学生寮の部屋
案内してもらった時と逆順に階段を下りていく。一階に戻ると、エドリアさんが言っていた通りにエリーゼさんがいた。私を見つけて、嬉しそうに手を振ってくれる。
「リタさん! お待ちしてました! あなたへ寮の案内をするように、学園長から頼まれています!」
「ん。よろしく」
「はい!」
エリーゼさんなら、安心して任せられる。ここまでの道中でその程度には信頼してるよ。ミレーユさんの妹さんだしね。
『よくよく考えなくても、公爵家の令嬢を案内人にするってすげえな……』
『仮にも公爵家の令嬢に指示できるってエドリアってやつもすごいんだな』
『むしろエリーゼちゃんが自分で立候補してそうw』
『確かにw』
それはあるかもしれない。なんだかすごく懐かれてるし。
寮へ行く間、エリーゼさんはいろいろと教えてくれた。
寮は男子寮と女子寮の二つがあって、お城の西側にある大きい建物が女子寮らしい。造りは男子寮と同じらしくて、三階建てだ。一階に食堂などの施設の他、平民出身の学生の部屋があるらしい。二階には平民の他、下級貴族出身の部屋、三階は上級貴族出身のみ。
私の扱いは平民出身みたいだけど、留学生ということで二階の下級貴族向けの部屋を使わせてもらえることになった。
「本来なら三階の部屋を使ってもらえれば一番なのですけれど、リタさんはそれを嫌いそうでしたから」
すごい。よく分かってる。広い部屋を使わせてもらっても、正直困るだけだった。
『なんとなくリタちゃんの気質を把握してるんだろうなあ』
『観察眼は貴族にとって重要だから素晴らしい才能だ』
『そうなん?』
『いや知らんけど』
『知らんのかいw』
部屋に連れて行ってもらう間、たくさんの生徒を見かけることができた。どこにもたくさんの生徒がいるけど、ほとんどの人が魔法について話してる。ギルドとはまた違う意味ですごい場所だ。
そうしてエリーゼさんに案内された部屋は、特に何の変哲もない部屋だった。テーブルといすが一つずつにベッドがあって、そしていくつかの棚があるだけの部屋。広さは、真美のお家のリビングぐらい、かな?
出入り口の他にもドアがあって、そこは水浴びとかができるらしい。最低限の生活ができる部屋みたいだね。
「私は三階の部屋になります。寂しくなったらいつでも来てくださいね! 歓迎しますから!」
「ん……。ないとは思うけど、その時はよろしく」
「はい!」
ないと思うってちゃんと聞いてくれたかな。嬉しそうに出て行ったエリーゼさんを見てると少し不安になるよ。
さて、と。
「部屋で見たいところとか、ある?」
『特にないかな』
『水浴びができる部屋が気になる』
『お風呂みたいなもんかな。シャワーとかあったり?』
『さすがにシャワーはなさそう』
水浴びの部屋か……。防水とか、そんなことをしてる部屋だと思うけど、どうなのかな。私は逆にあまり興味がないから。
「水浴びとか、最後にしたのっていつだっけ」
『え』
『え』
『ちょっと待ってリタちゃんそれマジで?』
「ん。だって、魔法で終わるから」
体の汚れも服の汚れも、魔法で簡単に取り除くことができる。水浴びするより綺麗になるし、手軽だよ。すぐに終わるから。
「そういえば師匠はお風呂が欲しいってよく言ってた気がする」
『それはそう』
『日本人ならお風呂は必須』
『マジで気持ちいいから。リタちゃんにも体験してほしい』
『お前リタちゃんの裸を見たいだけでは……?』
『そそそそんなことねーですよ!?』
『これはダメみたいですね』
この人の考えはともかく、視聴者さんにもお風呂が好きな人は多いみたいだね。でも、温かいお湯に入るだけ、だよね。そんなにいいものなの?
『リタちゃん』
なんとなく。そのコメントには不思議な圧力があった。
「ま、真美……? えっと……。なに?」
『お風呂、入ろう』
「いや、私は別に……」
『入ろう』
「はい分かりました」
怖い。なんだかすごく怖い。これ絶対に逆らったらだめなやつだ。怒ってる、のかは分からないけど、従っておこう。
『もしかして真美ちゃん、リタちゃんより強いのではw』
『もしやリタちゃんの天敵になってるのでは?』
『餌付けされてるからなあw』
それは関係ないと主張します。いや、本当に、ないはず。うん。
そんなわけで、かは分からないけど。日本に行ってお風呂に入ろうかな……。美味しいもの、
食べたいけどね……。
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