第21話 イソローの本気
転移門を超えるには体がどこか、接しているのが条件。
だから、レオとはしっかりと指を絡めて、手を繋ぎますわ♪
ネズミ君はレオに任せてもいいでしょう?
わたしの大事なデートの邪魔をしてくれたんですもの。
それくらいの意趣返しは許して欲しいわ。
「スゴイね。この魔法!」
目を輝かせるレオを見ているだけでも心が癒されるのよね。
レオ成分は心に作用するのですわ♪
ただし、彼の優しさと純真さは万人に向けられるものでわたしだけが独占は出来ないのが悲しいわ。
「ここはルテティアの郊外にある森なの。目立ちにくいでしょう? まずは目立ち過ぎる君! 君のその姿をどうにかしないといけないわ」
無理矢理ついてきたとも言えるネズミ君ことネズ・イソローに目をやりました。
冷たい視線を送っている自覚はありましてよ。
乙女の夢を壊した罪は万死に値するわ。
「何か、問題があるんですか?」
「このまま、百貨店行くのはダメなの?」
二人とも分かってませんのね。
レオは平気ですわ。
問題はネズミ君に全く、自覚がないことかしら?
レオも恐らくは気が付いてませんわね……。
「レオも君も気が付いていないのね。ここは人間が住む町なの。どういうことか、分かるかしら?」
わたしの育った『ヘルヘイム』やレオが育った『名も無き島』では何も疑問を感じなかったことをここでは隠さないといけない。
人間は恐れるから……。
「君もわたしとレオのように人の姿に化けておかないといけませんわね」
「そうなんだ……」
「どうしてです? ボクは誇り高きグレイヴン。姿を偽るなど、断じて許されんのです」
「だから、言ったでしょう? ここは人間の町なのよ。人間は同じ人間でも恐れから、殺すわ。君はどうなると思う?」
レオもネズミ君も理解したみたい。
さて、どうしましょう?
「リーナの魔法でどうにか、出来ないの?」
「出来ないことはないのですけど、君。魔法使いなのでしょう? 何か、出来ませんの?」
「ふっふっふっ。よくぞ、言ってくれました。そうです。この俺はスーパーな魔法使いなのです。姫さんの魔法に頼らなくてもちょちょいのちょいなんですよ」
「リーナを姫さんと呼ぶなんて、イソローは勇気あるなあ」
それくらいで怒ったりはしませんわよ?
君に姫と呼ばれると何だか、壁があるみたいで嫌なだけなんだから。
でも、そこが君らしいから、好きなんですけど。
これが好きになってしまった弱みかしら?
「どうですか? 俺の完璧な変身!」
「へえ……」
「ええ。確かにすごいですわ」
ネズミ君が変化させた見た目を見て、レオと顔を見合わせました。
二人とも何とも言えない微妙な表情になっていると思いますの。
表現としては中肉中背とでも言うのかしら?
わたしよりもちょっとですけど、背は高いですわ。
でも、身長なんて関係なくてよ?
小っちゃくても中身が大きければ、いいんですもの。
それよりも見た目が……ええ。
栗色のショートカットと琥珀色の瞳も派手さはなくともいいと思いますのよ。
でも、なぜかしら?
顔立ちの印象が非常に薄くて、良くも無ければ、悪くも無い。
平凡としか、言えない容姿ですわ。
これなら、認識を阻害させる魔法の併用もいらないですわ。
狙ってやったものなのかしら?
「ここから、百貨店がある通りまでそんなに距離がありませんの。歩いていきましょ」
「分かった! リーナ。手を繋がないとダメだよ」
「う、うん」
「ちょっとー! 感想がアレだけー? 何か、他にないのかー? おーい! 無視はやめてくれよー」
何か、喚いているのがいますけど、とりあえずは無視して、レオと手を繋いでいざ、百貨店ですわ♪
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます