どら焼きとお煎餅
朝。私はいつもの自室で目を覚ました。森の自分のお家だ。お屋敷のベッドも気持ちよさそうだけど、やっぱり慣れてるここがいい。
まだ日の出すぐだから、森は薄暗い。とりあえず外に出て、配信を開始して、と。
「お菓子が欲しい」
『開幕第一声がそれかw』
『いつでも準備はできてるぜ!』
『選ばれたら嬉しい』
すごいね。もう用意してくれてるみたい。早朝で配信開始すぐだから、いつも待ってくれてるのかも。何を置いてくれてるのかちょっと気になるけど、どれを回収するかはランダムに選ばれるからね。期待はしないし、しないでほしい。
とりあえず魔法陣に魔力を流して、お菓子を回収。まだ早い時間なのにたくさんだ。
「あ、どら焼きがある。どら焼き好き」
『リタちゃん嫌いなお菓子ってあったっけ?』
『食べる前はいつもこれが好きって言ってるような』
『それを食べたい気分ってことだろ言ってやるなよ』
恥ずかしくなるから余計なことは言わないでほしい。
個包装のどら焼きを取って、ぱくりと一口。少し甘めの生地の中には、たっぷりの粒あん。とても甘いけど、そんなにしつこくない甘さだ。自然の甘みって言うのかな。そんな感じ。
あんこの食感も好き。粒あんとこしあんがあるけど、私は両方とも好きだ。粒あんはあのつぶつぶの食感がほどよいアクセントになってると思うし、こしあんはなめらかで食べやすい。
「うまし」
『うまし』
『ちなみにリタちゃんは粒あん派? こしあん派?』
『おいばかやめろ』
『お前それは戦争だろうが!』
たまに聞かれるけど、そんなに気になることなのかな。
「私はどっちも好き。その、なんとか派っていうのが、よく分からない。どっちも美味しいでいいと思うんだけど」
『ぐわあああ!』
『リタちゃんの純粋な瞳が、汚れた俺たちを焼き尽くす……!』
『ちゃうねん、言い負かしたいわけじゃないねん、自分が好きなものを認めてほしいだけやねん!』
「ふーん」
『興味なしw』
興味ないからね。さっきも言った通り、どっちも美味しい、で十分だよ。
もう一個食べたい。お煎餅にしよう。醤油味、かな? 茶色っぽくて、とても美味しそう。包装を破って、ぱくりと。
んー……。このざくざくとした食感もいいよね。少し濃いめのお醤油の味が口の中に広がっていく。ざくざくと噛むたびに味が広がって、とても楽しい。
「このお煎餅、美味しい」
『さすがリタちゃんお目が高い! それは俺の地元にある老舗の和菓子屋さんのお煎餅なんだ! ちょっと高いけど、すごく美味しいって評判なんだぜ!』
『説明が長いw』
『ちょっとは自重しろw』
そんなに高いお菓子を送らなくてもいいんだけどね。選ばれるかも分からないのに、もったいない。
「お返しできないし、高いお菓子じゃなくていいよ?」
『むしろこの配信のお返しです』
『むしろ投げ菓子じゃなくて投げ銭させてほしい』
『上限投げる自信がある』
投げ銭って、なんだっけ。えっと……。お金を送るシステムだよね。確かに以前は地球に行く予定がなかったけど、今なら使い道があるから投げ銭でもいいのかもしれない。
でも、お守りの依頼もあるからお金に困ってるわけでもない。むしろ、みんなが選んだお菓子を食べたいかな。
「投げ銭はしないよ。お菓子がいい」
『そっかー』
『投げ菓子こそこの配信、というかリタちゃんらしいよね』
『リタちゃんと言えばお菓子!』
それはそれでどうかなとちょっと思う。
お菓子を食べ終えたところで、移動だ。そろそろメイドさんが部屋に来るかもだから、一度戻らないとね。その後は、夕方まで出かけるって伝えよう。
屋敷の部屋に転移して、少し待つ。ベッドはとてもふかふかだ。ふかふかすぎて、寝心地はちょっと悪そう。楽しそうではあるんだけど。
ベッドに座ってのんびりしていたら、ノックの音が聞こえてきた。
「魔女様。朝食のご用意ができました」
「ん。すぐ行く」
『朝食さっき食べてなかったっけ?w』
『お菓子食べてた気がするんですがそれは』
朝ご飯の前のおやつだよ。そういうことにしておいてほしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます