浜松に行こう
ふとちいちゃんを見下ろすと、なんだか微妙な顔になっていた。視線はテレビのウナギに向いてる。
「ちいちゃんは、ウナギが嫌い?」
「きらい!」
そうなんだ。真美はどうなんだろう? 見てみると、真美は苦笑いしながら答えてくれた。
「私は好きだよ。蒸したウナギしか食べたことがないけど。リタちゃんも大丈夫じゃないかな」
「そう?」
「多分だけどね。どうせだから焼きと蒸し、両方食べてみたら?」
それもそうだね。それじゃあ、今日のお昼ご飯はウナギにしよう。どんな味か楽しみだ。
「ウナギを食べに行く。どこがいいかな?」
『生産量で言えば鹿児島県、次に愛知県だけど』
『三位が宮崎県だったはず』
『なんで詳しいやつが多いんだよw』
『自分の県に来てほしいんだろ察してやれ』
鹿児島県が一番多いんだね。それじゃ、鹿児島県にしようかな。早く決めてお店を探さないといけないし。
そう言おうとしたところで、真美が言った。
「ちなみに発祥の地で有名なのは静岡県だよ」
「ん……」
『ぎゃー! 予想外の伏兵が!』
『真美ちゃんが言ったら決定しちゃうじゃないですかやだー!』
『静岡県民のワイ、高みの見物』
いや、別に真美が言ったからそこにする、とかはないんだけど……。でも、発祥の地って聞くと、ちょっと気になる。やっぱりそこがいいのかなって。
んー……。よし。決めた。
「静岡県で」
『いよっしゃあああ!』
『ちくしょうめえええ!』
『いろんな意味で阿鼻叫喚で草』
でも鹿児島県も気になるから、いずれ行ってみたいね。
とりあえず今日は静岡県だ。ウナギはどこに行けばいいのかな。
「静岡県でウナギ。どこがいいかな?」
『浜松じゃね?』
『浜松だと思う』
『食べようと思えばどこでも食べられるけど、発祥の地は浜松』
浜松、だね。スマホで地図を開いて……。どこに行こうかな。浜松もすごく広そうだけど。ウナギに関係するなら、えっと……。浜名湖、かな?
「浜名湖に行ってみる」
『よっしゃ近場だ!』
『浜名湖なら展望台とか遊覧船もあるよ』
『お店はどこがいいかな……』
どんな場所かな。ウナギは美味しいのかな。楽しみ。
「じゃあ、行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい、リタちゃん。気をつけてね」
「ん……。行ってきます」
ちいちゃんにちょっと離れてもらってから、二人に手を振って転移した。
転移した先は、浜名湖という大きな湖の上空。ちょっと高い場所から見下ろしてるんだけど、なんというか、すごく不思議な形の湖だ。大きな動物の足跡みたい。
「大きい湖だね」
『日本だと五番目に広い湖、のはず』
『改めて見るとなんだこの複雑な形』
『ちなみに海と繋がってる湖でもある』
湖なのに? そう思ってよく見てみたら、確かに端っこの方で海と繋がってるみたいだった。本当になんだか不思議な湖だ。見ていてちょっと面白いかも。
「ん……。とりあえず、展望台に行ってみる」
『あいあい』
『展望台か……。今から行っても間に合いそうにないなあ』
『そこは素直に諦めろ、リタちゃんはすぐに移動するぞ』
どうせなら、ちょっとだけ見て回りたいからね。でもまずは展望台だ。
ゆっくり下りながら探してみたら、それらしい建物があった。ちょっとしたビルぐらいの大きさで、最上階が広い部屋になってるみたい。部屋の中から周辺を見渡せるようになってるね。中にはすでに人がいて、景色を楽しんでる。
ここに入ればいいかな。それじゃあ、転移、と。
「あ……!」
「リタちゃんだ!」
「浜名湖に来てる!」
周りからの視線と声を無視して、ここからの景色を見てみる。
んー……。浜名湖の景色というより、その側の公園を見るためのものかもしれない。もちろん浜名湖も見えるけど、地上の公園もすごく綺麗。お花がたくさん植えられてる。
『ええ景色やん』
『湖も綺麗だし地上も綺麗』
『いいなここ。次の休みに行ってみようかな』
いいと思う。のんびり見てるだけでも悪くないと思うから。
「遊覧船、だっけ。お船? 乗ってみたい」
『そういえばリタちゃん、お船は初めてか』
『心桜島に入り浸ってるはずなのになw』
『どこから乗れたっけ?』
適当に探してみればいいかな? 夕方までは暇だから、急ぐこともないし。
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