お昼ご飯を考えよう


 翌日以降も一日につき一つの街を訪ねて、そのたびにギルドに寄って依頼を受けた。魔獣の討伐依頼とかも受けたけど、特に問題もなく終わらせられてる。

 そして、王都に行く日。


『リタちゃんおはよう銭湯行かない?』


「ん?」


 街を出たところで突然真美から連絡が来た。今はまだ配信前で、スマホのメール、だっけ。それで真美から送られてきてる。

 銭湯って大きいお風呂だったよね。急にどうしたのかな。


『銭湯って、なんで?』


 そう送ると、すぐに返事がきた。


『理由は特にないけど、だめ?』

『いく』

『やった! 夕方に行こう! お昼ご飯はどうしよう?』

『晩ご飯は?』

『作ってあげる』

『じゃあ、日本のどこかに行ってくる』

『あはは。気をつけてね』

『うん』


 メールのやり取りを終えて、スマホをアイテムボックスへ。そういうわけで、王都は延期だ。大きいお風呂の方が楽しそうだから。

 でもそれは今日の夕方。まずはお昼ご飯を考えないといけない。というわけで。


「お昼ご飯を食べに行く」


『配信開始直後にいきなり何言ってるんですかねこの子は』

『あれ? 今日は王都では? すごく楽しみにしてたんだけど』

『延期?』


「ん。夕方に銭湯に行く。王都は明日。お昼ご飯は未定」


『なるほど把握』

『多分真美ちゃんやな』

『お昼ご飯の候補を聞きたいってことやな!』


 すごいね。まだそこまで言ったつもりがないのに、伝わってしまった。でもつまりはそういうことだ。お昼ご飯は日本で食べるけど、今はまだ未定。何か美味しいものはないかな。


『それならリタちゃん、適当に日本でテレビをかけて、放送してるものを食べに行けば?』

『それいいかも。今の時間ならどこかの局は食べ物に触れてるだろ』

『テレビなら美味しそうに映してくれるしな』


 テレビ、だね。確かにテレビのニュース、だっけ。それで放送される料理はどれも美味しそうだ。見るたびに食べに行きたくなるほどに。

 テレビはいいかもしれない。早速見にいこう。

 誰にも見られていないことを確認して、日本に転移。転移した先は、いつもの真美の家。真美とちいちゃんはトーストをかじってるところだった。


「あ、リタちゃんおはよう。トースト食べる?」

「食べる」


『すげえ、動じることなく会話してるw』

『変な慣れ方してるなあw』

『真美ちゃんにとっては日常の一つなんやなって』


 そう、なのかな? 確かに何度も朝にお邪魔してるけど。

 真美に用意してもらったトーストにバターをたっぷりとぬって、食べる。焼きたてだからかとっても美味しい。さくさくしてる。少しずつ溶けていくバターも美味しい。


「ん……」

「はいリタちゃん、お水置いておくね」

「ん」


 コップから水を飲んで、一息。とっても贅沢な朝ご飯だ。


「んふー」


『ただのトーストなのにすごく美味しそうに食べるなあ』

『安上がりな子だね!』

『その言い方はかわいそうだよ、事実だけど』


 日本ではトーストは安く食べられるらしい。あっちは、あるのかな? 確かパンがあるらしいから、トーストもあるかもしれないけど。でも日本みたいにバターやジャムを贅沢に使おうと思ったら高くなるかも。

 トーストをかじっていると、先に食べ終わったちいちゃんが寄ってきたから膝に乗せてあげる。ちょっと食べづらいけど、大丈夫。食べこぼしにだけ気をつけよう。


「料理の番組探すね」

「ん」


 やっぱり配信は見てくれていたみたいで、真美がテレビのチャンネルを変え始めた。今の時間はニュースが多いみたい。このニュースもすごいよね。遠く離れた出来事もすぐに分かるんだから。

 ちいちゃんを撫でつつトーストをかじりながら、テレビを見る。五回ほどチャンネルを変えたところで、ついに何かの料理がテレビに映った。

 これは、なんだろう? 丼、だっけ。たっぷりのご飯に焦げ茶色の平べったいものを載せて、たれをたっぷりとかけてる。美味しそう。


「これ、なに?」

「ウナギだよ」

「ウナギ……」


『鰻美味しいよね』

『焼いても美味いし蒸しても美味い。ちょっとお高いけど』

『俺は嫌いだなあ。小骨が多すぎる。何がいいのかわからん』

『骨は焼きか蒸しかが足らないだけだったりするぞ』


 好き嫌いが分かれるのかな。食べてみないと分からないかも。

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