかな? 大きな建物みたいだけど、その上空ぐらいなら迷惑にならないかも。
「決めた。それじゃ、行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい」
「いてらさーい!」
トーストをかりかりかじってるちいちゃんにも手を振ってから、転移した。
転移先は、決めていた通りに大きな建物の上空。本当に大きな建物だ。ビルみたいにすごく高いわけじゃないけど、とっても広く造られてるみたい。
『どこかと思ったら、ここか!』
『奈良と言えばやっぱここだよな』
『修学旅行で来たことある』
やっぱり有名な場所みたい。せっかくだから、見ていこうかな。人がすごく多いけど、今更だしね。入り口は、あそこ、かな?
私が向かった先は、とっても大きな門。木で造られてるみたいで、高いところに看板みたいなものがあった。ちょっと読めないけど。
「大きな門だね」
『東大寺の南大門やな』
『それはそうと、めちゃくちゃ注目されてるんだけどw』
『観光地だしなあw』
私がここに下りた時から、周囲が騒がしい。みんな足を止めて、私のことを話してるみたい。いつものことだね。でも、ちょっと違うところがあって、私が分からない言葉もあること。
そっちを見てみると、真美たちとは違った顔立ちの人が多かった。外国人、かな? 言葉が分からないし、早めに移動を……。
「ヘイ!」
「あ……」
移動しようと思ったら、その集団の一人がこちらに走ってきた。金髪の男の人だ。どうしよう、会話はまず無理だと思うけど……。
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