ニュースサイト

『あかん、見られたらやばいと思ってるのに、リタちゃんの動きがいかにも慣れてませんな動きで微笑ましいw』

『わかる、見ていて面白い』

『でもやめてほしい』


 少しバカにされた気もするけど。私だって初めてのことは簡単にはできないよ。

 えっと、これだ。真美が使ってるニュースサイト。真美のマイページには、私の記事がお気に入り登録されてる。ちょっとだけ恥ずかしいけど、それと同時になんだかちょっと嬉しいような……。ちょっと、ぽかぽかする。


『リタちゃん機嫌良さそう』

『友達に気にしてもらえて嬉しいんだろ察してやれよ』

『リタちゃん友達少ないからな』

『う』

『ぐふっ』

『変なところにダメージいってて草』


 友達少ないのは、認めるよ。知り合いそのものが少ないぐらいだし。

 何の記事があるのかな。真美は私がここに来る前からお気に入りをしてくれていたみたいで、日本に来る前の記事も登録されてる。正直なところ、そんな記事があることに驚きだけど。

 一番古いのは、これかな。


「自称異世界の魔女の配信者の正体に迫る、だって。正体。そのままなんだけど」


『言うなw』

『あの頃はまだ信じてないやつも多かったからな……』

『実際に日本に来てる今でも信じないやつはわりと多いぞ』


 ふーん……。まあ、仕方ないよね。自分の目で見てないことは、なかなか信じられないものだと思うよ。

 記事の内容は、私の紹介だね。


「えっと……。異世界の魔女という設定の配信者が生まれた。高度な映像技術に少なくない人数が騙されている……。そんな感じだね」


『騙されている (騙されてない)』

『今これ書いた人はどう思ってるのかなw』

『書いた記者の会社に電話してやろうかw』

『やめたれw』


 この人もお仕事だからね。別に罵詈雑言ってわけでもないし、私は気にしない。

 記事の下にはコメント欄っていうのもある。記事を読んだ人がその感想を書くことができるみたい。内容は……、ケンカしてる……。


『リタちゃんを信じる人と否定する人のケンカが当時は多かったかな』

『まあ気持ちは分からないでもないけどw』

『このアンチどもも今は何を思ってるんだろうか……』

『だからやめたれとw』


 ん……。まあ、仕方ない。

 次はこの記事にしようかな。


「実在した異世界魔女、イベント会場で魔法を披露……。コスプレの時のやつかな?」


『それやろうな』

『本格的に一般の人にリタちゃんと魔法が認識された記念すべき日と場所』

『記念すべき場所 (コスプレ会場)』

『もうちょっとこう、いいお披露目場所はなかったものかな……w』


 んー……。あの時に困ってた人がいたから使っただけだし。それ以外の目的で魔法を使うつもりは、今のところはないよ。


「私の魔法を考察してるみたい。どんな原理なのか、だって。私が科学を理解できないのと同じだと思うけど」


『科学から見ると魔法は絶対に理解できないってことか』

『絶対に相容れない学問だとは思う』

『学問、なのか……?』


 私も科学はすごく気になるけど、正直理解できないことが多すぎるよ。多分、魔法に絡めようとして分からなくなってるだけとは思うんだけどね。

 科学からでも同じで、科学の方面から魔法を理解しようとするからだめなんだと思う。

 次は……。これ、かな。


「異世界魔女、正式に来日、首相と会談。…………。お寿司美味しかった」


『ちょwww』

『首相との会談の印象が真っ先にお寿司なのは、さすがと言うべきかなんというべきか……w』

『お寿司、美味しいよね……』


 ん。すごく美味しかった。また食べたい。


「私の意図とか考察されてるみたいだけど、そんなのないよ。呼ばれたから行った、ただそれだけ」


『リタちゃんだったらそうだろうな』

『後ろ盾とかなくても、勝手に行って勝手に帰れるしw』

『でもスマホは便利でしょ?』


「それはそうだね。スマホ、すごく便利」


 首相さんからもらったスマホは本当に役に立ってる。好きな時に地図が見れるのはとっても便利だ。


「他にも見ていこうかな……、と……」


 そう思ったけど、あっち側で私の分身に話しかけた人がいるみたいだ。これは、エリーゼさんだね。休憩中、なのかな。んー……。いや、大丈夫そう。


『リタちゃんどした?』

『緊急の案件?』

『リタちゃんの分身に何かあったとか』


「ん。大丈夫だよ。気にしないで」


 緊急のことがあれば、精霊様が教えてくれるだろうし。今はまだ、大丈夫。

 それでもちょっと心配だから、会話を拾っておこうかな。んー……。


『リタさん! リタさん! 今よろしいですか! …………。あれ?』

『あー……。すいませんね。あの子、どうやら索敵に集中してくれてるらしいですわ。野営までは集中するらしいんで、それからにしてもらえますかね』

『あ、そうですか……。残念ですが、そういうことでしたら……』


 ん。やっぱり休憩中みたいだね。それで私に話しかけようとしたみたい。ごめんね、夕方ぐらいには戻るから。


「それじゃ、他の記事も見ていこうかな」


『まだ見るのか……』

『これ絶対書いてる人ら蒼白だろうな……w』

『まさか今になって本人に見られるとは思ってなかっただろうしw』


 変なこと書いていても怒るつもりはないから大丈夫だよ。どんな記事があるかなあ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る