第9話 わたしの旦那様が最高すぎる
「ガルム。あなたの鼻で地下深くの水源と熱源を探して」
「わんでふわん」
擬態している手足の短い愛らしい仔犬の姿ではさすがに動きにくかったのかしら?
普通にいる狼くらいの姿に転じたガルムは元気な返事をすると駆け出していきました。
「
「いいよ~いよ~」
中型犬くらいの黒い蜥蜴もどきの姿に蝙蝠のような翼を生やしたニーズヘッグも空から、ガルムを追いかけていきます。
これでとりあえずの準備は終わりかしら?
あとはあの子らの頑張り次第ですわ!
「ねえ、リーナ。何をするのか、教えてよ」
「ひ・み・つ」
「えー。リーナのケチんぼ。それなら、姫様って、呼ぶよ」
口を尖らせて、拗ねているレオもかわいいけど……それはちょっとイラッときますわ。
レオに姫様と呼ばれるのは何か、嫌なのよね。
彼と対等な立場でいたいと願うのは単なるわたしの我儘ですけど。
「そういうこと言うのはこの口かしら?」
「いひゃいよ」
口の端を摘まんで引っ張っるとちょっと涙目になるレオ。
そんな彼の顔を見ているだけでわたしの心が満たされるのはなぜなの?
「だって、先に知ったら、面白くないでしょう?」
「どういうこと?」
「出来てからのお楽しみよ、レオ君」
「また、くんって、言ったね。リーナのこと、姫……いひゃいれす。いいまひぇん」
「よろしい」
抓るだけで言うことを聞いてくれる勇者様はかわいいわ。
でも、わたしはわたしだけの勇者様の喜んでいる顔が見たいの。
だから、今は秘密なの。
それから、レオに島を案内してもらうことにしました。
あの子らの仕事に何らかの進展が出るには今少し、時間がかかるでしょうから。
島の水源でもあるカルデラ湖へと向かうことになったのですけど、ただ、手を繋いで歩いているだけで妙な気恥しさを感じるのはなぜかしら?
「ありがとう、レオ」
ちょっとした山登りになるとゴシックドレスにロングブーツを履いているわたしのことを気遣って、レオはさりげなく、エスコートしてくれるのです。
男女の違いは分からないし、結婚のことも知らないのにこういうところはしっかりしていて、頼りになるのよね。
「お姫様を守るのが勇者だからね」
「また、言いましたわね?」
「あ、ごめん。でも、リーナは僕のお姫様だから。ダメかな?」
腰に手を当てて、ちょっと怒った振りをすると謝ってくれるんですもの。
素直でよろしい。
……なんて、お姉さん顔をふかそうと思ったのに、ドキッとすることを言ってくるのね。
「仕方がありませんわ。許しましょう」
「うん。ありがとう、リーナ」
また、そんな無邪気な笑顔を向けてくれるんですもの。
ずるいわ。
勝てっこないのね。
わたしの……わたしだけの勇者はあなたなの。
「わたしの勇者はあなただけなんだから」
「何か、言った?」
良かったですわ。
聞こえてなかったみたい。
もし、ちゃんと聞こえていたら、レオはどういう反応を示してくれたのかしら?
素直なあなたのことだから、普通に受け取るのかしら?
そうではないの。
あなたしか、見えないの。
でも、この気持ちは伝えない方がいいのだわ。
レオにはまだ、分からないのでしょうから。
彼はまだ、子供なんですもの。
色々なことを学んで、世界を知って。
それでもわたしのことを好きでいてくれるのかは分かりませんわ。
「もうちょっとで湖だよ」
レオがそう言って、指差した先にエメラルドグリーンの湖面が広がる大きな湖が見えてきた時、耳をつんざくような爆裂音が突如、空気を切り裂きました。
「何だ、今の?」
「何かしら……もしかして!?」
遥か彼方の方に激しく噴き上げる水柱が見えましたの。
やってくれましたわね、ニール。
やりすぎですわよ。
「あっ……」
「どうしたの、リーナ?」
「わたしのせいだわ」
ニールに簡単な指示しか出さないなんて、どうしようもないくらいの失態ですわ。
彼女は言われた通りのことは出来ますけど、それ以上のことは無理なのです。
どうしましょう。
レオに喜んでもらおうと思ったのに……。
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