アイスクリーム

 聞いた限りだと難しく思えるけど、実際にやると簡単なのかな。でも、面倒なのは変わらないみたい。わざわざ作ってくれたってことだよね。

 真美を見る。にこにこしてる。


「すごく美味しい」

「そう? よかった」


 小さく、安堵のため息が聞こえてきた。不安だったのかな。作ってくれてるのに文句なんて言うわけないんだけど。

 それじゃ、次はカレーそのものを……。


「なにこれ。すごくどろどろしてる」

「え?」


『え?』

『映像見る限り、標準程度だと思うけど』

『リタちゃんが食べた師匠のカレーってどんなんだったんだ……?』


「ご飯に茶色の水がかかってた」


『お、おう』

『なにそれ(困惑)』

『聞くだけでまずそう』


 いや、美味しかったから私は気に入ってたんだけど……。でも、これとは全然違うね。師匠がこれをイメージしてたなら、失敗作だって言ってたのも理解できる。

 ご飯にかけて、食べてみる。ぴりっとした辛さは私好みだ。


「とりあえず、これだけは言える」

「な、なに?」

「師匠のカレーライスは生ゴミだった。間違い無い」


『ちょwww』

『辛辣ぅ!』

『そこまで言うかw』


 そこまで言うほど違うんだから仕方ない。私も、ここまで違うなんてびっくりだ。

 初めて師匠のカレーを食べたあの日。とても美味しくて、すごいご馳走だね、なんて師匠に言ったけど、師匠は微妙な表情だった。今ならその気持ちが分かる。思ってたのと違ったんだね。


「ん……。食べるのに集中していい?」

「う、うん。どうぞ」

「ありがと」


 じっくり堪能させてもらおうかな。




 お代わりもいただいて、三杯も食べてしまった。いや、美味しくて、つい。


『すごく美味しそうに食べてたなあ……。カレー食べようかな』

『今レトルトのカレー温めてる』

『出前のカレー頼んだ』

『おまえらwww 俺はコンビニで買ってきたぞ』

『お前ら行動力ありすぎだろw カレー専門店に向かってる』


 今日はみんなカレーライス食べるのかな。これだけ美味しいなら、毎日でも食べたくなるよね。うんうん。私も毎日食べたい。

 ところで。


「ちいちゃん?」

「なあに?」

「ん……。いや、いいけど」


 私がカレーライスを食べ終わってから、ちいちゃんが私の膝の上に座ってきた。そのまま小さい器でカレーを食べてる。食べにくくないかな?


「おまたせ、食後のデザート……、ちい、何やってるの?」

「えへへー」

「リタちゃんに迷惑でしょ! 早く下りて!」

「あ、いや。私は別にいいよ」


 正座の上に座られてるけど、痛いってほどでもないし大丈夫だ。

 ほどよい場所にちいちゃんの頭があるのでとりあえず撫でてみる。さらさらの髪の毛だね。妹がいたら、こんな感じなのかな?


「リタちゃんがいいなら何も言わないけど……。ちい、食べたら戻りなよ?」

「ん!」


 口をいっぱいにして頷くちいちゃん。とてもかわいい。なでなで。


「リタちゃんがでれでれしてる……」


『意外な一面だなあ』

『クールでかっこいい系と思ってたんだけど。いやかわいいけど』

『やはり幼女。幼女しか勝たん』

『何言ってんだお前』


 なんだろう。癒やし系だね。正直なところ、物珍しさというのもあるんだけど。


「ところでリタちゃん。これ。デザート。アイスクリーム」

「アイスクリーム……?」


 それも師匠に聞いたことがある。


「師匠が作ろうとして凍った牛乳になったやつだ」


『なんて?』

『凍った牛乳www』

『師匠さん、一体何と勘違いしたんだよw』


 よく分からないけど、牛乳を凍らせたらそれっぽくなるんじゃないか、とか言って凍らせた結果だったはず。最終的に砕いて舐めて食べた。

 アイスクリームというやつは、確かに色は白いけど、凍った牛乳とは全然違う。スプーンですくってみると、少し固いけどあっさりと取れた。

 口の中に入れてみると、冷たい甘さが口の中に広がって、とっても幸せな気持ち。


「ん……。美味しい」

「あはは。よかった」

「師匠は生ゴミ生産者だった」

「ちょ」


『生ゴミ生産者www』

『辛辣すぎるw』

『でも話を聞いてる限りあながち間違ってない……w』


 いや、悪くはなかったんだけどね。うん。

 アイスクリームを堪能した後は、のんびりとする。というより、ちいちゃんが相変わらず私の膝の上で食べてるから動けない。

 もちろん嫌ってわけじゃない。大人しいし、とってもかわいい。


「撫で心地もとてもいい感じ」

「むぐ?」

「気にせずに食べてね」


 アイスクリームをもぐもぐしてる。にっこり笑って頷いてくれた。見てて和むね。本当に、子供は初めて見たけど、こんなにかわいいんだなあ。

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