第15話 意外と鋭い小さな旦那様

 大浴場を自由に使ったのはあの日だけ。

 長い時間ではなかったけど、濃密で忘れられない記憶をわたしの中に残してくれたわ。


 わたしの体でレオの触れてないところなんて、なくて……


「あのーリーナ。もしもーし」

「今、いいところだったのに邪魔しないで! って、レオ?」

「ご、ごめん」


 首がミシミシという音を立てて、動きが悪くなったみたいに変な動きになったのはわたしの心に多少なりとも罪悪感があったせいかしら?


 彼のルビーの瞳とわたしのルビーの瞳が……視線が絡み合って、ものすごく気まずいですわ。

 昼間から、服をはだけてベッドでをしていたのか、不審に思われたら、どうしましょう。


 別にもしてないから、やましいことはないのですけど!

 ちょっと脚色した思い出にひたっていただけですもの。


「何で昼間なのにそんな薄い服を着てるの?」

「こ、これはえっと……暑かったから?」

「そっか。リーナは寒いところの出身だから、暑いのは苦手なんだね」

「そ、そうなのよ。暑くて、本当困りますわぁ?」


 嘘ですけども。

 わたしは暑かったら、気温くらいは勝手に変えられますの。

 だから、寝室の室温もとても過ごしやすい温度にしてあるのですけど、レオは信じましたわ。

 薄着ですけど、本当にもしてませんわよ!?


 罪悪感を少しでも消したくて、レオにまた、着替えを手伝ってもらったのですけど、かえって罪悪感が増したのですけど!

 これはわたしにとっての単なる御褒美ですわ。

 目を瞑って、手探りなのに本当に真剣な表情で手伝ってくれるんですもの。


「ありがとう、レオ」

「自分で着た方が早かったよね。僕が手伝ったせいだ。遅くなって……ごめん」


 このかわいい生き物は何ですの?

 抱き締めて、「君は悪くないから」って、よしよしして、慰めてあげたいわ。

 でも、今はダメ……うん、ダメなの。

 レオは鼻がいいから、危ないわ。


 え? あ? 何でもなくてよ?


「ねー、リーナ。この部屋……何か、花の香りがするんだけどさ」

「な、なんでもないからぁ!? き、気のせいよ? 窓を開けてから、行きましょう? ね?」

「何か、変だね。まあ、いっか」


 レオが素直な子で良かったわ。




 まだまだ、この島でやらないといけないことは多いわ。

 お家とお風呂は解決しましたけど、おとう様にも協力していただいて、いずれは解決しないといけない大きな課題がありますわ。


 でも、今、大事なのはレオに勉強を教えることですわ。

 手取り足取り教えないといけませんわ。

 色々と教えることがたくさん、ありますもの。

 うふふふっ。


「リーナ。また、何か、悪いこと考えたよね?」

「考えてませんけどぉ!?」


 妙に鋭いのは何ですの?

 手をしっかりと繋いでいるから、バレやすいのかしら?


 普通に手を握り合うのはやめましたの。

 恋人になったら、もっと指を絡め合って、しっかりと繋がないといけないのですわ。

 え? どこから、そんな情報が気になるかしら?

 ロマンス小説ですわ♪


「この繋ぎ方しないとダメなの?」

「レオ君はおこちゃまだから、知らないのね? 大人になるとこういう手のつなぎ方をするものなのよ」

「そうなんだ。知らなかった。ありがとう、リーナ」

「え、ええ。どういたしまして?」


 信じましたわよ?

 ここまで純真だと逆に心配ですわ。

 悪い人に悪いことを吹き込まれたら、レオがいけない子になってしまいますでしょう?

 お前が言うな?

 失礼ですわ。

 わたしはレオに本当のことしか、教えてませんもの。

 本当よ?

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