たくさん増えました
東京に行った日の翌日。いつものようにお昼前から配信を始めて、すぐに首を傾げてしまった。
「なにこれ」
挨拶してくれてるんだけど、明らかに日本語じゃないものがたくさんある。英語とか。他もたくさんあるけど、よく分からない。師匠から教わったのは日本語だけだから。
コメントの数もすごく多い。なんかもう、すごい。黒い板が文字で埋まってて、ちょっと読みにくい。読めないほどではないけど。
『リタちゃんこんちゃー』
『予想以上にすごいことになってんなあw』
『視聴者数もえぐい数になってるw』
視聴者数。そういえば見れるんだっけ。興味ないから気にしたことなかった。えっと……。
「なにこれ。五万人……? それも、まだ増えてる……?」
すごい勢いで人が増えていってる。なにこれ怖い。五万人がすごく多い数だっていうのは、さすがに私でも分かるよ。
「今日はどうしてこんなに人が多いの? お休みか何か?」
『違うぞ』
『リタちゃんの配信はそれなりに有名だけど、それでも異世界とか異星とか本当に信じてる人なんて少なかったんだよ』
『魔法とかCGとかと思ってた人も多かったみたい』
『それが昨日の配信で覆ったってことだよ』
「昨日? 昨日って何が……、あー……」
うん、さすがに分かった。コスプレの会場で使った雨よけのことだね。会場の人にしか見えない、なんてことはなかったはず。普通に外からでも見えてしまった、と。
『目撃した人はかなり多いし、いろんな角度からの写真もあるしで、今こっちはすごく楽しいことになってるよ』
『今この配信は世界の注目の的ってやつだ』
「なる、ほど……?」
きっかけは分かったけど、注目の的っていうのはちょっと分からないかも。規模が多すぎて、イメージできない。
でも、興味を持ってもらえたなら、嬉しい……ような気がする。
「それはそれとして、コメントの方もどうにかしないとね。せめて英語ぐらいは読まないと」
『え? リタちゃん英語できんの?』
『師匠さん日本語だけっぽかったけど。大丈夫?』
ばかにしないでほしい。英語も、少しだけ教わってる。読むことぐらいはできるよ。
流れてる文字のうち、アルファベットのものを確認する。えっと……。
「なにこれ。めちゃくちゃになってる。こんなの読めない」
『ん?』
『え、どゆこと?』
『詳しくないけど、ちゃんと英語に見えるけど……』
「いや、だって、母音と子音の組み合わせをするだけだよね?」
あれ? 分かってもらえない。意味が分からない、みたいな言葉ばかり流れてる。意味が分からないと言われても、そのままの意味なんだけど……。
どうやって説明しようかと悩んでいたら、そのコメントが流れてきた。
『いや待て。分かったかもしれない。リタちゃん、それ英語やなくて、ローマ字読みや』
「え」
『あー! なるほど分かった!』
『確かに英語をローマ字読みしようとしても意味不明に決まってるわ』
『リタちゃん、ローマ字読みと英語って全然違うんだよ』
ざっくりと説明してもらったけど、本当に全然違うものだった。たくさん言語があるって大変そうだね。本当に。
「つまり日本語以外は私にとって邪魔にしかならないってことだね」
『ちょwww』
『辛辣ぅw』
『でも間違いじゃないw』
私が読めない文字を流していても意味がない。書き込んでくれてる人には悪いけど、排除させてもらおう。
魔法陣のそれっぽいところを抽出して、すこし書き加えて、反映させる。すると黒い板には日本語しか表示されなくなった。
「これでよし」
『まじかよこんなことできたのか』
『いや、こっちだと無理だったはず。魔法由来のものじゃない?』
『魔法すげえwww』
精霊様の魔法とはいっても、少しぐらいなら私でもいじれるからね。あくまで少し、だけど。
ともかく、これで目障りな理解できない文字は排除できた。あとはいつも通りでいいかな?
『いや、いいの? リタちゃん』
『外国の偉い人がリタちゃんにコンタクト取ろうとしてるはずだけど』
『無視してええんか?』
外国の偉い人。それを聞くと、私はこれしか言えない。
「いや知らないよ。私に用があるなら、私が分かる言葉を使ってよ」
『草』
『そりゃそうだw』
『最低限そこだよなw』
私が分かる言葉を覚えようともしない人と話すことなんてないからね。いや、単純にめんどくさいだけだけど。私だって師匠に教わって勉強したんだから、そっちもがんばってほしい。
これ以上言語を覚えたくないので。
「それじゃ、改めて。今日は、街に行こうと思うよ」
『まち?』
『東京は昨日行ったし、大阪とか札幌とか?』
『九州もいいぞ!』
「いや、そっちじゃなくて、こっちの。私の世界の街に行ってみようかなって」
『え』
『きたあああああ!』
『異世界の街! わくわくしてきたぞ!』
なんだか一気にコメントが増えた。もしかしてみんな、結構気になってたのかな。
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